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第49話:こんなんで出きました

剣と魔法が物語の中心では無い、ファンタジーを目指します。

戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくします。



荷車を引いて停止線と言うかスタートラインと言うか、地面にひかれた線の手前までユックリ進む。

急に加速して子供や動物を巻き込んだら目も当てられないから、とにかくユックリだ。

神官と兵士が飛び出さないように見張っていてくれてるけど、念には念を入れとく。


「 ちょっと待って下さい 」


ドリーが飛び降りてきた。


「 最初から全力でお願いします 」


言うだけ言って荷台に帰っていく、何だったんだ。

急な事だったんで俺の足は止まってる。

荷台に戻ったドリーは錫杖を手に仁王立ちしてる、すげー偉そうだ。


「 分かった 」


神事は終わったはずだが・・・終わってないのか? これからの作業も神事になるんだろうか。

前もって訊いときゃ良かったと思うが、やることあったし。

とりあえず前に向き直って出発の準備だ、神官の要望には応えないとな、神様の機嫌を損ねたくはない。


「 チル、コイネ、出発準備な~ 」

「 はい、マスター 」

「 わかったニャ 」


チルは俺の真後ろにいる、馬車で言うと御者席だ。

チルのわきには伝声管が用意されてる、俺との通話用だ。

コイネも定位置に移動する、チルのさらに上、幌の上に移動する。

紅白の小旗を持ってるのは何時もの連絡用だ、パタパタさせてるのもいつも通りだ。


これからの作業は道づくりだ、今までにやったことは無い。

道ってのは邪魔なものを弾き飛ばしたマスター専用の通路じゃなくて、普通の馬車でも通れる道が目標だ。


と、マスター すっちーが言ってた、あいつは何時も無茶を言ってくる。

そのままだと雨でぬかるんじゃうから、表面を固めてくれってさ。


昨日の夜急遽やった試験で、吹き飛ばすんじゃなくて押し固めるようにすれば何とかなりそうな目途はついた。

押し固める土をどこから持ってくるかって言うと、表面を押し固めてく事になってる。


「 この土だと、20cmか30cmってところか 」


表面を押し固める、どのくらい固くなるかは土質によってだいぶ変わるのは確認してる。

場所によって土は変わるんで、その辺りは臨機応変に対応するって事になった。

行き当たりばったりとも言うが、やってみないと分からんしな。


不思議フィールドで土を押し固める。

だから、馬車の前の不思議フィールドはブルドーザーのドーザープレートみたいな形状でいくつもりだ。

そのままだと余った土を左右に押しのけちゃうんで、プレートの左右は45度内側に曲げて土を逃がさないようにする。

んで、押し固めるからプレートは地面に垂直じゃなくて前に45度倒す。

接地面はR20位にしておく、角度何かの調整はやってみてだな。


手にした土を捨てて立ち上がる、そろそろ行くとするか。


「 マスター、準備OKです! 」


チルが報告してくれるけど俺も確認する、ドライバーの義務だからな。

準備は良さそうだ。

コイネが旗を振ってるのはOKって事だ、ドリーは知らんけど大丈夫だろう。


前を向いて機力を込める、握ってるところから白い粒子が後ろに流れてく。

荷車の車両感覚がハッキリ分かる、不良個所は無しだ。


ドリーは全力でって言ってたけど、ここでやったら流石に不味いのは判る。

弾き飛ばした色んなものが、見物人に当たって怪我したらどうすんだって話だ。

全力でやれって言ったからやりました~なんて言って、モノを壊してへらへらしてる主人公がいるけど。

んなことしても実力の証明にならない、バカの証明にはなるけどな。

確か相手の実力が分からないのに絡んでくのは、やられ役の定番になってるはずだ。

主人公がそれをやったらヤバいだろって話だ、是正を要求する。


「 ハイパーブースト 」


チルの機力も流れ始めて、白かった光が薄青色に変化する。

それを確認してからゆっくり右足を上げる、右手のスロットルを少しだけ回す、感じにする。

