05話 自己紹介
馬車の一団は被害状況のチェックをしていた。
ジンは邪魔にならないよう、その人たちを眺めていると、大盾の戦士がジンに名前を名乗る。
「俺はアレン、こっちはマリーだ。」
「ああ、えっと・・・ジンです。」
お互い自己紹介をする。
大盾の戦士はアレンと言う名で赤髪のイケメン、女魔法使いはマリーというらしく、黒髪ロングで少しキツそうな顔している。
この2人は傭兵でこの馬車を護衛中だそうだ。
馬車の一団はトーマス商会といい、この国の王都から来ている行商団で行き先はドマドラという街らしい。
2人とも王都から、この行商団を護衛しているそうだ。
「それで、ジンはなんでここにいるんだ?」
今度はアレンがジンのことを聞いてきたので、転生してからの経緯を話すことにした。
まず目覚めたら森の中におり、記憶がないく森の中をさ迷っていたら悲鳴が聞こえ、その声のするほうに駆けつけたら、馬車の荷台にいる女の子に助けを求められと。
記憶喪失と助けを求められたことについては嘘をつく。
そんなジンをマリーは怪訝そうに見る。
「目が覚めたら森? で記憶がないなんて、なんか怪しい。」
「そう疑うなって、仮にもジンは命の恩人だぞ。」
マリーは疑いの目でこちらを見るが、アレンが庇ってくれる。
「そうね実際ジンが居なければどうなっていたか。疑ってごめん。」
「いえ、全然気にしてないんで。」
マリーは謝罪するが、疑いは晴れていない様だ。
ジンも空気を読んで返事する。
「ごめんなジン、マリーは誰にでもこうなんだよ。」
「で、ジンは、あの魔法どこで覚えたのよ?」
「魔法のことは、その、記憶がないくて・・・。」
記憶がないフリをして誤魔化すと、誰かがこちらに駆け寄ってくるのがみえた。
「ハァハァ、いやー助かりました! あなたがいなければこの商会に、かなりの損害が出ていました。」
息を切らして話かけてきたのは50代だろうか、細身で鼻下のヒゲが少し怪しいが、人の良さそうなオーラが出ている。
服装が周りの人よりも派手で、地位の高い人なのだろう。
おじさんが、アレンをチラッと見て目で合図を送る。
アレンは、その目線に気付きお互いを紹介してくれた。
「ジン、こちらは俺らの雇い主で、この行商団の代表のトーマスさんだ、トーマスさん こちらが俺たちを助けてくれたジンです。」
アレンは紹介が終わるとトーマスにジンの事情を説明してくれた。
「そうですか、ジンさんは記憶を・・・。」
「はい。覚えているは名前だけなんです。」
疑いの目をむけられるかと思いきや、ジンを心配してくれる。
その後、魔物に襲われた経緯を教えてくれた。
この街道にはアレンやマリーに倒せない魔物は本来出現するはずがないが、ジンが倒した魔物はどういうわけか、アレンの剣もマリーの魔法も効かなかったそうだ。
魔物自体それほど強くはなく、アレンの大楯で皆を魔物のから守っていた。
それでも犠牲を出してしまったのには理由があるらしく、どうやら護衛である傭兵3人は攻撃が効かないとわかった途端、逃げだしてしまったのだと。
そのせいで魔物が行商人に襲いかかり、それを庇い3人の護衛が魔物にやられ、その結果、2人は死亡し1人はなんとか助かったそうだ。
「死んだ・・・。」
ジンは思わず口に出してしまった。
その様子をみたアレンが説明を止め、話題をかえる。
「トーマスさん、あの魔物のこと何かわかりましたか?」
「それがですね、あの魔物の毛皮はフォレストベアと同じ材質のようなのですが・・・。」
「ちょっと待って、あの魔物がフォレストベアだって言うの?」
「落ち着けよマリー、トーマスさんは材質はって言ってるんだ。フォレストベアには角も無ければ瘴気を出すだけの魔力もない。」
「アレン君の言うとおりです。あの角に関しては見たことも無い物でしたし、体内からは魔力結晶も見つかりました。」
トーマスの言葉にアレンとマリーは驚いているようだが、ジンには何がなんだか、わからずに聞いていた。
「魔力結晶ですか・・・フォレストベアではありえないですね。」
「そうですね、魔物の死体を街まで運び、専門家に調べてもらったほうがよいでしょう。」
アレンの言葉にトーマスが言葉を返す。
「結局なにもわからないってことね、それじゃ私はクウの様子を見てくるわ。」
マリーはそういうと、この場から立ち去った。
どうやら倒れていた中で唯一助かった人物のところに行ったようだ。
「新種の魔物なんですかね? それともフォレストベアの変異種とか?」
「どうですかね、まぁ調べてもらえばかわりますよ。」
ジンは会話には混ざれずに立ち尽くしていると、トーマスがパンッ!と手を叩く。
「どうでしょうジンさん、ドマドラまで一緒に来て頂けませんか?」
「そうだよジン、オマエが一緒なら心強い。」
トーマスの提案にアレンが賛同する。
要するに減った護衛の補充ってことだろう。
(何の当てもないし、この人たちと行きたいけど、戦闘を期待されるはちょっと・・・。)
ジンはこの提案について考える。
護衛として当てにされるのは困る。
「死」を目の当たりし、この世界で生きていけるか不安を感じている。
返答に困るジンを見てトーマスが訪ねる。
「ジンさんは、何か身分を証明するものはお持ちですか? それと旅費などものお金も。」
「身分を証明するものですか?」
「そうです。例えば組合の登録証や貴族印などでも良いんですよ。」
ジンは収納鞄の中を探してみる。
「ないです・・・。」
「そうですか、身分証がないと大きい都市には入れませんよ。もしも一緒し来てくれるなら入市時の顔利きに、身分証の発行や入市税と宿代その他諸々も私がお払いし致しますが。」
(神様・・・お金はともかく、身分証って重要みたいですよ!)
