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迷探偵  作者: 如月いさみ
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エピソード6

 村岡翔一は白羽根圭一を呼び寄せて

「何か、推理の方は桐生がやってくれる雰囲気だから、俺とお前の身を守る方を重点で頼むな」

 と告げた。


 白羽根圭一は微笑み

「いいよ」

 と答えた。


 問題は、と晃は柳原葵を見た。

 柳原葵は頷くと立ち上がって

「桑田のことなんだけど、彼女は101号室で寝させておいた方がいいか?」

 と聞いた。


 それに101号室から桑田聖子が姿を見せると

「……ごめんなさい、一人でいるとやっぱり怖くて」

 と告げた。


 それに晃は柳原葵を見た。

 自分はやはり部外者なのだ。


 柳原葵は晃の目を見て頷くと桑田聖子の前に行き

「いま、今夜はこの一階で過ごして明日下山しようという話をして、行動は二人以上でと言うことで」

 と告げた。


 彼女は頷きながら聞き、顔を上げると全員を見て

「わかったわ……今は皆がいるからここにいるわ」

 と告げた。


 確かにそうだろうと思う。

 晃自身は柳原葵が犯人でない確信はあるが他は分からないのだ。

 

 信じたい気持ちはあるが。

 信じきれない気持ちがあるのも事実だ。


 演劇部の全員が九条美姫とは関係があった。

 同じ部活と言う関係だ。

 

 内部犯。

 外部犯。

 そこすらまだ分からないのだ。


 それに、と晃は全員の顔を見て

「その……一見無関係に見えて実は他で関係があったって可能性もあるから一概に部外者だからって信用できるわけじゃないからな」

 と告げた。

 

