後日談?
王子に捕まった後の後日談です。
大陸最高峰の山頂で王子に捕まり、隣国の王宮に連行された。
凱旋のような出迎えだったが気にしない。気にしたら負けだ。
取り合えず、国王夫妻と二人の兄王子夫妻や各大臣と顔合わせと成り、小広間に集まったのだが、
「何故皆様泣いているのですか?」
そう、何故か全員泣いている。
執事とか、宰相とか、国家の重鎮までもが泣いている。
説明求むと王子を見ても、笑みを深めるだけ。
困惑していると、未だ目元にハンカチを当てている王妃様が説明してくれた。
第三王子は生まれつき魔力が高い、否、高過ぎた。五百年は余裕で生きると太鼓判を貰う程に。
魔力制御はしっかりと出来ているが、無意識に漏らす魔力量も常人よりも遥かに高い。この為、周囲の人間は漏れる魔力を『無言の威圧』と捉えて近付かない。
国王夫妻や兄王子達のように、耐えられるか慣れる事が出来た人間はほとんどいなかった。
王子の婚約者になりたくても条件が厳しく、多くの貴族令嬢や王女が泣く泣く諦めたらしい。
このままでは、王子は生涯独身になってしまうと、国王夫妻は危機感を募らせ、婚約者候補探しとして王子を隣国に留学させた。
留学先の学園もそれなりの数の生徒を抱えている為、中々見つからなかった。
だが、神は我らを見捨てなかったと、王が泣いて説明を代わる。
……色々と突っ込みたいが、説明はまだまだ続くので我慢。
留学してから一年後(学年で言うと三年生)のクラス替えで、王子の魔力威圧が効かない自分が現れた。
始めは勘違いと思ったらしいが、威圧を強めて話しかけても平気だった為、勘違いは間違いと判断したそうだ。
その後の素性調査で『候補者発見』となる。これに国王夫妻は何が何でも息子の嫁にすると祈祷パーティを開くほどに喜んだそうな。
隣国出身だけど、伯爵家令嬢で、婚約者不在。学園卒業後は家を出る=伯爵家を(何を思ったのか)無視出来る。
宰相の家の養女にしてしまえば、処々の問題はどうにでも出来る。
王家――と言うか、国の上層部が一丸となって王子の婚約話を進めたらしい。相手の事を考えずに。
あそこまで一体感を持って仕事が出来たのは初めてだったそうで、以後、上層部は皆さん仲が良いらしい。それは大変良い事だ。
つつがなく処々の問題を乗り越えたが、卒業後に問題が発生した。
そう、自分が王子に興味を持たず、逃亡した。
大抵の貴族令嬢なら『顔と身分の良い男=優良物件』と捉える。王子は超優良物件と言っても過言ではない。故に王子がフラれる珍事発生で、上層部に激震が走った。
だが、第三王子の婚約を推し進めていた過程で一枚岩となれたお蔭で騒ぎは直に鎮静化し、国を挙げて自分の捜索を始まった。
「つまりだ。君のお蔭で派閥争いも沈静化し、やっと我が国は一つに成れたのだ」
国王は泣きながらそう締め括った。隣にいる王妃以下皆さん頷いていらっしゃる。
「……そうでしたか」
突っ込む気力が失せたので、これしか返せない。色んな意味で聞きたくなかった裏事情に、頭痛がする。
隣国は派閥争いが酷く、時に貴族同士の武力争いに発展する事もあるとは聞いていた。
それが何故、第三王子の嫁迎え入れ騒動で鎮静化してまとまるのか。
あれか? 共通の目標が無いとまとまれない国なのか? ここは。
内心で零す呆れのため息で気力が漏れる。
自分は、早まったのだろうか? そんな疑問が湧いて来るが、国王に両手を掴まれどこかに飛んで行く。
息子を頼むと泣く国王に否は返せないが、早まったのだろうか、と言う疑問が再び湧いて来た。
その後、休む間もなくあれこれ予定をこなしていると、あっと言う間に結婚式当日となった。
両親と家族? 宰相(公爵家)の養女となったので呼んでいません。既に絶縁済みだしね。
晴れやかな空は、婚姻承諾書にサインした時と同じような蒼穹だった。
騒動で忘れていたが、ここはゲームの世界だ。
でも、ゲーム期間が終わった後にどんな結末が待っているのか知っているものはいない。
それは、ここがゲームの世界だと教えてくれた赤毛(主人公)も知らないだろう。奴がどうしているかも知らないし。
明日は未知だからこそ、期待が沸く。知っているとやはり味気ない。
隣に立つ男はどんな未来をもたらすのか。
知りたいと言う気持ちはない。事前に知って気疲れは起こしたくない。
事前準備は必要だけど、気構えてしまうから、やっぱり知らないっていいね。
最終的にこの終わりに辿り着いてしまうのは、これが自分だから、仕方が無いのだろうな。
短いが完結です。
お付き合いありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。