神の準備不足に不敬にも不満を感じた。
それにしても、このトーマスって人はさすが商人、記憶がないジンに対して怪しむのではなく、護衛の交渉をしてくるとは。
ジンにとって嬉しい申し出だが、戦闘には自信がない。
先ほどの戦闘を見て、期待させるているのなら誤解を解かねばならない。
「さっきの魔物との戦闘なんですが、無我夢中で倒せたのはマグレだったんです。」
ジンは先ほどの戦闘は無我夢中だったことを必死に説明する。
「マグレでも、あの魔物を倒したことにかわりはない。俺たちは手も足も出なかったんだ。」
「ジンさんには、先ほどの魔物が出た場合のみ戦ってもらい、その他の魔物や盗賊などはアレン君やマリーさんにし対処してもらうということで、どうでしょうか?」
(盗賊って、人間だよな。)
ジンは魔物を倒したときに内蔵が飛び出したことを思い出す。
人間相手にと考えるだけで恐ろしくなり戦いたくない。
「わかりました。同行させて頂きます。記憶がないので助かります。ただ本当に戦闘には期待しないでください。」
ジンは同行することを了承した。
その後トーマスはジンを連れ、みんなに紹介する。
戦闘していた槍使いはビック、ボウガン使いはウッジといい、荷台で声をかけてきた、オバさんはケイトで女の子はアンということがわかった。
他の人にも紹介されたが覚えきれない。
皆からは感謝され、まるで英雄になった気分になるが、即席の棺桶が馬車の荷台へと運び込まれるのがみえると、素直にみんなの称賛を喜べない。
そんなジンの思いに気付いてかアレンから声をかけられる。
「気にするなジン、アイツらは仕事で死んだんだ。俺らの仕事にはこいうことはつきものだ。」
「でも俺がもう少し早く駆けつけていれば・・・」
ジンは森の中で行くかどうか悩んでいたことに罪悪感を感じた。
「そなことはない、ジンは良くやってくれた。本当に許せないのは逃げた3人組と、それを雇う事に反対しなかった俺だ。」
逃げた3人組は最初から印象が悪かったという。
今回の警護の依頼人数は7人だったそうだ。
アレンは野良で活動しており、以前もトーマスの護衛を受けたこともあり、この護衛の指揮官だった。
マリーと怪我をしたクウという女性がコンビでマリーは貴重な魔法使い、クウはそれ以上のに貴重な回復役で、この3名は王都から護衛をしていたという。
死んだ2人とビックとウッジが4人組のチームで、途中のトポルナという街から護衛に加わり、この7人で護衛予定だったそうだ。
だが逃げた3人組がどうして自分たちを雇ってくれと、トポルナの街で願い出たらしい。
なんでも行先のドマドラの街が活動拠点で、帰るついでに格安でいいので引き受けたいと、しつこくトーマスにお願いしていたのだと。
「命を掛けた仕事を、自ら値引き交渉する時点で断るべきだと、トーマスさんに進言すべきだった。」
ジンには気にするなと言っていたが、アレンは責任を感じているようだ。
そんなアレンにジンには掛ける言葉が見つからずにいると、
「アレンちょっと来て!」
マリーが焦った様子でアレンを呼ぶ。
ジンはアレンについて行くと、そこにはクウという女性が寝ていた。
クウはとても苦しそうで、額からは汗が滲んてた。
ケイトがクウに寄り添っており、マリーも膝をついてクウを心配そうにみていた。
「アレン、これを見て。」
マリーはクウの腕を掴んで見せる。
クウの服が破けており不謹慎ながら少しエロいと思ってしまったが、隣に立つアレンの表情は険しい。
クウの腕には3本の爪痕がある。
傷口は塞がっており、ジンには問題かがわからい。
「上回復薬は使ったのか?」
「使ったわよ!」
アレンの問いにマリーは怒鳴る。
アレンの顔はより一層深刻になる。
「毒、いや呪いか・・・」
「聖水も使ったわよ。」
アレンが、何か言うとマリーが怒鳴って返す。
「早めに神殿に連れってった方が良いな。ドマドラならあの大司教もいる。」
「ええ・・・そうね、あの方なら何とかしてくれはず。」
アレンとマリーのやり取りが終わると、トーマスが人を呼びクウを荷台に運ぶよう指示を出す。
マリーも付き添うため同じ馬車へと乗り込こんだ。
「あのクウって女の人は大丈夫ですか?」
ジンがアレンに聞く。
「正直わからない。怪我は治っていたが爪痕が残っているのが気になる。」
「あの傷痕は元からあったんじゃなんですか?」
「元からあったらならマリーはあんなに取り乱さないさ。それにクウのあの苦しみかたを見ると・・・」
アレンは何か思い当たることがあるのか表情は険しい。
正直ジンには、ことの重大さがわからない。
「街に急いだ方が良いな。」
アレンはそう呟くと、トーマスに急ぐ様に伝えた。




