#19 睡眠の旨味
料理の大会の決勝だ。相手はギャルと、おばあさんだ。
見た目からして、かなりの強敵そうだ。普段から、料理してそうだな。それが、第一印象だった。
会場の雰囲気は、独特だった。緊張感で、埋め尽くされている。そんな感じだ。でも、大丈夫だ。
何も心配することはない。緊張しなくなる本を、一夜づけで覚えた。そんな過去があるから。
テーマはオムライスだった。オムライスだけの料理本を、一夜づけしたことがある。だから何とか、なりそうだ。
普通に作っても、優勝できない。アイデアがすべてなのが、この大会だ。
右と左にいる対戦相手の、動きがすごい。まるで、回数を数えていない反復横跳びみたいだ。
お菓子から、離れられなかった。『駄菓子の世界』という本を、最近読んでしまったから。
これは寝る前ではなく、午前中に読んだけど、頭に残っている。酢の昆布のお菓子を、使うことにした。
合わなくもなさそうだ。いいものが出来そうな、そんな気がする。感じるままに、ただ進んでゆくだけだ。
ドライトマトも使った。これで、優勝は間違いないだろう。一夜づけの能力が見つかってから、調子いい。
本当に調子いい。対戦相手二人は、まあまあ、審査員に評価されていた。そして、僕の番になった。
僕に、審査員は拍手を送った。優勝した。満場一致だった。取材陣がたくさん来た。ひとつの目標が叶って、本当によかった。