第47話:神様と道作りと鮭
剣と魔法が物語の中心では無い、ファンタジーを目指します。
戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくします。
機石のチャージが一通り終わったのを見計らって、演習場にぽつんと立ってる小屋に案内される。
小屋は広くもなく豪華でもなく、グランドに立ってるプレハブみたいな建物だ。
兵士の休憩用と言うかそんな感じに使うんだろう。
それなりに広さは在るんで打ち合わせには十分だ、そこで今後の事を話すんだそうだ。
会議室じゃないってところが、いかにもドライバーっぽい。
「 あれ? チルは? 」
建物に入ろうとしてチルの気配が無い事に気づく、周りを見るとまださっきの2人と話してる。
チルは女の子が差し出してる手を、両手でつかんでブンブン振ってる。
3人とも楽しそうだ。
「 チー、おいで 」
「 は~い 」
パッと手を離して走ってくる。
「 何を話してたんだ? 」
「 今度一緒に、冒険者の依頼をしに行こうって約束してました 」
「 依頼ね~ 」
前に、俺が居ない時に何やってるかって話をチルに聞いたことがある。
冒険者を続けてるって話だった、働かないと食べてはいけないから当然だ。
コイネも一緒に冒険者やってるらしい。
「 お金、足りないか? 」
「 お金は在ります、でも・・・ 」
働かないと、動かないと気持ちが落ち着かないんだと。
犬獣人らしいと言うか、俺に似ちゃったと言うか、何とも損な性格だ。
「 だったら良いけど、危ない事はするなよ 」
「 はい 」
チーの尻尾はきっと揺れてるだろう、見なくても判る。
付き合いが長いと愛犬の表情だけで判るようになる。
それは犬のチーでこっちのチルじゃないんだが、まぁ似たようなもんだろう。
「 あの子たちは騎士団に所属してんだよな 」
「 はい、そうです 」
「 国から給料貰ってるから、冒険者で稼ぐのが許されるかどうかだが 」
チーは首をかしげて話を聞いてるけど、給料の二重取が許されるとは思えん。
つまり、一緒に行けない可能性が高いんだよな。
「 ・・・ 」
チーは何も言わずに俺を見てる。
何も言わないけど、真ん丸な目で俺をジーッと見てる。
瞬きしないで見てるだけだが、これはお願いしてるんだ、俺には判る。
「 団長に許可を貰っとくよ 」
「 ありがとうございます! 」
俺はチーのお願いを断れる自信が無い、危ないとか健康に悪いとかは断れるんだが。
団長にお願いしたら許可はアッサリ出た、チーの自由にしてくれていいそうだ。
でも、冒険者の成果のお金は受け取れないらしく、現物で頼みますと言われた。
「 お肉ですね! 」
「 そう言う事だろうな 」
王都の近場でお肉の依頼を探す事にするんだと。
お肉を探す冒険者、それって肉屋じゃないかと思うが黙っておいた。
「 これからの計画だが・・・ 」
会議室の机にすっちーが広げたのはこの国の地図らしい。
らしいってのは、とても地図には見えなかったから。
「 これ、地図っすか? 」
「 そうだ 」
紙に書かれているのは一筆書きのような絵だ、グリーンが訊いたのも当然だろう。
「 酷いっすね 」
「 昔のマスターは地図を作らなかったのか? 」
「 マスターは神殿から離れ難いからな、やむを得ん 」
マスターが世界を渡る時は必ず寝る必要がある、寝た場所から世界を渡って寝た場所に現れるのだ。
ベッドでも布団でも野営した時でも同じで、寝た場所に戻ってくる。
野営なんかしたら、寝起きで襲われそうだから安全な場所で寝るようになる。
普段寝るより安全に気を使う必要があるから、自然とマスターは王都の中で過ごすようになる。
何日も野営が必要な地図を作る作業なんて出来るモノではない、ということらしい。
「 まず、王都からトープへの道を作ってもらう 」
すっちーは王都からトープへと指をずらす。
後は適宜やり方を考えるらしい。
「 初めてのだからな、細かく決めない方が良かろうと言う事だな 」
「 それは分かるんだが・・・ 」
