08話 初買い物
アレンは歩きながら色々と説明してくれる。
ジンはこの世界の常識に早く適応せねばと、アレンの話しをしっかりと聞こうとするが、初めて見る物が多く、アレンの話が耳に入ってこない。
ジンは周囲をキョロキョロしながら歩いていると、アレンが少し先で立ち止まっていた。
「おいジン、こっちだ。」
アレンは親指を立てクイっと動かす。
その先を見ると、どうやら裏路地へ続く道らしい。
(ここ行くのか? どう見ても怪しいだろう。)
アレンが通りに入ったのでジンもそれに続く。
薄暗い道を歩いていくと、小さな商店街にたどり着いた。
そこは街道沿いの大通りの店とは違い、こぢんまりとした店が並ぶ。
中には怪しい店や臭い匂いがする店もある。
(おいおいおい、大丈夫か、ここ。)
期待から不安へと変わる。
「ここだ、ここ」
アレンが立ち止まる。
着いた店はいかにも知る人ぞ知るみたいな店だ。
店に入る。
衣類から防具まで取り扱っている店のようだが、大通りの店とは違い、扱っている品物は全てが地味だ。
不安そうな顔に気付いたのかアレンが、
「あっちの通りの店の品物は派手なだけで、耐久性もなく、ただ値段が高いだけだ。っておい聞いているのかジン。」
既に店の商品にを手していたジンに、アレンの言葉は届いていなかった。
そんな姿をみてアレンは呆れて笑う。
ジンが服を見ている間、アレンが必要な物を見繕っていた。
服や下着以外にも、皮の胸当て、胴当て、小手に皮のブーツ、フード付きロングマントに鞄もある。
「この鞄は?」
「収納鞄の存在を隠すためにもダミーで持ったていたほうが良い」
ジンが感心していると、アレンが店主に値引き交渉をする。
どうやら顔馴染みのようで、店主は料金を負けてくれた。
「これ、羽織っておけ。」
買った品物からマントを取り出し、それ以外は鞄に入れた。
「これで明日は大丈夫だろう。」
「明日?」
「明日の入市審査のとき、身分証を旅の途中で紛失したってことにするから、少しでも旅人ぽっくしないとな。」
「あーなるほどね。」
どうやらトーマスとそこまで考えていたようだ。
店か出て買ったマントを羽織る。
「もう部屋の準備もできているだろう、戻るか。」
アレンにそう言われるが、ジンには気になる店があった。
「なあアレン、武器屋にいってみたいんだけど。」
ジンは先ほどの大通りで武器屋を見つけていた。
「武器屋? でもジンは剣を持っているだろ。」
「何言ってんだよ。武器屋は男のロマンだろ。」
「そうか? だだの商売道具だろ。まぁ折角出し行くか。」
アレンはジンが見つけた大通りではなく、武器屋にも馴染みの店があり、そこに連れて行くという。
メイン通りの店は、実用性より見た目重視の武器が多いらしく、買うならこの通りにある馴染みの店が良いと言う。
(俺はただカッコイイ武器が見たいだけなんだよ。)
ジンは心ではそう思うが決して口には出さない。
アレンにはただの仕事道具であり、武器屋を見つけて心躍る自分が恥ずかしくなった。
だがここは異世界、武器と聞けばテンションも上がるだろう。
再びアレンの案内について行く。
「ここだ。」
「ここが店?」
ジンはおもわず口出す。
看板もなくただ大き目の扉があるだけで、店のようには見えない。
アレンが中へ入るとのでジンも続く。
中には受付の様なカウンターがあり、その横に2階へ続く階段あった。
「今日は?」
受付にいる若い男性店員に聞かれる。
「見せてくれ。」
アレンが店員にそう伝え2階へ続く階段へ向かう。
追いかけてジンも階段を上がる。
2階に着くと大量の武器が陳列されており、中にはワゴンセールみたいな扱いの武器もあった。
「おおおお!」
ジンは感動のあまり大声を出す。
「ロマンは満たされたか?」
アレンは笑いながらジンを見る。
ジンは何度も頷く。
短剣、剣、槍、斧、弓、鎖鎌みたいな謎の武器までが棚に並ぶ。
ジンが興奮して見ていると声をかけられる。
「手に取って良いですよ。」
声の方を振り返ると、受付の店員がいた。
「いいんですか。」
「はい。」
店員に了解を取ったジンはどの武器から見ようか迷う。
商品の価格がわからないため、棚に陳列されている商品には高額な物があるかもしれないので、ワゴンセール扱いの剣を手に取ることにした。
ジンは手に取った剣を鞘から抜き構えてみる。
(ん?)
少しだが違和感がある。
「そこの品は止めとけ。」
アレンの言葉を無視をし、ワゴンセール扱いの短槍を手に取る。
(イイ! 剣も良いが槍も良いな。)
ジンは短槍を眺めていると、
「それは見習いが打った物で、お得ですよ。」
店員が声をかけてきた。
(見習いがね・・・だから違和感があったのか。止めとけって言うわけだな。)
さすがアレン、素人のジンでは目利きができないので、どの武器が良いかアレンに聞いてみる。
「オススメはどれ?」
「剣か?」
「じゃ剣で。」
ジンは少し意地悪で店員にも聞こえるようアレンに聞く。
店員は空気を呼んだのか、それともアレンを試しているのか、少し後ろに下がりこの状況を見守る。
アレンは真剣な顔で、剣を選ぶ。
剣を手に取り、鞘に収まっている物は抜いて確かめる。
ジンは壁の上段に陳列されている派手目剣が気になるっているがアレンは見向きもしない。
アレンは10本くらい手に取っただろうか、その中から1本の剣を再度手した。
「これか。」
アレンの声が微かに聞こえると、
「お見事!」
店員が大声を出し、パチパチと手を叩く。
ジンはアレンが選んだ剣を手に取って見る。
壁の上段に陳列してある武器に比べると地味な見た目である。
(これがオススメ?)
