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アフターストーリーのその先へ  作者: 四反田三助
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09話 初の自分

 ジンはピンチに陥っていた。

 こちらの世界へ来てから1度もお花を積みにいっていない。


 宿に着くなりアレンにトイレの場所を聞くと、貴族も利用する宿なので部屋にもあるという。


 この建物は6階建てで、ジンたちの部屋は3階だ。

 一階にもトイレはあるが、ジンは部屋まで我慢することにした。


 部屋に付くなり、


「アレン、トイレどこ。」

「トイレか。」


「は、はやく!」

「そこだよ。そんなに我慢してたなら1階で済ませろよ。」


 アレンは部屋に入ってすぐ横の扉を指差すので、ジンはトイレにダッシュする。



(ふぅ、なんとか間に合った。異世界にきてお漏らしとか笑えないからな。)


 トイレは綺麗な洋式だった。

 ジンは用を足しトイレから出る。


「俺も。」


 とアレンがトイレに入る。


「ジン! 流せよ。」


 トイレに入ったアレンが叫ぶ。


「えっ、何を・・・ゴメン!」


 一瞬わからなかったが、考えれば1つしかない。


 このトイレ、なんと水洗だったようだ。


 アレンがトイレから出てきたので、ジンは「テヘッ」と言うと、ため息をつかれた。


「コッチこいよジン。使い方を教える。」


 そう言われ、ジンはトイレへと戻る。

 改めてトイレを見るが、本当に綺麗な造りをしている。


「いいかジン、ここの魔石に魔力を入れるんだ。」


 アレンが壁に埋まっている魔石に手をかざすとトイレに水が流れる。

 それは現代のタンクレスの水洗トイレだ。


「すげーよ!マジですげーよ。」

「そ、そうか・・・まぁ貴族も利用する宿だしな。」


 ジンの感動にアレンは少し引いていた。


「水が流れるってとこは、風呂もある?」

「あるよ、そこの扉じゃないか?」


 アレンはトイレか出て、少し奥まった場所にある扉を指をさす。

 ジンはアレンの指さす扉を勢いよく開ける。


「ああ、そこか。」


 扉を開けるが、そこは脱衣所だ。

 奥にもう一枚扉があり、今度はその扉をそっと開ける。

 すると、そこにはりっぱな浴槽があった。


「よーし! 良いね。」


 おもわず声が出る。

 周囲を見渡すと、石鹸などの道具もあるようだ。


(これは石鹸か? じゃこれは・・・後でアレンに聞くか。)


 そんなことを考えていると、


「気に入ったか?」


 部屋の中からアレンが話かけてきた。


「これもさっきと同じで魔力を込めるの?」

「ああ、そうだ。だがな、一気に魔力を込めると疲れるから、ってジンには関係ないか。」


 ジンは満足し、風呂場を出る。

 フッと脱衣室にある鏡に気付いたので覗き込んでみる。


「ん?」


 鏡には10代後半の男が映っていた。


 誰が写っているんだとおもい顔を傾ける。

 すると鏡の中の人物も同じく傾ける。


 不思議におもい口を大きく開けると鏡の中の人物も大きく口を開ける。


(え? これってまさか・・・)


 鏡に向かってピースすると、やはり鏡に映る人物もピースする。

 そこで確信する。


「なんだこれーーー。」


 ジンは鏡に映る人物が自分自身だとわかり驚いてしまう。

 異世界に来て始めて見る自分の姿だ。


 ジンは38歳だが鏡に映る人物は20歳前後の何の特徴もないモブ顔で、とてもイケメンといえない。


 イケメン(アレン)を見ていたせいか、自身も欧米風のイケメンだと思い込んでいたが普通の日本人顔である。


「アレンちょと来て。」

「どうした?」


 脱衣所に顔だけ出すアレンにジンは聞く。


「なぁ、これって俺?」


 ジンは鏡に映る自分を指差してアレンに聞く。


 アレンはため息交じりで答える。


「どうみてもジンだろ。」

「やっぱり俺だよな。」


「もしかして自分の顔も忘れてたのか?」


 驚くアレンだがジンの表情を見て悟る。


「本当に自分の顔も・・・」


 驚く顔もイケメンなアレンに対してジンは思う。


(神様、せっかくならイケメンにして下さいよ!)


