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初対面の女性に対して脳内でレビューするタイプの男


「やっぱり勇者様も同じ噂を仕入れてたんですね」

「ああ、ってもホントにさわり程度しか聞いてないけどな。動く死体が出たから通行止めされてるらしいってだけ。何で出たのかとか、どんくらい出たのかとかは全然だ」

「リンの方はもうちょっと踏み込んだ内容ですね。通行止めは一ヶ月ほど前から急に始まったらしくてですね。当然、不満も出たそうなんです。それで無理やりテニカへ向かった人が見るも無惨な姿で帰ってきたとか。真偽は定かでは無いですけど……」

「いや、そんだけ分かってりゃ十分だ。とりあえずエリンと合流すんぞ」

「あっ、じゃあ皆さんに挨拶してきますね」

「あい、行ってらっしゃーい」


 職人連中に挨拶に行くリンをぼんやりと眺める。普段一緒にいると奇行ばかりが目に付くが、こうして客観的に見てみるとすごくよくできた人間なんだよな……いや、僵尸だったか。リンは生存どんな人間だったのだろうか。


「勇者様ー、お待たせしました! 」

「ん、ああ……」

「あれ? 何か考え事してました? 」


 このようにこちらの状態にも目敏く気づいてくれる。それに俺が誰かと喋ってる時は必要な時以外黙っていてくれるし。リンってひょっとしたら意外に良い奴なのかもしれない。


「勇者様ー、おーい」

「んな何回も呼ばなくても聞こえてるよ。悪かったな心配させて」

「いえ別にそこまで心配はしてないんですけど……でもアレですね。勇者様がリンにそんな優しい言葉かけるの珍しいですねぇ」

「なんか俺が血も涙もない人間みたいに聞こえるな……」







「あっ、勇者くーん、リンちゃーん! こっちこっち! 」

「ひぅっ!? ……な、何ですか。急にお、大声を出さないでくださいよ」

「あっ、ごめんごめん。……あれ? 勇者くんどしたの固まっちゃって」

「いや…………誰? 」


 


 合流場所に向かい、エリンが先に着いていた。これは別に何もおかしな事は無い。組合支部はここから近いからな。問題なのはエリンがマジで会ったこともないし見たことも無い人を連れてる事だ。誰だそいつ。


「ふふん、この人はねー」

「ぇあ、えと、ニアです。えへ……」

「言われたっ!? 」


 うわー、どうしよう。嫌いなタイプー。俺こういう何もないのにオドオドしてる奴嫌いだわー。


「おい、エリン。なんでこんな得体の知れないやつ連れてきたんだよ……! 」

「いやぁ、私は知っての通り組合で聞き込みしてたんだけどね? そこでこの子に会ってさぁ……めっちゃくちゃ怪しいんだよ」

「ほう……? と言うと? 」

「うん、多分ね。この娘、人間じゃないよ」

「……なるほど、そりゃ怪しいな」


 もう一度……ニアだっけか? をよく見てみる。全身を覆うタイプの大きめのローブを被っており体型や服装などは分からないが、声からしておそらく女性だろう。顔を伺うにはフードが邪魔だが、フードの隙間からは透き通るような薄紫の髪が覗いている。


 ……正直、これだけじゃ分かりやすい怪しさは感じないな。不審者的な怪しさはあるが。けれどエリンが言うんだ。疑う価値はある。


「とりあえずさ、なんか質問してみてよ。この娘の心読みにくいけど、ある程度真偽とか隠してる事とか見抜けるかも」

「……ふむ、じゃあこっちが掴んできた情報の共有の前に尋問だな。おい、ニアだっけか? 幾つか質問に答えて欲しいんだが」

「ぇ……自分の名前も言わないのにそんな傲慢に質問とか……うわ…………あ、えと、何でしょうか……? 」

「……いや、そうだな。あー、俺は勇者なんだが。テニカで起こってる何らかの事件を調査していてだな、それに関してなにか知っている事があれば聞きたいんだが……」

「ゆ、勇者……? …………そういうの自称しちゃうタイプの人かぁ……どうしよ、こんな痛い人に会った時の対処とかわかんない…………て、テニカの事ですか。えと、ちょっと分かんない、です。えへへ……」


 聞こえてんだよとキレ散らかしたい。なんだてめぇ。フード被ってるから暴言が届かないとでも思ってんのか。勇者の地獄耳舐めるな。


「……おい、エリン」

「うわぁ、勇者くんの心が見た事ないくらいに怒気に染ってる……こほん。いや、あれ嘘だね。割と分かりやすいけど」


 まあだろうな。そんな事だろうとは思った。コイツ、シンプルに嘘つくのが下手すぎるからな。


「おい、ほんっとーに何も知らないのか? 」

「……しつこ…………し、知りませんよ。も、もういいですか……? 」

「ふーん……誰かに脅されてるとかか? それこそ五大市長の誰かにと「あの人はそんな事しない!!! 」


 へぇー……? 分かりやすい反応を見せたな。それに勢いよく頭を振ったせいで顔が良く見える。

 やはりと言うか何と言うか顔は整っている。が、なんというんだっけか……地雷系? そんな感じな気配がする。薄紫色の髪の毛は下の方に行くにつれてふんわりとしたウェーブを描いており、左右の耳の上の辺りに三つ編み? みたいなのが付いてる。長いまつ毛に彩られた瞳は、色素薄めな紅色だ。


 ……そして何より、その肌は生きた人間のように血の通った肌色では無い。


「…………黙って聞いてればズカズカと…………良いですよ、教えてあげますよ。私はニア。五大市長の一人、ゲオルグ様に仕える死霊術師(ネクロマンサー)です……! 」


 リンよりもさらに青白い、死人の肌だった。

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