異世界転生
チリン、チリリン、チリン。
2018年の冬、鷹司清人(17)は死亡した。
清人が目が覚ますと、そこはまるでアニメや漫画のような雲の上の"楽園"が広がっていた。
寝転がっていた体を起こして、清人は本能のままに足を動かした。
ここはどこだろうか、自分は今、どこにいるのだろうか。
そのような思考が脳を駆けるよりも先に、行かなくてはならない場所があるような気がして、清人は無意識のうちに走りだしていた。
数分、短い時間を走っていると、目の前に扉が現れ、その扉は、ゆっくり、ゆっくりと光に包まれながら開かれていく。
清人は漫ろに、その中へと入ってしまう。
その中に入った途端、何か、慈愛に満ちた、煙のような、人のような、不思議な感触と温もりに抱きしめられた。
「……神、様……?」
チリン、と。
清人の発したその言葉を肯定するかのように、鈴の、風を受けた風鈴のような音色が清人の脳内だけで再生された。
扉の先は、また、雲の上。
ここで、初めて清人の意識は恐怖を思い出した。
どれだけ先に進もうと、決して、ここから先に逃れることはできないという、永遠に彷徨い続けるしかないという、そういった"無限"や"永遠"に対しての強い恐怖心である。
それでも、清人は歩いた。
いいや、走った。
息を切らし、自分の意思で、本能に逆らう理性を抱いて、確かに、それを感じながら、走り抜いた先には、扉があった。
しかしこの扉、先ほどと違い、自動で開かず押そうが引こうがびくともしない。
チリン、と。
今度は遠くの方から風鈴の音色が風を伝うが如く聞こえてきた。
清人は、とうとう恐怖心に恐れ、負け、涙こそ流さないもののその場で崩れてしまった。
腰が抜け、ろくに立つことができず、風鈴の音は近づいてくるばかり。
やがて、風鈴の正体が目の前に来た。
清人の身長、173cmよりも5cmほど小さく、赤く桜の花びらの彩りを特長とした和傘を持ち、比較的装飾の少ない着物を着て、背後には二人、中央の女性よりもさらに5cmほど小さい、着物だけを着て、和傘を持たない人がいた。
中央の女性が清人に気がつくと、女性は驚いたような、呆れたような顔をした。
「迷ってしまったのね。あなたの出身は?」
「こ、神戸です」
見れば、この女性、すごく綺麗な姿形をしている。
「ごめんなさい。惑星はどちらかしら?」
清人はその質問を不思議に感じた。
「地球です」
「地球ね、こっちに来て。私が案内してあげる。」
清人は言われるがまま女性について行った。
女性から風鈴の音が鳴っている、とも最初は思ったが、よく見れば、後ろにいる二人のうち一人が風鈴のようなものを持っている。
女性についていくこと数分、ある扉の前に来た。
「この先に行けば、あなたの来世を選定する場所に行けるわ。ただ、かなり詰問を迫られるから臆しないようにね。」
と、そこまで言うと、女性は何やら深呼吸をして、緊張する空気が清人の肌に電流を流すようにピリピリさせる。
「本当なら、私の役目はここで終わりなんだけどね。私、あなたのことを気に入ったみたいなの。」
清人には、女性が何を言っているのか、まるで分からなかった。
女性の、少し笑ったような表情を一切変えずに語るその口の正体を、無意識に確かめようともしていた。
「せめて、これだけ。」
そう言って、掌を清人の額に向ける。
清人は訳もわからないまま、女性の掌が光るかと思うと、女性は手をしまい、「もう、行きなさい」と言ってその場を立ち去った。
清人は静かに頷くと、その扉を押し広げて、その先に映る奇跡の元へと、足を踏み込んだ。
※今作品では、後書きは本編とは一切関係ありません。
ですので、読みたくない方は読まなくて大丈夫です。
この作品って、異世界転生させて、なんか強いぜー的なことしか考えて作ってないので過度な期待はおやめください。
実力があるなら期待を超えたいです。はい。
それと、書き溜めた分を一日ごとに更新するので4日連続投稿となります。
やる気があったなら5日になるかも!?
ではでは〜。