表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アフターストーリーのその先へ  作者: 四反田三助
5/12

04話 初の戦闘

 ジンはどのように声をかけるか悩み、様子を伺っていた。



「うおおおおおお」


 男性の大声が聞こえる。

 あきらかに何か揉めているようだ。


 声は馬車の反対側から聞こえ、この位置からではよく見えない。


「キャー」

「オラァァァ」


 今度は女性の悲鳴が聞こえ、すぐに怒号も続いた。


(これって近づかないほうがいいんじゃ・・・触らぬ神に祟りなしって言うし。)


 そん事を考えていると、ひとつの可能性が脳裏に浮かぶ。


(神様が言っていた迎えって、この人たちなのかも。)


 位置からでは状況を把握できない。

 馬車の近くまで、そっと移動することにした。


 荷台の陰に隠れ隙間から様子を見る。


「なにあれ?」


 驚きのあまり声が出てしまった。


(なんだあのデカイのは・・・熊? まさかあれが魔物か?)


 馬車から少し離れた場所に熊のような猛獣がいる。

 熊と言ったが、似ているのは、毛モジャで二足立ちしている姿がそう見えるだけだ。


 大きさは3メートルはあるだろうか? 頭からは4本の角が生えている。


 (煙? 霧? なんだあれは。)


 猛獣の体には霧のようなものが覆っていた。

 ジンは猛獣から目が離せないでいると、


「ガォォォ!」


 急に両手を高くあげた。

 何かに警戒しているようで、ジンは猛獣から視線をずらす。


 猛獣の正面には、大盾を構えた戦士が対峙していた。

 戦士の後ろには杖を構えた ()()()()魔法使いらしき人と、ボウガンを構えていている人もいる。


 ジンは猛獣の辺りを見回す。

 すると猛獣から少し離れた場所では、3人の人が倒れており、それを庇うかのように槍を構えた人がいた。


 また先頭の馬車付近では、10人くらいの人が身を寄せ合い震えているのが見える。


 戦闘態勢になっているのはこの4名だけらしい。


(人が倒れている・・・これ結構ヤバイ状況なんじゃ。)


 人が倒れてる光景に恐怖する。


 倒れた人は猛獣にやられたことは間違いない。

 ジンは猛獣を観察する。


(あの猛獣は強いのかな?)


 人が倒れている光景に恐怖を感じたのだが、なぜかその元凶である猛獣には恐怖を感じない。


 見た目はだいぶ恐ろしいのに、負ける気がしない。

 むしろ弱いのではないかとさえおもう。


(これは神様からのイベントか?)


 人がやられるイベントをあの神が起こすわけがない。


 猛獣が人を襲っているのは一目瞭然であるが、助けて良いのかわからない。


 助けた後に「何で助けた」や「勝手に俺達の猛獣(えもの)を倒してやがって」とか言われるんじゃないか? と考えてしまう。


 この世界の常識はわからない。

 できるだけトラブルになるのは避けたい。


(もう少し様子をみるか。)


 助けに入るという考えを保留にする。

 もっと近くで状況を確認すべく、馬車の荷台の隙間へ移動した。

 すると馬車の荷台から少し顔出して、この騒動をみている女の子がいた。


(人だ! この馬車の関係者だよな・・・よし!)