 ハッと全員が白羽根圭一を見た。


 白羽根圭一は冷静に微笑んで腕を組むと

「確かにだね」

そういう意味では俺も疑われて仕方ないかな

 と答えた。

「恐らくここで俺が全く本当の部外者だと言っても早々信じてもらえないと思うのでそこは皆さんの判断に任せるしかないね」


 晃はドックンドックンと心音が高鳴るのを感じた。

 こんなことを言って彼が犯人だったら自分がヤバいかも知れない。と気づいたのである。


 だが、注意すべきところは注意しておいた方が良いと思ったのである。

 自分と柳原葵以外誰もが彼もが怪しい。

 いや、何もかもが怪しい。


 静寂が広がり誰もがピクリとも動けなくなっていた。

 外では風が吹き始めて木々が揺れる音が響いていた。


 桐生順一は全員を見回して

「とにかく、一人で行動しない。それを守って行動すれば問題はないと思う」

と言い

「俺は戸田さんには申し訳ないことをしたと思ってる。きっと俺が狙われたんだと思う。身に覚えはないけど……だからこそ俺は絶対に犯人を見つけてみせる」

 と告げた。


 それに全員が顔を向けた。


 桐生順一は全員を見て

「あの部屋の指定は俺だったからな」

 と視線を伏せて告げた。

「代わらなければ良かった」


 晃は「あ」と言うと柳原葵と顔を見合わせた。

 もともとの封書には『201号室 桐生順一』と書かれていたのだ。


 確かに桐生順一の言う通りだ。

 つまり、命を狙われたのは桐生順一だったということである。

 戸田恵美子は所謂とばっちりのような感じだったのかもしれない。


 桐生順一は息を吸い込み携帯を見ると

「もう2時か」

 と呟いた。


 こんなことがあって昼ご飯どころではなかった。

 考えすら浮かばなかった。


 柳原葵は晃を見て

「食欲ないけど食料品あるかぐらいは見ないとだな」

 と呟いた。


 村岡翔一は立ち上がって

「冷蔵庫はそこだからな。中を見るか」

 と告げた。


 柳原葵も立ち上がり

「あ、俺も見るから」

 と告げた。

「晃は悪いけど桑田の横にいておいてくれ」


 晃は頷いた。


 桐生順一はそれを見て

「じゃあ、俺は一応、外とか見て回ろうと思う。もしかしたら俺たち以外にも誰か……いや、犯人が潜んでいるかもしれないし」

 と告げた。


 全員が互いの顔を見合わせた。

 確かにここに入ってきて封書に目が向いてしまって、その後は部屋に行くと直ぐに戸田恵美子が矢で射抜かれたのだ。


 ロッジの周囲もロッジの他のところも確認すらしていないのだ。

 そこに誰かが潜んでいないとは確かに限らない。


 晃は立ち上がって

「だったら冷蔵庫見終わったら皆で分かれて見て回ろうか?」

 と告げた。


 それに白羽根圭一が手を挙げると

「いや、それほど広いわけじゃないし見て回るのは外とこの隣にある浴室ぐらいだから、俺が桐生さんに付き合うよ」

 と告げた。


 全員が彼を見た。


 白羽根圭一は冷静に

「命を狙われそうな人は固まってた方がいいからね」

 と告げた。


 桐生順一は頷いて

「確かにそうだな」

 と答えた。


 晃は息を吐きだした。

 万が一でも本当に誰か復讐者が忍んでいても見回り組も2人いるし、自分たちも4人いる。


 数では勝っているのだ。


 少しの沈黙の後で桐生順一が

「じゃあ、行こうか」

 白羽根さん

 と告げた。


 白羽根圭一は笑むと

「は~い」

 と何処かのんびりとした返事をした。


 桐生順一は頷いて

「まあ、白羽根さんは一応部外者だから大丈夫だろうと思うし、他の皆はくれぐれも一階より自室とかがカギ閉めたら安全だ! なんて言って部屋に籠らないようにしてくれよな」

 と注意して、最初に1階の右側にある浴室の方へと白羽根圭一と向かった。


 晃はフムッと息を吐きだし

「なるほど、確か部屋の鍵は内からかかるようになってたよな」

 安全と言えば安全だよな

 と心の中で呟いた。


 桐生順一と白羽根圭一は浴室へと入っていった。


 浴室に関しては直ぐに戻ってきた。

 問題はなかったようである。


 そして、2人はその足で外へと出て行ったのである。

 雨足は激しくかなりの吹き降りである。


 晃も含めて4人は沈黙を守って互いの顔を見合わせた。

 誰も一言も何も言わない変な静寂が明るい室内で広がっていく。

 

 誰もが誰もを疑っているのだ。

 晃も村岡翔一を信用しているわけじゃない。


 彼が九条美姫の復讐をしている可能性もあるのだ。

 それこそこの場でブッスリと刃物とかで刺される可能性も皆無ではない。


 ヒタリと汗が滲む。


 そう思った瞬間、村岡翔一が苦笑すると

「おいおいおい、もしかして、お前ら俺のこと疑ってるのか? まあ、こういう状態じゃしょうがないけどな。俺もお前たちを全く信用しているかと言われると自信ないからな」

 と肩を竦めた。


 柳原葵は困ったように笑って

「そうか」

 とだけ答えた。


 桑田聖子は沈黙を守ったままずっと顔を伏せている。

 

 考えれば演劇部で女子は九条美姫を除けると彼女と戸田恵美子の2人だけであった。

 ショックだったのだろう。


 晃は柳原葵と顔を見合わせて桑田聖子を見た。

 柳原葵はふと

「冷蔵庫の中には焼肉と野菜と……パンも入ってた。今夜の分と明日の朝の分があった」

 と告げた。


 晃はそれに小さく笑って

「なら、今夜はバーベキューって感じだな」

 と呟いた。


 その時、外から2人が戻った。

 かなりずぶ濡れであった。


 あの雨の中だ。

 当然と言えば当然だろう。

 傘や雨合羽の用意もされていなかったのだ。


 桐生順一は晃たち4人を見ると厳しい表情で

「雨で足跡が消えている可能性があるけど、外部からの人がいる可能性はない。恐らく俺たちだけだ」

 と告げた。


 晃はその言葉に

「つまりは」

 と心で呟くと全員を見た。


 この中の誰かが犯人だということになる。


最後までお読みいただきありがとうございます。


続編があると思います。

ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。

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