もう少し装飾がある剣が良いとおもいながら、アレンが選んだ剣を鞘から抜く。
(これも・・・)
構えてみるが、やはり違和感がある。
持っている剣をアレンへ渡し、棚から別の剣を取って構えてみる。
やはり違和感がある。
(んー、しっくりこないな。)
ジンは収納鞄から自分の剣を取り出して構えてみる。
(やっぱりしっくりくるなこの剣。 もしかして凄い剣なのか?)
神から授かった剣だけに、その価値が気になった。
「あのー、この剣を見てもらいたいんですけど・・・」
ジンは剣を店員に渡す。
店員はジッと剣をみるが、次第に表情が険しくなる。
(なにそのマジな顔。)
ジンは少し不安になる。
「すいません。ちょっとお待ちください。」
店員が剣をジンに返すと、1階へ下がっていった。
ジンはアレンを見ると、アレンもどうしたんだと首を傾げた。
少しすると、先ほどの店員が誰かを連れて戻ってきた。
その人物はアレンより少し年齢が上だろうか、アレンを見るなり話しかけてきた。
「不思議な剣を持ち込んだって人は、アナタだったんですねアレンさん。」
「久しぶりですロッタさん。持ち込んだのは俺じゃないく、このジンです。」
どうやらアレンの知り合いで、店主のロッタというそうだ。
ロッタは王都の武器屋で修行して、3年前に独立しこの宿場町に店を構えたそうだ。
「その剣、見せて頂けますか?」
ジンはロッタに剣を渡す。
ロッタは剣を受け取ると鑑定を始めた。
ロッタの真剣な表情をみてジンの不安が増す。
(凄い剣であって欲しいけど、騒ぎになるなら普通の剣でも・・・。)
ロッタが「うーん」、「面白い」、「不思議ですね」とブツブツと独り言を言っていたが視線を剣からジンへと移す。
「この剣はどこで手に入れたのですか?」
(えー、どこって、なんて答える?)
ジンが返答に困っているとアレンが軽く事情を説明してくれた。
「そうですか、誰が造ったのか知りたかったです。」
残念そうにしているロッタにジンが聞いてみる。
「その剣って、凄い剣なんですか?」
「そうですね、癖が全く無い完璧な鉄の剣ですね。」
「じゃ・・・」
「と言っても、武器としては鈍らの分類に入ります。」
(え! ナマクラ・・・まさか・・・)
ジンは聞き間違いではないかと確認する。
「鈍らって言いました?」
「ええまぁ、この剣より強い剣でしたら、そこにいる弟子にも打てるでしょう。」
「えーーーーー、結局この剣は鈍だったてこと。」
ガッカリするジンにロッタは口を開く。
「鈍らといいましたが、ただの鈍らじゃないでよ! この剣は本当に素晴らしい! 人が造った剣とは思えないデキですよ。」
「でも鈍らなんですよね。」
「そうなんですが、でも不思議なんです。」
「不思議とは?」
アレンがロッタへと聞く。
「そうですね、剣とは殺生する道具なんですが、この剣はまるで殺生を望んでない剣なんです。矛盾しているのに完璧だなんて本当に凄い剣ですよ。」
ロッタは凄いというが、ジンは所詮、鈍らじゃないかと心で毒を吐く。
そんなジンにロッタが提案をしてきた。
「ジンさんと言いましたね。この剣譲って頂けませんか? 代わりにこの店にある好きな商品を差し上げます。」
ジンはこの提案に心が揺れる。
(マジか! 神様から頂いた剣だけど鈍らだしな。)
「あのー、剣と槍の2本とでも良いですか?」
「もちろん良いですとも! なんなら短剣もどうぞ。」
(言ってみるもんだな、鈍らと引き換えに武器3本と交換だったら良いよな。)
「じゃ、その剣・・・」
「止めとけジン。そんな凄い剣なら、お前の身元の手がかりになるかもしれないぞ。」
ジンが交換して貰おうと言いかけたとき、アレンが止める。
アレンの制止にジンは我に返る。
目の前の欲に目がくらんだことを反省する。
(神様が持たせてくれた剣を交換しようとするなんて。)
「そうだな。止めてありがとなアレン。」
「そうですか残念です・・・あの、ひとつお願いがあります。王都に行くことがあれば、親方にその剣を見せて頂けないでしょうか。」
ロッタの師匠である親方にこの剣を見せたくて譲って欲しいと言ったのだと。
「わかりました。王都に行くことがあれば。」
ジンがそう答えると、アレンがそろそろ宿に戻るかと言ったので、宿へと戻ることした。
店を出るときにロッタから
「鈍らと言いましたが、剣の性能事態は普通の鉄の剣ですから」
とフォローされた。
宿に戻る道すがらアレンからも、
「武器ってさ、手に馴染んだ物が一番良いんだぜ。それにな、俺たちが全然歯が立たない魔物を切った剣だ、俺は鈍らとだとは思わない。」
「いーや、この剣は鈍らだよ! あの魔物を切ったのは俺の腕が良いからだよ。」
アレンの言葉に嬉しくなり、ジンは冗談で返す。
「本当にジンの腕か?」
「本当に俺の腕だ!」
と言い返し宿へと戻った。




