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アフターストーリーのその先へ  作者: 四反田三助
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07話 町ブラ

 トーマス商会の人達は忙しそうだ。

 馬車の荷台を納屋へと移動し、馬は馬小屋へと連れていく。


 このターキという宿場町でも取り引きがあるようで、みんな慌ただしく働いており、ジンはそれを眺めているだけだった。


 いっそのこと、手伝わせ欲しいと申し出たのだが「命の恩人に」と断られてしまった。


 ボーっと立っているのが申し訳なく、どうしたら良いかアレンに聞こうとするが、アレンも忙しいそうにしており声をかけるのを止める。


(やることないって結構ツライな。早く部屋にいけないかな。)


 部屋に行くことはできないかと尋ねたが、清掃中だと言われてしまった。


 なんでもこの人数を受け入れられたのは、ジンたちと入れ違いで団体がチェックアウトしてくれたおかげらしく、宿の従業員も一斉に空いた部屋の準備に追われている。


 因みに空いていた部屋があったのだが、怪我人のクウがすでに運び込まれていた。



 立っていても邪魔になるだけなので宿のロビーにある椅子へと座る。

 少しの間ボーっとしているとアレンが隣に座った。


「忙しそうだったけど終わったの?」


 ジンはアレンに聞くと苦い顔をする。

 ジンは聞いて良いのか迷ったが、気になるので聞いてみた。


「なにかトラブル?」

「宿の人に、納屋でも遺体は困るって言われたよ。」


(聞かなければ良かった。そりゃ遺体は困るよな・・・)


 ジンが思っていた以上にキツイ話であった。

 これ以上聞かないほうが良いのではとおもったのだが、どうするのか気になりジンは口を開く。


「そっかぁ、で、どうするの?」

「それを悩んでいるんだよ・・・」


 アレンの話では、この町で埋葬してもらえば問題は解決されるが、できればアレン達が所属する傭兵組合の支部がある街で埋葬いたいという。


 そのほうが偽装死などの疑いを受けずに、遺族への財産分与の手続きなどがスムーズにおこなえるらしい。


 もしこの町で埋葬することなった場合でも、依頼主であるトーマスが組合に口利きをしてくれるらしく、同じチームのビックとウッジも亡くなった2人の故郷は遠方なので、埋葬先はあまり気にしないと言っているようだ。


「じゃ、この村で埋葬してもらえば良いじゃん。」


「そうなんだけど、トーマスさんがな、2人のことをしっかり弔いたいと言ってるんだよ。」


 アレンの言葉を聞き、ジンは自分の軽い発言に後悔する。

 トーマスの思いなどを考えず軽薄なことを言ってしまった。


 アレンだって逃げた3人のことを雇うなとトーマスに進言すべきと悔やんでいたし、それを雇ってしまったトーマスはもっと責任を感じているはずだ。


「そうだよな、ごめん。」


 心から反省しアレンに謝罪する。


「何度も言うがジンが気にする必要はないさ。」


 アレンはそう言うと席を立ち作業に戻っていった。






 しばらくするとまたアレンが戻って来てジンの隣に座る。

 その表情は先ほどの見せていた苦い顔ではなくどこかスッキリとした顔である。


 どうなったのかと聞こうか迷っていると、アレンの方から口を開いた。


 結局この宿場町で埋葬して貰うことになったらしい。


 ビックが「この宿場町なら護衛途中に墓参りできるよな。」って言葉が決め手だった。


 埋葬は明日の昼過ぎとなったのだが、明日の朝にはこの宿場町を出発しなければならず、全てこの宿場町の教会に任せることになった。


「良かったのかな?」


 ジンは呟くと、それに対しアレンは、


「埋葬されるだけ良しとしよう。中には魔物に食われて亡骸さえない者もいるからな。」


「そっか。」

「そうさ。」

「なら良かった。」


 この話題はもう止めようとお互いが感じアレンが話題をかえる。


「ところでジンのその服、なんとかしないとな。」


 ジンの服は洗い流したとはいえ返り血で汚れている。

 返り血以前に皆の格好に比べ、どこか貧相でもある。


「この町を案内がてらジンに必要な物を揃るか。」

「揃えるたって、金持ってないよ。」


 アレンが手を前に出しジンの言葉を制止する。


「そのことをトーマスさんに話したんだよ。そしたらさ、ジンにって金をくれたんだ。」


「トーマスさんが。」


「ああ、でもカモられないようジンに渡さず、俺が預かっておけってさ。」


「ありえるかも、さすが商人。でもさ、その金貰っていいの。」


「護衛依頼料の一部を前金にだってさ。逃げた3人の依頼料はすべてジンに払うって言ってたぞ。もちろん入市税と宿泊費も出してくれるって。」


 ジンはこの世界に来てまだ1日経ってない。

 見ず知らずの記憶喪失(ウソつき)のジンなんかに、アレンもトーマスも優しくしてくれる。


 元の世界ではそんなことはありえないだろう。

 もし記憶喪失の人がいたら即通報案件だ。


 そんな2人の行為に嬉しくなり、涙が出そうになるのをこらえる。

 ジンは泣きそうになるのを誤魔化すために冗談を言う。


「でもさアイツら値切ったんだよね?」

「そうだったな。だが値切ったといえ3人分の依頼料だぞ。」


 二人は笑い合った。


「よし! この町を案内するか」

「おお。」


 2人椅子から立ちあがり宿から出た。





 アレンに案内され、この宿場町のメイン通りでもある街道沿いを歩いていた。


 巨大商店街のようで、道の左右には店がずらっと立ち並び、どの店も圧巻である。


 通りの道幅は馬車同士、余裕を持ってすれ違える程の幅があり、歩道もしかっりと分けられ大勢の人や馬車が行き交っていた。


 丸太の柵から、想像できないほどの賑わいだ。


(この宿場町は元の世界と比べても遜色ないな。)


