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迷探偵  作者: 如月いさみ
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エピソード6

 全員が腹を満たすと村岡翔一が

「昼の分まで食べたな」

 と言い

「桑田にも夕飯食べるように呼び掛けるか?」

 と告げた。


 桐生順一がそれに

「でも彼女が出てくるかどうか」

 とチラリと晃を見た。


 晃が先ほど彼女が部屋に籠ると言っているといったからだろう。

 晃は柳原葵を見た。

「どうする? でもお腹空いているかもしれないし……皿に盛って持っていくか」


 柳原葵は頷いた。

「そうだな」


 それに桐生順一は

「じゃあ、俺が向かいの部屋だから持って行って声をかけてみる。俺もやっぱり寝るときは部屋に籠ってカギを閉めることにする」

 と言い

「各人必ず戸を閉めて寝るだな」

 と告げた。


 そして、全員を見回して

「実は少し気になっていたことがあるんだ」

 と告げた。


 全員が桐生順一を見た。


 彼は腕を組み探偵のように

「俺が何故最初に狙われたのか……それを考えていたんだ」

 と告げた。

「いじめていたのは戸田と桑田だっただろ? 何故、最初が俺なんだ?」


 村岡翔一も柳原葵も顔を見合わせた。

 晃は全くの部外者なのでその辺りは全く分からない。


 もちろん、一応部外者の白羽根圭一は沈黙を守って彼を見つめている。


 桐生順一は少し考えて

「先ず、この呼び出し状は間違いなく九条美姫の自殺への復讐だと思っている」

 と告げた。

「村岡も柳原もそう思っているだろ?」


晃もそう思っているし、間違いなく二人もそう思っている。

 柳原葵も村岡翔一も静かに頷いた。


 桐生順一は全員を見回して

「けど、俺だと考えると復讐者は戸田と桑田の他に男も彼女を死に追いやったと思っているんじゃないかと思って」

 と告げた。

 そして慌てて

「あ、俺は違うからな! 俺は九条を虐めたりはしていないからな」

 と言い繕った。


 晃は村岡翔一と柳原葵を見た。

 同時にフッと白羽根圭一も見た。


 白羽根圭一はジッと桐生順一を見ていた。


 柳原葵は息を吐き出し

「俺も虐めてはいなかったが戸田と桑田が九条と揉めているのは知っていたし、本当はちゃんと話し合いをする機会をセッティングするべき」

 だった、と言いかけた。

 が、それに村岡翔一がバッと顔を見向けた。

 そして、すぐに顔をそむけた。


 柳原葵は目を細めると

「何だよ、村岡」

 と答えた。


 村岡翔一は視線を伏せて

「別に……」

 と答えた。


 柳原葵は顔をしかめて息を吐きだした。

「言いたいことがあったら言ってくれた方が助かる」


 晃は困ったように

「葵」

 と呼びかけた。


 村岡翔一はむっとすると

「それはな」

 と言いかけたが、白羽根圭一が冷静に

「あの~時間が長引きそうなら桑田さんには俺がこの皿を持って行きますけど?」

 と肉を入れた皿を手に立ち上がった。


 それに桐生順一が立ち上がり

「いや、今夜さえ乗り越えたら明日には山を下りて助かるんだ。その後に犯人を見つければいいだけだ。戸田が戸を開けて矢に射抜かれた仕掛けはきっと残っているはず、それで犯人がきっとわかる」

 と告げた。

「必ず犯人を見つけてみせる」


 晃も立ち上がり

「葵、俺たちもいこうか」

 と告げた。

 柳原葵は頷いて

「ああ」

 と立ち上がった。


 それに白羽根圭一は息を吐きだして

「わかりました。俺はリビングにいるので何かあったら声をかけてください」

 と答えた。


 村岡翔一も息を吐きだすと

「俺も暫くここにいて寝る時だけ部屋に籠ることにするか」

 と呟いた。

「あ、後片付けは俺らがしておくから」


 それに桐生順一が皿を手に笑むと

「悪いな、ありがとう」

 と言い、晃も柳原葵も

「「頼む、ありがとうな」」

 と答えて3人で2階へと上がった。


 階段の踊り場で左右に分かれ、晃は桐生順一の方に目を向けた。

 彼はノックして部屋の前に皿を置くと立ち去った。


 晃はそれを見て柳原葵と共に202号室へ入ると戸口側のベッドに座ろうとした。

 が、それに柳原葵は

「そっちは俺な。万一の時は俺が盾になる」

 と告げた。

「晃は付き合ってくれただけだから」


 晃は息を吐きだすと

「俺は関係ないんだぜ? 襲われにくいなら俺の方だから葵は奥の方が良いって」

 と告げた。


 そう、自分は全くの部外者なのだ。

 だから誰が犯人でも自分には関係ない。


 狙われることがないのだ。


 晃はそういうと入り口側のベッドに座った。

 昔からの親友である柳原葵と二人きりの部屋になって何処か安堵感があった。


 それは柳原葵も同じようでバタンとベッドに倒れた。


 戸田恵美子。

 彼女のことはあるが、今の自分たちにはどうしようもないのだ。


 とにかく自分たちの身を守るしかない。

 誰が犯人か全く分からないのだ。


 しかもその犯人は柳原葵の命を狙っているかもしれないのだ。

 晃はベッドに体を預けながら天井を見上げた。


 明日になったら山を下りて警察に行かなければならない。

 このロッジのことを伝えなければならない。


 晃は隣で同じようにベッドに体を預けている柳原葵を見ると

「警察に……犯人を捕まえてもらおうな」

 と呼びかけた。


 柳原葵は頷いて

「確かに俺も戸田と桑田が九条をいじめるのはダメだと思ったけど、事情が事情だったしな」

 と呟いた。

「そもそも原因は急に主役を挿げ替えようとしたことなんだ。みんな一生懸命練習をしてプロダクションも来るって喜んでいたのに行き成り主役を替えたから戸田も桑田も怒ったんだ。理由もなしなんてさ」


 晃は頷いた。

「そうなんだ。でも葵はやっぱり優しいよな」


 柳原葵は顔を晃に向けると

「俺は優しくないぜ。晃の方が優しかった」

 と微笑んだ。

「晃は俺が引越しして幼稚園で馴染めなかった俺の手を掴んでくれた。言葉がさ、おかしくていじめられていた俺を助けてくれた。すっげぇ感謝してる。今回だって付き合ってくれてありがとうな」


 晃は目を見開くと

「俺、忘れてた。でも俺は葵が友達で本当に救われてるから……俺もありがとうな」

 と微笑んだ。


 深々と外では闇が降り注ぎ眠れない夜がゆっくりと時間を刻んでいく。

 雨も止み。

 風もなく。

 静寂がどこか冷気を纏って広がっていた。


 晃は小さな欠伸をして携帯を手に取り夜の10時を刻んだのを見た。

何か時間を感じる余裕のない一日であった。


そう思った時ノックが響いた。


最後までお読みいただきありがとうございます。


続編があると思います。

ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。

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