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司祭様に懺悔を  作者: 沢山多部太
7/11

七、正体


 黒い塊との追いかけっこを数分すると、体育倉庫のある行き止まりに着いた。もう逃げ場がないことを理解したようで、それは立ち止った。あちらは動きにくい厚手のローブを着こんでいるからか、俺よりも疲れているように見える。

 「なんで追ってくるのよ」

 小次郎はぽつりと問いかけてきた。その声は見た目とは裏腹に透き通っており、小さいけれど鮮明だった。

 「ふう、あの、その手に持ってる携帯が」

 「ああこれ、あなたのものだったのね」

 手を伸ばしながら、こちらに近づいてくる。その手は闇の中の一筋の光のように白く、繊細だった。

 荒い息の中、なんとか生唾を飲み込み、俺はただ立ち尽くしていた。


 「あっ」

 俺の前に着くその瞬間、小次郎はローブの裾を踏み、バランスを崩した。咄嗟に両手を広げる。

 胸より少しやや左腕に飛び込んできたそいつは、俺の顔を見て、驚いたように目を見開いていた。想像よりずっと軽く、本当に実態があるのかどうかもよく分からなかった。

 「ご、ごめんなさい。あまり着慣れていないから、その」

 すぐに俺から離れ、深々とフードを被りなおした。

 「それ、もう返したから。さよなら」

 彼女は俺の横を通り過ぎ、去っていく。

 最初に見た時よりもずっと小さく見えた背中には、いや、その背中を見る俺の目には、めいいっぱいの疑問符が映っていた。自然と眉間に皺がよる。そしてそれは、すぐに嘲笑に似た乾いた笑みに代わる。

 それはミステリーサークルはただの農夫の悪戯だったように、ハンバーガーチェーンのナゲットにミミズが使われていなかったように、ネット掲示板に投稿された恋愛が釣りだったように、思った以上のあっけない顛末だった。

 安堵と、ほんの少しの失望が頭の中を駆け巡る。

 「お前が、司祭様だったのか?」

 彼女の肩はびくっと跳ね、歩みが止まる。

 「なあ、神ノ池」

 司祭様の正体は、なんてことのない、ただのクラスメイトの女の子だった。



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