荷車の持ち手は回らないからな。


二歩目からは走り出す、ジョギング程度でだ。

目標はさっきまであった二本の旗の中央部分、景色が線になって後ろに流れてく、直ぐに着くだろう。


---------------------


俺が神事なんかの儀式を尊重するようになったのは、小学生の頃からだ。


ある日、俺は自転車で軽快に飛ばしてた、正確に言うと雨が降り出したんで急いでた。

橋を渡ってたんだが、結構でかい川で、車道と自転車道が完全に分かれてる橋だ。


渡り切った直後に在る歩行者用の信号が点滅を始めたんで、ちょっと急いだんだ。

最後の5mが緩い下りになってたんで、間に合うと思ったんだ。

でだ、間に合わなかったんでブレーキを掛けた、掛けたんだけど利かなかった。


当時の自転車のブレーキは、タイヤの金属部分を挟み込んで止めるタイプだった。

何式かは分からないけどドラム式じゃ無かった、雨だと直ぐに利かなくなる。

止まらね~って思ってたらトレーラーが曲がって来た、目の前にトレーラーの連結部分とデカイタイヤが見えた。

あって思った。


目を閉じて、しばらくしたら自転車が止まった、目の前にトレーラーは無かった。

振り返ったら、トレーラーが横断歩道の上を走ってた、俺は怪我が無かった。

それだけだ。


俺は宗教家じゃないし信心深くもない、幸福になれる壺や誰かの肖像画なんて買う気はない。

だけどもだ、儀式の手順には敬意を払うようにしてる、宗教は信じてないけどな。



目標に着いたんで止まる、機力を使ってるからピタッと止まる。

これから折り返すんだが、10mくらいの小山のてっぺんで止まってるんだよ。

Uターンし難いんで少し進んでから荷車を斜めにバックする、こういう時に四輪だと手間が掛かる。

二輪だと信地旋回が出来るんだが、こっちの二輪の車軸は分離してるんだ。

ちょいと戻って方向転換の完了だ。


見下ろすと王都へ続く道が見える、俺の荷車の幅2台分弱って感じだ。

これを中心にして、左右を同じようにやってく。


「 2本目行くぞ~ 」

「 はい、マスター 」


来た道の右側を走る、目測で5km無いしてってってと走ればすぐに着く。

演習場に着いたらもう一回方向転換だ、ここは広いんで大きくUターンする。

最初の位置まで来たら、飛び出してこないか左右を確認、ここは人数が多いからな。


「 最後行くぞ~ 」

「 はい、マスター 」


こっちから出る時は最初はユックリだ、安全に絶対は無いからな。

万が一でも人身事故は起こしたくない。

道の側に人影が無くなったら走り出す、ちゃっちゃっちゃでオシマイだ。

短すぎて何とも中途半端だ。


Uターンしたら機力抜いて荷車を止める、下り坂になってるんで手は離せない。


「 マスター、輪留め掛けました 」


と思ってたらチルが輪留めを掛けてくれた、これで手を離せる。


「 サンキュー、チル 」


チルからタオルを受けとるけど汗はかいてない、ゆっくり走り始める時に付いたホコリを落とすくらいだ。

最初から全力で走ってピタッと止まればゴーグルは要らないだが、街中も走らなきゃだし無理か。


荷車から離れて王都の方を見る、荷車5台分の幅の道が出来てた。

押し固めて道を作ったから周りより低くなってる、排水用に両側の溝は必須だな。

それは、騎士団からの出向組が筋力で掘ってくれることになってる。


「 良いんじゃね 」


しゃがんで路面を叩いてみる、結構固い。

チルもコイネも路面を叩いてる、獣人が殴っても割れないなら固さは十分じゃないだろうか。

うねりも段差も無いし。


チルの尻尾が背中にパサパサ当たってる。

しゃがんでる俺の横にドリーが立った、チルとは反対側だ。

道の左右をブラウンとグリーンが走ってくる、道の左右の仕上げだな。


「 完成したら、次は走り初めになります 」


ブラウンとグリーンの作業が終わったら、ホワイトが王様を乗せて走るんだってさ。


「 あいよ 」


しばらく待機になるらしい。


誤字脱字の指摘、読後の感想などお待ちしています。

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