 この女の子に声をかけてみようとジンは決心する。


「あのーすみません。」


 急に声かけられた女の子は肩をビクつかせ、ジンほうに顔を向けた。

 驚いている顔をしているが、気にせず小声で話かける。


「決して怪しい者ではないです。これって猛獣(アイツ)に襲われているんですよね?」


 女の子は声を出さずに首を縦に振る。


「あのー、苦戦しているように見えるのですが、俺が猛獣(アイツ)を倒してもいいでしょうか?」


 女の子は、猛獣とジンを交互に見る。

 状況が気になるのと「コイツは誰?」で「なにを言ってるの?」というのはその表情から伝わる。


 ジンは自分から素性を明かせない。

 なぜなら、記憶喪失という神より与えらし設定(約束)があるからだ。


 ジンはもう1度確認する。


「で! どうでしょうか? アイツを倒しても?」

「え? あ、はい···」


「本当に倒しても問題ないですよね?」

「ちょっと待って下さい。」


 女の子は待ってと言うと、荷台へと引っ込んだ。

 すると先ほどの女の子ではなく、オバさんが荷台から顔を出した。

 おばさんは、ジンのことをジッと見る。


「あんた本当に、あの魔物を退治できるのかい?」

「あれが魔物ですか!」


 やはりあの猛獣は魔物だった。

 ジンは初めての魔物と聞き、嬉しさのあまり顔が緩んでしまう。

 それをみを見たオバさんは心配そうな顔でジンをみる。


「あんた、あれが魔物って知らなかったんだろ、やめときな護衛の人も苦戦しているんだ。」


「大丈夫です。やらせてください。」


 ジンんの大丈夫という返事にオバさんは、困った顔になる。


「ケイトさん、この人にお願いしましょうよ。」


 最初に声をかけた女の子が荷から顔を出しオバさんへと声をかける。


「でもねぇ・・・。」


 オバさんは女の子へ返事をすると、今度はジンのほうを向く。


「アンタ本当に大丈夫かい?」


 ジンは黙って頷く。


「気をつけなよ。」


 オバさんはジンを心配しつつも討伐の許可出す。


 討伐許可が取れた。

 深呼吸し、意識を戦いへと向ける。


 初手をどうすかを考えるとワクワクしてくる。

 だが直ぐに考えを切り替える。


(ここはゲームじゃない。カッコつけるな死ぬぞ!)


 女の子とオバさんが見てると思い少し調子に乗りそうになるが、倒れている人を見て気を引き締める。


「さて、行くか!」


 考えるの辞め、魔物へと意識を集中する。

 少しずつ歩く。

 焦る気持ちを抑えてゆっくりと歩く。

 だんだん歩く速さが上がりそして一気に走り出す。


 左手に『火魔法【球】(ファイアボール)』をつくる。


 ボウガン使いの横を通り過ぎようとしたとき、ジンを制止する声が聞こえた。


「ちょっと止まりなさい!」


 そう言ったのは目の前の杖をもった魔法使いだ。

 走るジンに気付き、止まるように指示を出してくるが、全力で走っているので急には止まれない。


 声で気付いたが魔法使いは女性だった。


 女魔法使いの横を通り過ぎ左手の『火魔法【球】(ファイアボール)』を魔物の顔へ投げつける。


「ガォォォォ」


 魔物の顔が燃えあがり、悶え雄叫びをあげる。


「下がって!」


 ジン大盾の戦士に下がる様に指示を出す。

 下手に突っ込まれ、せっかくのチャンスを失いたくない。

 大盾の戦士は了承してくれたのか、頷き数歩後退してくれる。

 魔物は右手で顔の炎を消そうしている。

 左腕はこちらを警戒し、ブンブンと振り回している。


 近くによるとより一層大きく感じる。

 だがジンに恐怖心はなく魔物の動きはちゃんとみえている。


(あの左腕が邪魔だな。)


 ジンは右手で剣を抜き、振り回している魔物の左手首を切り落とす。


「ガォォォ」


 魔物が怯む。

 ジンは両手で剣を握り上段に構ると、魔物の肩から右腕を切り落す。

 剣の勢いを止め、反転し今度は魔物の腹を切る。

 魔物は両断され、ドサッと地面へところがった。


(よし!)


 ガッツポーズを取りそうになるが、魔物の腹からは内臓が飛び出しており、ジンは魔物の死体から目を逸らす。

 返り血も少し浴び、剣にもべっとりと血が付いていた。

 かなりグロい光景である。


「ウッ。」


 吐きそうになるのを堪える。

 自分につく返り血を見て一気に気持ち悪さと、命を奪ったことへの罪悪感を感じる。


「凄いな君、助かったよ。」


 話しかけられ、振り向くと大盾の戦士だった。


「困っていたんだ、女魔法使い(アイツ)の魔法も効かなくてな。」


 大盾の戦士が女魔法使いのほうをみて言う。

 女魔法使いは倒れていた人を介抱していたが、ジンと大盾の戦士の会話が聞こえたらしく、ジンたちのもとに近づいてくる。


「ホントなんでジン(アンタ)の魔法が効いたのよ。」


 女魔法使いがジンに詰め寄る。


「まぁまぁ、っでどうだった?」


 大盾の戦士は、詰め寄る女魔法使いを制止し状況を確認する。


「クウは何とか生きてるけど、他はダメ。」

「そうか···。」


(ダメって、まさか死んだ・・・。)


 大盾の戦士と女魔法使いの会話を聞き急に怖くなる。

 ジンにとって「死」とは滅多に遭遇することはない世界で生きてきた。


 魔物に飛び掛かる前に「死」について考えていたはずなのだが実際に目の当たりにすると、覚悟が足りてなかったと自覚する。


(人が死ぬなんて・・・もっと慎重にならないとダメだ。)


 一気に飛び出したことをジンは反省をする。

 ゲームと違い討伐した魔物は消えることなく目の前に死体が残っている。


 気付くと、ジンの手は震えていた。

 魔物であっても命を奪うというのは、気分がいいものではない。


 ジンの初めての戦闘は決して良いものではなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