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愛が重め故断罪された無罪の悪役令嬢は、助けてくれた元騎士の貧乏子爵様に勝手に楽しく尽くします  作者: tea


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番外編 リュシアンとチョコレート② (女王様side)

「僕に婚姻破棄を言い渡されるおつもりですか? ……はっ! もしかして僕がアイツを虐めているとでも言われましたか?! 僕は無実です!! それらは全てイライアスの自作自演です! 信じてくださいますよね?!!!」


パーティーが終わり、ようやく二人になったタイミングでリュシアンがどこぞの悪役令嬢みたいな事を言い出しました。


婚姻破棄?

そんな言葉初めて聞きましたが……。

それはともかく


「イライアス様のペースに飲まれてしまって本当にごめんなさい。でも、リュシアンしか勝たんから!! リュシアンが優勝だから!!!」


素直に自分の失態を申し訳なく思い五体投地の勢いで必死になって謝れば、私の圧に気圧されたのか


「……準優勝者は無しですからね」


投地を慌てて阻止したリュシアンに、なんとかかんとか許してもらう事が出来ました。





……ちなみに。

リュシアンがイライアス様を虐めてるとのタレコミはどこからも入っていません。


リュシアン、恐らく何かやりましたね。

その辺、今後厳しく目を光らせておきたいと思います。


無邪気過ぎるイライアス様の扱いも気を付けなければ。





そう、分かっていた筈だったのに……。





「うーん、どうしよう」


夜空に上がった美しい花火を見上げながら、私は頭を抱え呻きました。


「アーデルリーザ様? ……花火はお嫌いでしたか?」


声がする方を力なく見やれば、イライアス様がそのロイヤルブルーの瞳を不安げに細められています。



花火?

もちろん好きですよ。

以前は、この国で見られる花火と言えば単色の物が多かったのですが、前世の記憶を頼りに色々な種類の金属を混ぜると色が変わる旨を伝えたところ、ここでも色とりどりのものが楽しめるようになりましたし。



ゆるゆると首を横に振れば、イライアス様がパッとその表情をほころばせられました。


「よかった! 最近お忙しそうだったので、気晴らしにぜひこちらにお連れしたいと思っていたのです!!」



そうなんです。

最近はリュシアンとゆっくりお茶をする暇もないくらい忙しかったのです。


……何故ならリュシアンと一緒にこの花火を観に行こうと約束していたから。



なのに、夕方にイライアス様に


『大事なお話があります』


とどこか切羽詰まったような表情で言われ、慌てて駆け付けた結果がコレ……。

イライアス様は単純に私を喜ばせようとサプライズをして下さっただけで、悪気はないのでしょうが……。


リュシアン、怒ってるだろうなぁ。





花火が終わり。

修羅場を覚悟して城に戻れば、意外にもリュシアンは出迎えに姿を見せませんでした。


私室に居るのかと思いましたが、そこにも夫婦の寝室にもいません。

あちこち探し回った末、執務室のソファーでふて寝するリュシアンをようやく見つけました。



「……リュシアン、本当にごめんなさい。約束を破る気はなかったの……」


何と声を掛けるべきか散々迷った挙句、そう言ってそのサラサラの前髪を撫でれば、リュシアンは寝返りを打つふりをして、寝たふりを続けたままその綺麗な顔を伏せてしまいました。





どうしたらいいのでしょう。



途方にくれていたら、私に散々絡まれウンザリした宰相が一冊の本をくれました。

その本のタイトルはズバリ


『新しい子猫の迎え方』



…………。

最近リュシアンが綺麗な猫っぽく見えるのは、どうやら私だけではなかった様です。



一応ページをめくれば、こんな事が書かれていました。


『猫ちゃん同士が仲良く出来るポイント①

意識的に先住猫を新入り猫より優先してあげましょう

食事やブラッシングなど何をするにも先住猫を優先させましょう

新入り猫に対する不満が減少して、慣れやすくなります』


イライアス様はお客様なので、タイミングが被ってしまったときにはいつだってリュシアンには待ってもらわざるを得ないのですが……。

さて、どうしましょう?





「リュシアン、ブラッシング……してもいい?」


「へ???」


余りに想定外の提案だったせいでしょう。

リュシアンの執務室を訪れ、そんな声を掛ければリュシアンがリュシアンらしからぬ少し間の抜けたリアクションをとりました。


「ブラッシング??? ……すみません、よく聞き取れなかったみたいで。もう一度言っていただけませんか?」


やや強引に自分の聞き間違いと納得しようとしたリュシアンに、新しく用意した美しい飾りが彫られた櫛を見せれば、リュシアンは途惑いながらも大人しく彼お気に入りのソファーに座ってくれました。


ソファーに座ったリュシアンの背後に立ちその煌めくの髪に櫛を通せば、何の抵抗も無く形の良い後頭部を黄金色の髪がサラサラと音を立てて流れていきます。



……コレ、なんか意味あるのかな?

換毛期の猫だったらね、猫一匹分くらいの毛がブラッシングで取れるのでやりがいもあるのですが。


そう思った時です、意外にもリュシアンが気持ち良さげに目を閉じて、コテンとその頭を私の胸元に預けて来ました。


ほうほう!

意外と悪くないみたいです。



その後、何となくご機嫌も治ったみたいだったので


『この本を参考にもっと色々やってみよう!』


そう調子に乗り自室でその本を開いてみた時でした。



その本を見つけたリュシアンが


「新しい夫を迎えるつもりですか?!」


と変な勘違いをして、ブラッシングする前以上に拗ねてしまいました。

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