#22 睡眠セリフ
俳優の極意は一応、一夜づけした。準備を怠らずに、役に立つことはすべて覚えてきた。だけど。まさか。
俳優を頼まれるなんて、少しも思わなかった。一夜づけは、本当にいい能力だ。誰かの助けが出来るから。
自分の評価を、上げたい訳ではない。でも、少しは上がって欲しいと思っている。
台本も貰っていたから、自主的に一夜づけしていた。流れは、一回読むだけで覚えた。
セリフも、特に努力しないで、脳にもう入っている。ドラマは好きだ。ドラマは好きだけど、演じる側は苦手かもしれない。
やろうと思ったことが、そもそもないから。
ある俳優の、代役を頼まれた。メインの役ではない。でも重要な役だ。ずっと、探していたみたいだ。
急に、体調を崩したらしい。この現場は、余裕がないらしい。放送時間ギリギリで、撮るタイプのドラマらしい。
女優さんから直接、代役を頼まれて、すぐにオーケーを出した。こんなの、喜んで受けるに決まってる。
「ちょっと待ってくださいよ」
そんなセリフを、完璧に言い切った。セリフに、気持ちがのった気がする。完璧に俳優の代役が、できた気がする。
一言しか言わない役。一話しか出てこない役。でも、物語に重要な役。だから、満足感があった。
表情と、動きも重要だった。それも、出来ていたと思う。数分間、カメラには映っていたが、一発オーケーだった。




