#12 睡眠達人
眠い。あくびが何回も出る。お礼はあっても、お札は貰えない。それなのに、無理していた。
全ては、女子にモテるためだ。クラスメイトの女子の家に、早朝から向かった。
学校よりも遠い距離だ。反対側というやつだ。まあ、学校までがやや近いからいい。通学距離は、平均よりかなり下だろう。
チャイムを鳴らす。
『♪ヂリヂリヂリヂリ』
想像より、鈍い音がした。ドアが開くと、足音やら叫び声やらが、聞こえてきた。
予想から外れてはいない。だけど、予想のギリギリを攻めてきた。
妹がいっぱいいた。見えるだけでも、4人はいる。頼んできた女子は、母親の代わりみたいな感じだろう。
この家庭は、シングルマザーなのだろう。そう解釈した。
「色々お願い」
「分かった。一夜づけしてきたから、任せて」
「うん」
炊事や洗濯や、掃除など。テキパキとこなした。同時進行でやった。自分でも、自分が何人もいるような気がした。
家事の中に、妹たちの相手も織り交ぜながら。どんどん、進めていった。
「おいしい」
「たのしい」
「おもしろい」
「すごいすごい」
そんな声が飛び交っていた。嬉しかった。少しは、女子と仲良くなれた。だから、良かった。
「もう何回か、頼んでいい?」
「いいけど」
恋には、発展しなさそうだ。これだけ、妹の世話に忙しいのだから。
疲れはしなかった。だから、楽しいということだ。