 ジンの身体を用意したのは神だ。

 金も、身分証も無く、おまけにナマクラを持たせる、あの神がイケメンにしてくれるはずがない。


(若返ったことだけでも感謝しよう・・・で、俺は何歳だ?)


「なぁアレン、俺って何歳?」

「俺が知るわけないだろ。」


「だよな!」


 ジンがそう返すと2人で大笑いをした。




 そうこうしていると、


『コンコン!』 


 誰かが扉をノックする。


「誰か来たな。」


 アレンが扉へと向かう。

 どうやらトーマス商会の人が夕食のお知らせに来てくれたようだ。


 アレンが対応している間もジンは鏡の前から動かない。


(アレンとマリーがタメ口なのがわかったよ。どう見ても俺のほうが歳下だもんな。)


 ジンはまじまじと自分の顔を見ながら考えていると、


「おーいジン。食事は1階の酒場だってさ。」

「酒場!」


 酒場と聞いてテンションが上がる。

 異世界の酒に興味が湧く。


(ワインとウイスキーにビールもあるかな?)


 未知の酒を想像すると顔がニヤけてくる。

 緩む顔を見て、あることに気付く。


(俺って、酒を飲んでもいい歳なのか?)


 少し不安になるが、鏡を見ているとモブ顔とはいえ愛着が湧いてきた。


 ジンは鏡向かって、変顔をや決め顔をする。

 その様子を全てアレンに見られており、後にからかわれた。






 そろそろだ! というので集合場所へと向かう。


 酒場へ着くと既に皆が集まっていた。

 ジンたちは開いている席へと座る。


 マリーの姿が見えないので、アレンは部屋まで様子を見てくると言い席を立った。



 アレンの戻りを待っていると、トーマスが立ち上がり乾杯の挨拶を始めた。


 食事会は亡くなった2人の弔いも兼ねてというが、賑やかなほうが亡くなった2人も喜ぶとビックとウッジが言うので、皆で騒ぐことになった。



 食事が始まるり、ジンのテーブルにも料理が運ばれてくる。

 ジンは食事のマナーが心配になり、周囲の人を観察する。


 皆スプーンとフォークを使い、豪快に飲み食いしていた。


(マナーは無いな・・・アレが異世界の酒か。)


 隣の席の人が、美味そうに酒を飲んでいる。


 ジンは、酒を飲む準備をしてきた。

 風呂に入り、二日酔い専門の癒し屋の場所も確認した。

 飲む準備は万端だ。


 だが気になるのは、ジンが酒を飲んで良い年齢なのかだ。


(もう少し様子をみるか。)


 そうおもい目の前の食事を食べる。


「美味い!」


 期待していなかったのでビックリした。

 これは酒も期待できるとワクワクしてくる。


 ジンは我慢できなくなり、ステルスモードへ入る。


 皆席を自由に移動をしているので、騒ぎに乗じて人が頼んだ酒をこっそりと拝借する。


 見た目はビールだ。

 飲んでみる。


「美味い!」


 次は、ぶどう酒をこっそりと注文してみる。

 ドキドキで待っていたが、無事にジンのテーブルへ運ばれてきた。


(赤ワインだな!)


