エピソード5
右側から浜口大翔、村岡翔一、白羽根圭一、中川貢となっている。
反対に女性の方は左から浜口和江、中川妙子、村岡君子となっている。
天童崇が右側から男性を、三田良子が左側から女性を中央に向かって調べ始めた。
沈黙が広がりカサカサと服を上から触る音だけが響く。
だが、誰からもダイヤモンドは出なかった。
三田良子も中川妙子と浜口和江に調べてもらったが出なかった。
天童崇もまた浜口大翔と村岡翔一が調べたが出なかった。
確かに煙が消えるまで少々の時間はあった。
それでも何処かの部屋へ持って行く時間などなかった。
天童崇はテーブルや周囲を見回した。
彼はテーブルの上に置かれた飲み物に目を見開いた。
飲み物にはカチ割り氷が入ったジュースとアイスティーとアイスコーヒーなどがある。
つまり……そういうことである。
彼はふっと笑むと
「ダイヤモンドのある場所が分かりましたよ」
と言うと、浜口和江に
「ポットはありますか?」
と告げた。
浜口和江は戸惑いながら頷き
「え、ええ」
と答え立ち上がってポットを持ってきた。
天童崇は3つのグラスをポットの下に持って行った。
それに中川貢が目を見開くと
「まさか! グラスの氷に?」
と告げた。
天童崇は一つ目のアイスティーを見ると
「これは誰のものですか?」
と聞いた。
それに白羽根圭一が顔を顰めて
「俺です」
でもきっとダイヤモンドは入ってないと思いますよ?
「氷に紛れ込ませるなんて……推理小説じゃあるまいし」
とぼやいた。
天童崇は笑むと
「葉は森の中もあり得る話だ」
と湯を注いだ。
氷はみるみる解けた。
白羽根圭一は悲し気に溜息を零すと
「そのアイスティー…もう飲めない」
と呟いた。
それに村岡翔一は息を吐きだして
「白羽根、アイスティーなら今度奢ってやるから」
と慰めた。
……。
……。
天童崇は「そこかーい」と内心突っ込みつつ、ジュースにコーヒーとすべての氷を溶かした。
だが……全て溶けたのである。
つまり、氷に紛れ込ませたというわけではなかった。
白羽根圭一はふぅと息を吐きだすとアイスティーを手にすると一口飲んだ。
「うっすい」
当たり前である。
村岡翔一は哀れみを含んだ目で友人を見つめた。
「だから、今度アイスティーを奢ってやるっていってるだろ」
白羽根圭一は息を吐きだしてカップをテーブルに置き
「だから、そういう推理小説みたいなことはないって言ったんだけど」
と答えた。
天童崇はエントランスを見回した。
三田良子も見回し
「調べるしかありませんね」
と告げた。
「二人一組で見て回る」
天童崇は頷いて
「組み合わせは俺たちがした方が良いだろ」
と言い
「浜口大翔さんと白羽根圭一くん、中川貢さんと村岡翔一くん、村岡君子さんと中川妙子さん、浜口和江さんと三田良子さんお願いします」
と告げた。
「俺はここから皆さんの動きを見張っていますので」
人海戦術と言うことであった。
白羽根圭一は浜口大翔をみると
「今日、泊ることになったら俺たちどの部屋になるかな?」
と聞いた。
浜口大翔は「ああ」と言うと
「二階の部屋だったら好きな部屋を使ってもらったら構わないよ」
と告げた。
「一階は私と妻の生活空間だからね」
白羽根圭一はそれに
「そうなんだ、おじさんの部屋見たいな」
これだけ大きな部屋だったら凄い部屋な気がするけど
と告げた。
「天童さんは入ったことある?」
天童崇は頷いた。
「ああ……」
だが今はダイヤモンドを探してもらいたいんだが
白羽根圭一はにっこり笑うと
「そうだね」
と言い
「それで、どこ? おじさんの部屋」
と告げた。
浜口大翔は困ったように
「おいおい、今はダイヤモンドを探してもらわないと」
と告げた。
白羽根圭一は笑むと
「きっとこのエントランスにはないからさ」
と告げた。
それに全員が顔を向けた。
天童崇は白羽根圭一に近寄ると
「どういうことだ?」
と聞いた。
白羽根圭一は浜口大翔を見ると
「あのケースに入っていたダイヤモンド自体が氷だったらって話」
と言い
「本物はもうこのおじさんが盗んでいるんだよ」
と告げた。
「これで見つからなかったら盗難届を出して保証金を手に入れることができるだろ?」
しかも中川さんと村岡さんにとってはどこへ行ったか分からないダイヤだから諦めさせることもできてダイヤも自由にできる
浜口大翔は「な、まさか!」と言うと
「じゃあ、何処にあるというんだ!!」
と告げた。
天童崇は息を吐き出すと
「まあ、彼の話が本当ならエントランスに関わらずすべてを調べる必要があるな」
と言い、浜口大翔を見ると
「ここは、疑惑を晴らすためにもいいですね」
と告げた。
浜口大翔は胸を張って
「ああ、隅から隅まで調べてもらえばいい」
と告げた。
村岡翔一が白羽根圭一に
「大丈夫か? 白羽根」
と呼びかけた。
白羽根圭一は頷いた。
「うん、大丈夫」
三田良子は笑むと
「では、探しましょう」
と2人一組になって2階も含めて全部屋を調べ始めた。
だが、隅から隅まで。
それこそトイレのタンクの中も洗濯機の中もシンクもシンクの下も洗面台も洗面台の下も探したがなかったのである。
天童崇は白羽根圭一の推理力を一瞬だが注視していたのである。
が、実際はどこにもなかったのである。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。