#15 睡眠シェフ
付き合うことになった女子。その女子が、僕の料理を特に褒めてくれた。何でも、美味しいと言ってくれた。
だから、嬉しくなった。何も頼まれてない日。何も覚えなくていい日の夜は、料理本を見た。
そして、一夜で、様々な料理を生み出した。料理は、ふたりの心を繋ぎ、華やかにしてくれた。
料理は、食べるのも作るのも好きだ。だから、料理人の道を考えた。
勉強が苦手。生活であまり、使わない事柄は苦手。一夜づけは、苦手なものは受け付けない。
苦手なものを覚えた朝は、頭痛がする。だから、自然と家事関係に、舵を取ってしまったのだ。
今日は、彼女の家だ。今日、3人目の女子の家が、彼女の家だ。前のふたりは、依頼されて行ってきた。
でもこれは、完全なるプライベート。愛ある訪問だ。
彼女のリクエストの、ハンバーグを作っている。箸で、切れるタイプの。
「他の女子の家に行かないで」
「いや」
抱きつかれた。言葉が出なかった。何も言えなかった。ただただ、立っていただけだった。
ベタベタされるのは、苦手だ。触られるのは、そっとソフトに優しくがいい。
ずっと、近くにいる。以前のイメージとは、少し離れていた。
付き合ってから、彼女が変わった気がする。でも、特に気にしなかった。
そんなものだろう。そこまでは行くだろう。そんな範囲は、越えていなかったから。