 ジンは隠れながら、謎の肉料理をつまみに注文したぶどう酒を飲んでいると誰かが隣に座る。


 アレンかと振り向くと、ケイトだった。


 隣に座るケイトがアンに手招きをする。

 アンがケイトに気付きジンの向かいに座った。


「探しましたよジンさん。」

「ホントだよ全く。旦那様はこの食事会は弔いだって言ったけどさ、アタシと、この娘の主役はアンタだよ。」


 ケイトが豪快にジンの背中を叩くとアンが頷く。


 ジンは焦ってぶどう酒を隠すと、アンが話し出す。


「でもびっくりしましたよ。突然現れて魔物を倒して良いかって聞くんですもん。」


「アタシもね、こんな子がってヒヤヒヤしながら見てたんだよ。アンタ本当にスゴイねぇ。」


「ホントすごいですよ。」


 3人で会話をしていると、アレンが戻って来た。


 アレンはアンの隣に座ると、ジンが鏡の前で変顔をしていたことをバラされ


 ジンは冗談でケイトとアンに聞いてみる。


「俺何歳に見えます?」


「私よりは上ですかね?」

「成人はしてるねぇ、で何歳なんだい?」


「わかんないですよ。」


 ジンがそう答えると、ケイトとアンは「ん?」と困惑するのでアレンが、


「自分の顔も覚えていなかったんだよなジン。」


 そう言うと2人は理解した。


「顔もかい・・・不憫だね。」

「困ったら何でも言って下さい。力になります。」


 ジンは冗談のつもりだったのだが、2人は哀れみだし少し重い空気になる。

 ジンは何か別の話題をとおもい目の前に座るアンを見る。


(え、アンが飲んでいるのは酒じゃ・・・)


 アンはどうみても高校生って歳なのに酒を飲んでいる。


「ねぇアンって何歳?」

「私ですか、16歳です。」


「お酒飲んでいい歳なの?」

「成人してるんで別に問題ないですよ。」


「成人って何歳?」

「15歳です。」


「アンタほんとに・・・」


 ケイトが手で口を押さえ目をうるうるさせるているが、ジンは堂々と酒を飲めることに喜んでいた。


 成人について、それとなく聞いてみた。


 なんでもこの世界では15歳で学校を卒業し16歳から働き始めるのだそうだ。


 そのため、仕事の責任を負えるよう学生のうちに成人するようにしているらしい。


「じゃ16歳ってことは今年から?」

「いえ2年目です。今年17歳です。」


「そっか、頑張ってね。」

「何言ってんだい、あんたが頑張んなよ!」


 酒も入ってるせいかケイトが半泣きでジンを励ましてくる。


(成人は15歳か、俺は19? 20歳を超えてるようにもみえるな。)


 ジンは酒飲みながら、自分の歳を何歳にするか考えていたのだが、ケイトは泣き上戸、アンは酒に慣れていないのか、怒ったとおもったら次は笑うなど情緒不安定となり気づけば、このテーブルはカオスな状態となっていた。


 アレンに助けを求めるようとしたら、既にこの場から逃げ出していた。


 ジンは2人の酔っ払いの相手をしていると、視界の片隅にトーマスの席を発見する。


 買い物のお礼を言おうと席を離れなようとしたら、2人に服を掴まれた。


「アンタどこくんだい。」

「そうですよ! ここで朝まで飲みましょう。」


「えっと、ト、トーマスさんに呼ばれたみたい。」


 とっさに噓をつくと、すんなりと開放してくた。

 ジンはすぐに席をたちトーマスの席へと移動する。


「トーマスさん、ありがとうございました。」

「いえいえ。良い買い物が出来たようですね。」

「アレンのおかけでボラれなくて済みました。」


 その言葉にトーマスは笑う。


 ジンはそのままトーマスの席に座り、オススメの料理と酒を進められた。

 トーマスの話は面白く、酒が進む。


 ジンも、かなり酔が回ってきたのでアレンを残し先に部屋へ戻ることにした。


 皆に挨拶をし部屋へと戻る。

 部屋へとつくなり、べットにダイブする。


(あー、疲れた。明日起きられないとヤバイしもう寝るか。)


 ジンは疲れと、酒のせいもあり、いつの間にか眠りについていた。





 窓から日が差し、眩しくて目が覚める。


「うーん、良く寝た。」


 隣のベットを見ると、いつ帰ってきたのかアレンが寝ている。


(さぁ起きるか。)


 上半身を起こす。


「ん?」


 いつもと何か違う。


 下半身に目に向けると、息子も起きている。


「こ、これは、デカイ。」


 以前のジンの息子とはまるで別人である。


 昨日の入浴時には気付かなった。

 風呂に入るとき、いちいちナニなんて気にしない。


 ジンは手を組み天を仰ぐ。


(神様ありがとうございます。俺、神様のこと信じてました。)


 神に感謝をしていると、アレンも起きた。


「おはようジン、良く眠れたか? ってなんで泣いているんだ?」


「おはようアレン。とても良く寝られたよ。」


 ジンは歓喜のあまり涙を流し、上機嫌で返事をかえした。

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