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迷探偵  作者: 如月いさみ
12/39

本編 暗号

太陽が昇ると白い靄がかかっていたうすボンヤリとした光景が一気に晴れ渡って視界が広がる。

 

 白羽根圭一はカーテンの隙間から射し込む陽光に目を擦ると身体を起こして小さな欠伸を零した。

 

 備え付けのクローゼットにパソコン台、そして、ベッド。

 部屋に置かれた家具はそれだけである。

 

 そして玄関を入って右手にトイレとユニットバス。

 左手に部屋へと続く廊下だが、それは同時にキッチンでもあった。

 

 冷蔵庫は一人暮らしようの小さな2ドア。

 冷凍室と冷蔵室。

 そこに食パンとバターと卵だけは常備されている。

 

 白羽根圭一はベッドから降りながらパジャマを脱ぐとクローゼットから服を取り出して着替え、洗面所で顔を洗ってスクランブルエッグを作った。

 

 食パンを焼いてバターを塗ってスクランブルエッグを乗せて食べるのが彼の好きな食べ方である。

 

 同時に紅茶を入れてパンと紅茶を交互に口に運んだ。

 

 テレビをつけるとラブホテルの爆破のニュースが流れている。

 重要参考人は警察で取り調べを受けている。

 それ以上の情報はまだ報道機関には流れていない。

 

 彼はそれに安堵の息を吐きだしながら

「メディアに流れると取り返しがつかなくなるからね。誤報でも流すときは大きく報じるのに謝罪はほぼほぼないよな。冤罪の人間は救われない」

 と呟いた。

 

 誤報を大きく報じたならそれに負けないくらい大きく『誤報でした』と報じなければ公共電波を使ったメディアの個人に対するリンチでしかないと白羽根圭一は常に思っている。

 

 公共の電波を使っている以上は正確に伝える、そして、過ちはキチンと正す。

 それだけの責務とそれだけの義務があるのに彼らは『表現の自由を盾に』自分たちの都合が良いようにそれを疎かにしている部分がある。

 

 それに異論を唱えると彼らは公共電波を使って攻撃して封じるのだ。

 ある意味暴君的な部分が見え隠れする。

 

 彼は朝食を終えると両手を合わせて

「ご馳走さま」

 と言い、食器を手早く洗った。

 

 そして、カバンを肩にかけて部屋を出ようとした瞬間に着信を知らせる音に目を向けた。

 

 相手は米倉隆二。

 白羽根圭一の異父兄である。

 

 同時に警視庁刑事部捜査一課の正真正銘の刑事であった。

 

 白羽根圭一は応答ボタンを押すと

「もしもし、何かあった?」

 と問いかけた。

 

 それに米倉隆二は彼のマンションの前に車を停めて

「いまマンションの下にいる。鎌田義昭が遺体で発見された」

 と告げた。

 

 白羽根圭一は目を細めると

「わかった、今から降りる」

 と答えると靴を履いて家を後にした。

 

 マンションのエレベーターに乗り一階のエントランスで降りると米倉隆二の車を目に走って助手席に乗り込んだ。

 

 鎌田義昭は白羽根圭一がつい先日起きたラブホテル爆破殺人事件の犯人だと思っていた人物である。

 その彼が殺されたということである。

 

 警察はラブホテルに同行し一人先に立ち去った姿が防犯カメラに映っていた少女……中島皆実が犯人だと確信している。


 白羽根圭一はそれを間違いで彼こそが犯人だと主張していたのである。

 だが、真犯人と目している鎌田義昭が殺されたとなると事情が変わる。


 彼はシートベルトをしながら走り出した車の中で

「それで? 詳しく教えてもらえる?」

 と告げた。

 

 米倉隆二は運転しながら

「発見現場は井之頭公園の林の中だ。マラソンしていた壮年の男性が発見し警察へ通報してきた」

 と告げた。

「周囲には争った跡があってナイフが胸に刺さった状態で発見された。鑑識は刺し傷による出血しだと報告書で上げている」

 そう言い

「犯人はまだ目星はついていない。死後2時間は経っているという話だ。財布はあったが携帯はなかった」

 と付け加えた。

 

 白羽根圭一は少し考えると

「そう、か……う~ん、現場へ行く前に先に彼の家へ行きたい」

 と告げた。

「一昨日のラブホテル爆破事件のこともあるから彼の周辺を先に調べたい」

 

 米倉隆二はウィンカーを出すと

「わかった」

 と答え、Uターンすると今来た道を戻った。

 

 今回の被害者である鎌田義昭は3年前の文京駅近くにある複合施設で起きた男子トイレ爆破事件で息子を失っている。

 その事件でもう一人中島翔二という男性が亡くなっているのだが、その人物の家族が先ほどのラブホテル爆破事件の犯人として警察で取り調べを受けている中島皆実と言うわけだ。

 

 そして、ラブホテル爆破事件の被害者が3年前の事件を引き起こした高山誠二に『借金を待って欲しかったら世間が驚くようなことをしてみろ』と唆した人物・戸上雄三であった。

 ただ、当時は雀荘でそのやり取りがあったものの直後に『冗談だけどな』と言っていたのと全員がそれを聞いていたことで教唆までいかないと起訴にならなかったのである。

 

 そのラブホテル爆破事件から日も浅い今日に彼が殺されているのだ。

 全く3年前の事件が無関係とは思えなかったのである。

 

 白羽根圭一は腕を組んで目を閉じていた。

 頭の中で整理をしているのだ。


最後までお読みいただきありがとうございます。


続編があると思います。

ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。

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