 通り沿いの店は、どの店も自己主張が激しく、店に入らなくても扱っている商品がわかる。


 だがそんな中『謎の店』があった。


 その『謎の店』は天幕を張っているだけで、その中にはスタッフらしき人が座っているだけのようだ。


 商品を並べているわけではないので露天商ではない。

 天幕の中に椅子と簡易ベットのような物が置いてあるだけだ。


「なあアレン、あれって何やってんの?」


 そんな天幕をジンは指を差して聞く。


「あー、あれか、あれは癒し屋だよ。」

「癒し屋? それってなに?」


「まぁ簡単にいうと体の痛みを癒やすところだ。」


 アレンはそう言うと1つの天幕を指差す。


「あれは腰痛専門の癒し屋だ。ここは宿場町だからな、長時間馬車に座って腰を痛める人が多いから。」


 アレンは違う天幕を指差す。


「あれは、足の痛みと疲れを取る癒し屋だ。この街道を歩いて通る人たちもいるからな。」


 ジンはアレンの説明に感心して聞いていると、また別の天幕を指さした。


「俺がよく利用するのはあそこだ」

「あれは何専門?」


「二日酔いだ。」

「二日酔い? そんなのにも効くマッサージがあるの?」


「なに言っているんだジン。」

「なにって、癒し屋ってマッサージみたいなもんでしょ。」


「マッサージじゃなく神聖魔法で癒やすんだ。」


 笑いながら話すアレンに驚くジン。

 腰痛と聞き、簡易ベットもあるので、てっきりマッサージだと思っていた。


「神聖魔法ってなに?」


 ジンはアレンに聞く。

 アレンもジンの質問に慣れ「そんなことも忘れたのか。」なんて野暮なことは言わず説明してくれる。


「神聖魔法ってのはな、修道院で何年か修行して習得する魔法だよ。」


「普通の魔法と違うの?」


「ああ、ジンやマリーが使う魔法は魔力を使って地水火風を操るのに対して、神聖魔法は、生命エネルギーを使って治癒や解毒なんかをおこなう魔法だ。」


「へー、魔法にも色々あるんだね。」


「他にもあるぞ、例えばそうだな・・・強化魔法に精霊魔法、それに古代魔法なんかもあるらしいな。まぁ俺は魔法に関して専門外だからな、詳しく聞きたいならマリーに聞くといい。」


「そっか、聞いてみるよ。」


(マリーか、なんか苦手なんだよな。)


 ジンはマリー顔を想像し聞くのを諦めた。





 しばらく歩いていると教会らしき建物が見え、フッと神の言葉を思い出す。


(そうだ神殿! 神様は神殿を目指せって言っていたよな。)


「なあアレン、この宿場町に神殿ってある?」

「神殿? この宿場町にはないな。神殿がどうかしたか?」


「急に気になってさ。」

「神殿なら、目的地のドマドラって街にあるが。」


(神殿って、どこにでもある建物じゃないんだな。)


 ジンが考え込んでいると、アレンが不思議そうに見てる。

 その視線気付きアレンに問う。


「どうかした? アレン。」

「神殿のことなんて話してないのに、なんでかなってさ。」


 ジンは不味いと思った。

 記憶喪失を理由に、あれこれ質問していたのに、急に神殿なんて言い出したのは不自然だったようだ。


 アレンと打ち解けすぎて何も考えずに言ってしまった。

 何か言い訳をと、必死で考えているとアレンが、


「神殿にあるのかもな?」

「え? なにが。」


「ジンの手がかりだよ。」

「そ、そうかもな···なんでかな、神殿ってとこが気になって!」


「クウも連れてかなきゃダメだしな! ドマドラに着いたら案内してやるよ。」


 なんとか誤魔化せたとホッとするが、記憶喪失という嘘をついていることに罪悪感を抱く。


 元の世界ではビジネストーク上の噓は日常茶飯事であり、罪悪感なんて抱くことなどなかった。


 そんなことを考えながら歩いていると、


「ジン、大丈夫か?」


 アレンが心配そうに声をかけてきた。


「いや、ちょっと考えごとをしていただけ。」


「そうか、どんな些細なことでも良いから何か思い出したら言えよ、俺も一緒に考えてやるからな。」


 アレンは本当にいいヤツだ。

 そんなアレンにこれ以上心配かけたくないと、ジンは満面の笑みで頷いた。

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