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出来損ないのゴミと学院&一族に見放された俺ですが、伝説の召喚獣『異形八獣』を手に入れたのでマイペースに表も裏も牛耳るつもりです  作者: 徳川レモン
学内掌握編

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7話 三つの巨頭


 デロンは覚悟を決めたようにとある部屋へと入った。

 部屋の中ではすでに三人の人物が顔を揃えている。


 学長ハウゼス・オーガス

 教頭ザラ・フェルナンド

 生徒会長エルフェル・レインズ


 彼は室内を満たす三人の濃密な魔力にほんの一瞬震え上がった。

 学院でトップクラスに強い魔術師が三人もいるのだ。彼でなくとも恐れ戦いただろう。むしろ長年教師として務めている彼だからこそ表面上平静を保っていられた。


 デロンは学長へ敬礼を行う。

 ハウゼスは微笑みを浮かべ話を始めた。


「先日の件についての報告書を読ませて貰った。あのベンジャミン君が古代魔術研究会の一員だったとはね。非常に残念だよ」

「過激な手段で古代魔術の復活を行う者達でしたな。教師とあろう者が生徒を使って実験とは。由々しき事態ですな。我が校の管理責任が問われます」


 ハウゼスに応じるようにザラが発言した。

 さらにザラは続ける。


「未然に防いだそのウィル・レインズには我々が感謝を述べていたと伝えておきなさい。褒められるべき行いだ。しかし、一つ気になるのは彼のステータスだ。どうやってベンジャミンを倒した」

「それは、報告書に書いた通りでございます」

「召喚不能者でドッペルゲンガーしか有していない者が、第四階位の精霊を倒したと本気で言っているのか。腐ってもアレは我が校の教師なんだぞ。貴様が片づけたなら納得もゆくが、これが倒したとはどうにも考えづらい」


 ザラは黒々とした髪をオールバックにした細身の人物。

 その目は鷹のように鋭く右手には常に手袋をはめていた。


 彼は召喚士ではない。魔術に特化した本当の意味での魔術師だ。


 魔術を専攻した者は数百の術を使いこなす。多彩な攻撃と想定を崩す知謀により単身で召喚獣を圧倒し者によっては軍にすら勝利する。表向き召喚士と魔術師は対等に扱われているが、実質は格下とみなされている。

 なぜなら召喚士とは魔術師になれなかった者達の末裔だからである。


 召喚士で『別格』と扱われるのはほんの一握りだ。


 その一人が同席するエルフェル・レインズである。


「貴殿の弟だろう。実際問題どうなんだね。意見を聞きたい」

「あれはかなりの魔力量を有しています。精霊相手でも強引に場の主導権を奪うことは可能でしょう。加えてベンジャミン先生は過剰なまでに精霊に頼る傾向がありました。その精霊が無効化されたとなれば混乱は避けられない。そうなればドッペルゲンガーでも殺害することは容易」

「よく知る教師だからこそ倒せた、と。納得した」

「教頭、あれを弟と称するのは止めていただきたい。すでにレインズの名を剥奪された赤の他人です。次もそのように扱うならば侮辱と捉えますよ」


 ブロンドの長髪に女性と見紛うような凜々しくも端整な顔立ち。

 だが、エルフェルの放つ魔力は、小鳥を愛でるような美しい外見とは全く正反対の全てを凍り付かせるように冷たく鋭い。


 デロンは生きた心地がしなかった。


 エルフェル・レインズは学生の身分でありながら、すでにエリート組織である召喚騎士団に席を置いている者だ。卒業後は騎士団副団長の昇格が約束されており、学院史上最強とも評されている。

 教師も恐れる生徒会長、故にこの場に同席が許されていた。


「喧嘩はやめたまえ。今日はウィル君のご褒美を決める素晴らしい日じゃないか」

「失礼いたしました」

「申し訳ありません」


 学長の一声で場は穏やかになる。


 ハウゼスは国内でも片手で数えられる最強クラスの魔術師の一人。

 常に微笑をたたえているが、その目は覗いた者をゾッとさせるほど暗く冷たい。


 噂では召喚術も使えると聞くが……デロンはそんな考えを巡らせつつ緊張で手が汗でじっとりするのを感じていた。


「ウィル君からの希望は?」

「特に聞いておりません」

「そう、では担任である君から希望を聞かせて貰おう」


 ごくりとデロンは唾を飲み込んだ。


 ウィルに期待していろと大口を叩いた手前、ここであっさりお任せしますとは言えなかった。


 デロンには夢があった。


 それは己が手で歴史に残る召喚士を生み出すことだ。

 黄金のような生徒をより純度の高い黄金に仕上げることに憧れていた。


 だが、やってくる生徒は宝石の原石ではあっても黄金ではなかった。


 一時はヘイオスとエリーゼに期待もしたが、ウィルの連れてきたリーディアを見て考えは百八十度変わった。


 彼は黄金どころかプラチナの塊だった。


 デロンはゾクゾクした。

 今までの考えが覆され彼が眩しいほどに輝いているように見えた。否、目が曇りすぎていて見えていなかっただけだ。だからこそより衝撃を受けた。


 ウィルを優遇したい。特別扱いしてこれウチの教え子なんですと自慢したい。


 今のデロンはウィルにぞっこんだった。


「彼を特待生にしていただけないでしょうか」

「さすがにそれは難しいね。成績を見る限りそのラインは満たしているけど、召喚不能者でしょ? 過去に実例もないし色々と圧力もかかっててさ」


 ハウゼスはエルフェルをチラリと一瞥する。


「じゃあこうしよう。今回のお礼として一年間に限り学費を半額にしてあげるよ。全額免除とはいかないが、彼にとって悪い話じゃないと思うけどね」

「学長……!?」

「彼は大勢の生徒を救ったんだ。このくらいのご褒美があってしかるべきじゃないか。元を正せばベンジャミン君の狙いを見抜けなかったこちらの不手際が原因。君も問題ないよね」

「無論。レインズ家はあれとは無関係。どうなさろうが口を挟むことではない」


 デロンは『良き報告ができそうだ』と安堵する。

 心の中でウィルの喜ぶ姿が浮かんでデロンは僅かに口角を上げる。


 話は終わりデロンは一礼して退室しようとする。

 そこでエルフェルに呼び止められた。


「出来損ないに伝えておいてくれ。さっさと召喚士を諦め自主退学しろと。ゴミに回りをうろちょろされるのは不愉快だ」

「もしそのゴミが貴方を超えたら?」

「天地がひっくり返ってもあり得ん」


 エルフェルはしばし溜めてから続けた。


「もし負けるようなことがあれば裸で校庭を百周してやる」



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