エピソード5
村岡君子は少し戸惑いつつも
「しょうがないわね、貴方がそういうなら……ダイヤが盗まれたら遺産の取り分に影響があるものね」
とぼやいた。
村岡翔一は呆れたように
「俺はもう十分だけどな」
と告げた。
白羽根圭一は残っている中川夫妻と三田良子を見ると
「おばさんたちもそうした方が良いと俺は思うけどー」
と告げた。
中川妙子と中川貢は顔を見合わせた。
浜口大翔は彼らに視線を向けた。
中川妙子は困ったように
「そうね、確かに盗まれては取り分とかの話以前の問題になるわね」
と告げた。
それに三田良子が冷静に
「私もその方が良いと思います」
人が多ければ多いほど危険が増すと言いますし
と告げた。
中川貢はフムッと息を吐きだした。
「確かに、だが、押し入られて奪い取られたら」
まして大翔さんの身も危険になるかもしれないし
浜口和江は立ち上がり
「代わりに外の警備の人数を増やしますわ」
と告げた。
瞬間であった。
上の方から何かが落ちてくると同時に煙が広がった。
天童崇は顔を上に向けて
「しまった!」
と叫んだものの
「ダイヤモンドを!」
と真っ白な視界の中でケースに手を伸ばした。
それに手が重なり
「お前か!!」
と叫ぶと、逃げようとする手を強く握りしめた。
周囲では咳き込む音や「何々!?」「どうした!?」「ちょっとー!」など声が暫く響いていたが、煙が引くと天童崇は自分が掴んでいた手を見つめた。
その手は中川貢のモノで天童崇は彼の手を握りしめながら睨んだ。
「予告状は中川貢さん、貴方のものだったんですね」
それに全員が中川貢を見た。
中川貢は慌てて
「いや、俺も……ダイヤを守ろうと思ってだ」
だから持っていないだろ
と告げた。
確かに彼の手にはダイヤモンドはなかった。
テーブルの上にはそれぞれが頼んだジュースや飲み物が置かれ、天童崇と中川貢の手の下のケースには……ダイヤモンドがなかったのである。
それに気づいた和江は目を見開くと
「ダ、ダ、ダイヤモンドが!!」
と叫んだ。
その周囲で立ち上がっていた誰もが息を飲み込んだのである。
全員が互いに顔を見合わせた。
三田良子も驚きながら
「盗まれた……と言うわけですか」
と言い
「取り合えず皆さん少し離れて立っていただけますか?」
と告げた。
「持ち物と身体検査をした方が良いと思います」
天童崇は頷いて
「もちろん、俺も貴女も」
と告げた。
男性と女性と分かれて天童崇と三田良子以外が一列に並んだ。
白羽根圭一は息を吐きだすと
「だから、早く帰った方が良かったんだよなぁ」
とぼやいた。
それに隣に立った村岡翔一が
「こうなるってわかっていたのか? 白羽根」
と聞いた。
白羽根圭一は笑顔で
「そうそう」
だって予告状で今日盗りに来るって書いてたじゃん
と答えた。
天童崇は2人を見て
「自称名探偵と依頼人かと思ったがどちらかと言うと同じ大学の親友と言う流れが大きいようだな」
まあ本職じゃないみたいだからな
と心で突っ込んだ。
「この名探偵は……探偵の部類から弾きだな」
そう心で言い依頼人の浜口大翔の前に立った。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。