王都からトープへは山越え谷超え、川もある。
断崖絶壁は無いからまだましだが。
「 橋は後から掛ける事になる、石製の眼鏡橋の予定だ 」
眼鏡橋=アーチ式石橋は、石の自重で荷重に耐える構造の橋になる。
鉄筋より素材がシンプルで、昔から強固な橋として使用されている工法になる。
製造方法も伝わってるし(昔のマスターが伝えたらしい)、材料もある。
じゃあ何でこの国で見かけないかと言う事なんだが、力の強い獣人も沢山いるし。
単純に、そんな橋は必要無かったって事なんだと。
しょっちゅう氾濫する訳でもなく、重い物を運ぶのでもなく。
「 施工は明日からになる 」
言うだけ言うてすっちーは帰っていった。
「 明日からね~ 」
「 何とかなるだろ? フォローはする 」
俺のボヤくと、ブラウンが笑って励ました。
すっちーの考えた工法は、カラーズを中心とした方法だ。
王都から見てトープは、ざっくり南になる。
ざっくり南なんで、まず先遣隊が南に向かって良い感じに移動する。
そこに向けて俺とチルが突っ走る、折り返して元に戻る、ザックリ道を作る訳だ。
んで、ブラウンとグリーンが仕上げをして、親衛隊のメンバーが道の周りを整備する。
ホワイトは緊急時の避難用とて待機だ、何があるか分からんし。
これ以外に補給中隊が随伴して食事の面倒を見てくれる。
「 確かにザックリ過ぎる計画だがな 」
「 いや、そこじゃ無くてな 」
道はトンネルを作れないから、ひたすら地表を走ってく。
森も林も樹も岩も、全部ぶっ飛ばしながら道を作る訳だ。
元の世界なら間違いなく環境団体が出張ってくる案件だ。
この世界には神様が居る、姿を見たことも声を聞いたこともないが確実に居る。
そんな世界で道づくりと言う環境破壊をするわけだ。
こっちの神様が、獣人たちの生活環境を壊すのを許してくれるかどうかだ。
「 可能な限り地形に沿って道を通す、それでダメだったら・・・ 」
「 ダメだったら? 」
「 皆で謝るしかないじゃろ 」
謝って許してくれれば良いんだけどな、なんてったって、真っ先に走り出すのは俺とチルなんだ。
つまり、真っ先に罰せられるのも俺とチルだって事なんだよ。
慎重にならざるを得ないだろ。
「 マスター? 」
俺達が話してるとチルが話に入って来た。
「 神様だったら、大丈夫だと思います 」
「 何でそう思うんだ? 」
「 え~っと、この国に昔からあるお話なんですけど・・・ 」
チルはこの国に大昔からある話、但し実話だそうだ、を教えてくれた。
昔々、猫獣人のマスターが、エージェントに魚を食べさせてあげたいって魚の養殖を始めたそうだ。
養殖って言っても、何処からか鮭に似た魚を捕まえてきて川に放流するってやり方だ。
次の年にはその魚は戻て来て、数も増えて今では王都の名物になってるとか。
「 毎年、最初の漁の一番大きな魚は神様にお供えする決まりです 」
チルの後ろで猫獣人が頷いてる。
海で育って川に帰ってくるなんて魚は他に居ないらしい、じゃあどっから魚を取って来たんだって事なんだが。
お話しでは、神様からお告げがあって魚を探しに行ったらしいから、神が用意した魚って説もあるとか。
話だけなら、エージェントの為に頑張ったマスターって事になる。
「 鮭を造っちまったって事か 」
他所から持ってきた魚を川で繁殖させるとか、生態系がメチャメチャになりそうだ。
猫に魚を食べさせたいってだけで、外来種を持ってきちゃったんだから。
そこは神のお力で大丈夫って事なんだろうな、多分。
道を通すってのは、直接エージェントの為って訳ではない。
エージェント達の住む国を豊かにしようって話だから、無関係って訳でもない。
そこが悩ましい。
「 先にさ、神殿でお祈りでもしとかないか? 」
「 そうだな 」
「 そうっすね 」
「 それが良かろう 」
明日の準備が終わったら、全員でお祈りすることにした。
もちろん、チル達エージェントも一緒にだ。
神様OKが出ると良いな~、まぁ安全祈願だと思っておこう。
気が付かれた点など在りましたら、読後の感想をお待ちしています。




