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融点30°くらいのチョロさ


 エリンの能力を知ってから数日、俺たちは順当にテニカへの道を進んでいた、のだが。


「通行止めぇ? 」

「はい。五大市長総員による決定事項です。どんな人間、どんな理由であれ現在テニカ及びリーチャへの通行は認められておりません」

「……ふーん。で、それ何時位までかかんの? 」

「未定です。五大市長からの命令があり次第お伝え致します」

「ほうほう。んで? 理由は? 」

「それは聞かされておりません。知る必要も無いでしょう」


 キレそう。いや別にこの人は仕事でやっているだけなので、何か悪い事をしたという訳では無いのだが。それはそれとして順調に進んでいた旅がストップする、というのは結構なストレスだ。胃に来る。ただでさえ最近エリンの感情の起伏がジェットコースターで気を使うというのに。


「勇者様、どうでしたか? 」

「だーめだ。理由も分からん、いつまでかかるかも分からん通行止めだとさ」

「うーん……それは困りましたね。何か迂回路など探せればいいのですが……」

「でもさ、勇者くんが言うには五大市長による決定なんでしょ? ってことはここだけじゃなくて全方位通行規制がかかってるんじゃない? 」

「そうなんだよなぁ……勇者権限でどうにかならんかね」


 小国テニカ。この国は小さな都市や町などが集まってできた国だ。当然、トップに座る人材を決める際にはかなり難航したらしい。その結果生まれた制度が今話にでてきた五大市長。五つの規模が大きい都市の市長がリーチャに集まり、話し合って国の今後を決めるという方式は、テニカにとっては最適な策だったと言われている。


「……ま、考えててもしょうがないか。とりあえず今日はもう遅いから近くの村で宿取って休もう」

「そうですね。ここで通行規制がされてるって事は急がないと部屋が無いとか、全然有り得ない話じゃないですし」


 と、いうわけで近くの村へ移動。徒歩五分ほどの距離だったため、通行規制で人が留まる可能性を考えて、通行止めの場所を村の近くにしたのかもしれないな。……いや、見る限り急ごしらえな感じがするため簡易的な施設の集まりなのかもしれない。


「ふぅん、結構賑わってる村だねぇ」

「そだな。単純に留まってる人が多いんじゃないか? 」


 こりゃ宿屋が空いてるかどうか怪しいな。最悪野宿も覚悟するか。まあ、見える範囲で野宿してる人はいないから杞憂かもしれないが。


「あ、ここ宿屋ですかね? リン、空いてるかどうか聞いてきましょうか? 」

「あー、大丈夫だ。俺聞いてくるから」


 わざわざ三人でぞろぞろ行く必要も無いので一人でロビーへ。


「すみませーん、何泊かしたいんですが部屋空いてますか? 」

「おや、お客さんかい? ああ、空いてるよ……あ、いやすまん。一部屋しか空いてないんだ。三人……だよな? 」

「あー、そうだな。ちなみにその空いてる部屋ってのは……」

「二人部屋なんだ、すまんなぁ」

「ん、いや大丈夫だ。ちょっと仲間と話してくる」



「あ、勇者様。どうでした? お部屋、空いてましたか? 」

「んにゃ、二人部屋が一つしか空いてないってよ。だからお前らで泊まってこい。俺は別に一人で何とかできっから……」

「「ダメ!!! 」」

「おう……」

 

 やたらと強い勢いでダメ出しされた。何でやねん。リン、お前敬語どうしたんだよ。エリン、お前そんな強く否定する理由ないだろ。


「……あー、じゃあどうすんだよ。俺が部屋使ったとして三人で使うのは厳しいだろ。誰か一人だけ放り出すってのもアレだし」

「えー? 三人でくっついて寝れば大丈夫でしょー。ね、リンちゃん」

「へっ!? あ、はいっ! リン、頑張ります!! 」

「……何を? 」


 赤面爆発しててダメそうな予感しかしない。エリンはまあ、ここまでの道中でくっついて寝るのは大丈夫そうだったが、リンはダメだろあいつ。ラーノ村での醜態を忘れたのか。


「はぁ、やっぱ俺が床かなんかで寝るわ。お前らでベッド使えばいいだろ」

「えぇー? 勇者くんは私が床で寝てる勇者くんを見過ごしたまま安眠できるような冷たい人間だと思ってるのー? 」

「いや、そういうんじゃないし。てかそもそも必要が無いのに付き合ってもない男女が同衾するってのはダメだろ」

「ぶー……必要だよ、必要ですとも! 」

「どこがだよ」


「だ、大丈夫ですよ勇者様っ!! 」

「あー? 」

「りっ、リンだって勇者様が床で寝てるのに、ベッドですやすやなんて出来ないし、そっ、それに……その、リンは勇者様となら……だ、大丈夫です……うぅ」


 いや、そんな真っ赤になりながら目も合わせずに言われましても。……てかあれか。リンだけがダメなら手はあるか。


「じゃああれだな。エリンを真ん中にして寝ればいいだろ。それならリンも恥ずかしがらずに寝れんだろ」

「え、あ……そ、そうですね」

「はい決定。部屋取ってくるな」


 あー、何で宿屋の部屋一個取るのにこんな手間取らなきゃダメなんだよ。やっぱりこいつら連れてきたの失敗か?






 時刻は夜、窓の外は真っ暗だ。部屋の中は暖かなオレンジ色で満たされている。


「はぁ……予定が狂ったな」

「しょうがないですよ。通行止めになってるなんて分かりませんし。それよりこれからどうしましょうか……最悪無理やり山越えとかを……勇者様? どしたんですか? 」


 ……関係は無いのだがメイド服を着ておらず、髪も下ろしているリンの姿はかなり見慣れない。……別に目を奪われてるとかそんなことは無い。無い。


「ちょっとー、勇者くん。リンちゃんのこと見すぎー。分かりやすすぎだぞー」

「え、勇者様。リンに見惚れてたんですか? えぇー、えへへぇー……もーう、勇者様ったらぁ……ふふっ」

「違うわ。名誉毀損やめろ」


「それより今後の話だろ? とりあえず明日以降はこの村で情報収集したい。見た感じ手伝えることは多そうだったからな。いい感じに恩を売って情報を引き出そうと思う」

「情報を集めるためにはそれが手っ取り早いとはいえなかなか悪い言い方するねぇ……」

「言い方変えたところでやることは変わらんからな。ほら、さっさと寝て明日に備えるぞ」

「はーい。ほら、リンちゃん寝よ? 」

「えへへぇー……うふふ……もう、勇者様ったらぁー……リンのこと見たいならそう言ってくれれば良いのにぃ……むふー」

「あっ……あー……うん」


 おい、全てを諦めた顔でこっちを見るな。俺だってトリップしてる怪生命体に触れないようにしてたんだから。


 疲れてるし時間もかけたくないのでリンを抱えベッドに放り込む。そのまま俺も隣に潜り込み、即睡眠。明かりの始末は頼んだエリン。


「あっ……まあいいか……」


 何やらエリンが言ってた気がするが……知らん、俺は眠いんだ。何かあったら起こしてくれ。すやぁ。


 昨日も同じようなこと言ってましたが、最近忙しいので1日1話投稿ですm(_ _)m

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