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迷探偵  作者: 如月いさみ
16/39

本編 暗号

 矢倉征は戸惑ったものの足を向けると中島実樹の元へと訪れた。

「おばさん、すみません。急に来てもらって」

 

 中島実樹は首を振ると

「いいえ、連絡ありがとうね」

 と告げた。

「こう言っては何だけど罪を償うまで戻ってこられないと思っていたのよ。それまで待っていようと思っていたの。でも嬉しいわ、やっぱり嬉しいわ」

 

 白羽根圭一は笑むと

「確かに中島皆実さんは罪を犯したけど、でも彼女は戸上雄三を殺していませんでした」

 と告げた。

 

 それに参内満男は驚いて

「おい!」

 と肩を掴んだ。

 

 白羽根圭一は平然と

「だからもう少し待っていてあげてください。それからもう彼女が罪を犯さないように支えてあげてください」

 と告げた。

「米倉、警察へ行くんだよな。おばさん乗せてあげて。矢倉さん、代わりに俺を乗せてほしいんだけど」

 

 参内満男はムッと顔をしかめた。

「何を勝手なことを言ってるんだ」

 

 米倉隆二は息を吐きだすと

「参内刑事も同行頼む」

 と告げた。

 

 参内満男は深く息を吐きだして

「わかりました」

 と携帯で他に聞きまわっている刑事に連絡を入れると米倉隆二の車の助手席に乗った。

 

 中島実樹は矢倉征を気にして戸惑いつつも米倉隆二の車の後部座席に座った。

 

 白羽根圭一は米倉隆二に近付くと

「おばさんに聞こえないように通話保持して、それとRECよろしく」

 と小声で言って矢倉征の車へと向かった。

 

 矢倉征は平静を装って白羽根圭一を助手席に乗せると車を走らせた。

 白羽根圭一は車が走り出すと唇を開いた。

「矢倉……貴方の名前ですよね?」

 

 矢倉征はちらりと見た。

「ああ、それが何か?」

 と聞いた。

 

 白羽根圭一は前を見たまま

「中島翔二さんが書いた暗号が貴方を示していたから」

 と告げた。

「鎌田義昭はそれを見て貴方を訪ねた。3年前の爆破事件の真犯人が貴方じゃないかと聞くために……いや最後の復讐をするためだったのかも」

 

 矢倉征はアクセルを踏みながら

「その推理を聞こうじゃないか」

 と告げた。

 

 もうその時には矢倉征の表情に笑みはなかった。

 

 白羽根圭一は気にした様子も見せず

「中島翔二さんは経理で貴方の不正を知った。恐らく忠告したと思います。貴方はその忠告が会社にわかると非常に不味いということで戸上雄三に相談した」

 と言い少し考えると

「いや、もしかしたら貴方は中島翔二さんと共に警察へ行くと……戸上雄三と関係を切るといったのかもしれない。貴方と戸上雄三の関係はまだ分からないけど貴方と戸上雄三は何か不正の共犯関係だったんじゃないかと俺は推測してる。だから戸上雄三としては警察へ貴方に行かれたら困るし中島翔二さんが邪魔になったので当時彼に借金をしていた高山誠二に爆弾を仕掛けさせてそこへ中島翔二さんを呼び出し殺した」

 と告げた。

「鎌田義昭の息子の昭一さんは本当に不幸な巻き添えだった。ねぇ、貴方が呼び出したの?  それとも戸上雄三が呼び出したの?」

 

 矢倉征はハハハと乾いた笑いを零すと

「そんなことは今更の話だ」

 と言い

「証拠は?」

 と聞いた。

 

 白羽根圭一は息を吐きだして

「鎌田義昭の携帯かな? 貴方が手に入れていたら壊されているかも知れないけど貴方との通話内容が入っていると思う」

 と返した。

「ただ何よりも俺が許せないのは翔二さんの母親、妹の皆実さんをずっと裏切り続けたこと……どうして本当のことを言って全てを明らかにしなかったの? 本当は翔二さんの親友じゃなかったの? 嫌いだった?」

 

 矢倉征はブレーキを急に踏むと顔を白羽根圭一に向けて凶悪な笑みを浮かべた。

「ああ、ああ! 俺は中島が嫌いだった。馬鹿みたいに人を信じてお人好しで正義感が強くて! 何が2人で話をして頭を下げようだ!」

ざけんな!

「そんなことをすれば俺は即解雇だ。次に雇ってくれるところなんてない。売上をあげなきゃどうしようもなかった。経理のあいつに何がわかる!」

 

 そう一気に捲し立てて

「そのくせ俺を信じなくて……あいつは……本当に……馬鹿だ!! 俺のために騙されて殺されるのも知らずにのこのこ行きやがって! 俺は……自首するつもりだったのに!」

 と強い口調で言い

「戸上はペーパーカンパニーを作って俺に減価ギリギリで売らせて他の会社にマージンを入れて捌いていたんだ。その上で俺にも紹介料を要求してた。だがな、そうしなきゃノルマなんか達成できる訳がない! 戸上は糞だ! 結局、その後も金を払わされ続けたけどな! 翔二は……翔二はバカだったんだ!!」

 

 白羽根圭一は視線を伏せ

「中島さんは……馬鹿じゃなかったと思うんだよね」

 と呟いた。

 

 矢倉征は白羽根圭一を睨んだ。

「何がだ?」

 

 白羽根圭一は胸元から紙を取り出して

「あのさ、鎌田義昭がどうして貴方の存在が分かったか不思議に思わなかった? いや、もしかして暗号の紙のことだけは分かってた? それを確かめるためにおばさんを呼び出したのかな?」

 と呟いて

「まあ戸上雄三が死に際に何か言ったとは思っているけど、それだけだったと俺は思ってる。戸上雄三は貴方の名前を出すほどの時間を貰っていなかったからね。鎌田義昭は衝動的に彼を殺したと思われるから」

 と言い

「ただこの暗号の紙に貴方へのメッセージが書かれているんだ。つまり中島翔二さんは恐らく殺されるかもしれないって予感はあったんだよ。残念なことに妹の皆実さんも母親の実樹さんも暗号が苦手だっただけだろうね。解くまでに至らなかったし彼がそんなダイイングメッセージを残しているなんて考えもしていなかったと思う」

 と告げた。

「兄の形見程度だったんじゃないかな?」

 

 矢倉征は驚いて紙を見つめた。


最後までお読みいただきありがとうございます。


続編があると思います。

ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。

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