第39話:チルのお土産
剣と魔法が物語の中心では無い、ファンタジーを目指します。
戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。
チルが獣人たちと楽しそうに話してる。
名前を知らない狐獣人の尻尾がブワッと広がった、皆の笑い声が聞こえるな。
チルはマルチーズとミニチュアダックスのミックスだ。
耳は垂れてて、長さはミニチュアダックスとマルチーズの中間くらい。
鼻と言うかハスの長さも中間くらい、胴の長さも中間くらい。
断じて短足ではないチョット胴体が長いだけだ。
毛並みはマルチーズそのままで全身が真っ白だ、初めてペットショップで見た時はグレイに見えたけどシャンプーしたら真白になった。
寝癖が付きやすいけど全身をブルブルすると元通りになる、羨ましいそれは羨ましい毛質をしてる。
骨格はミニチュアダックスに似てて頑丈そうだと、レントゲン写真を診た獣医さんが言ってたな。
足が短いんじゃない、胴がほんのチョット長いだけだ。
みんなで仲良く話してる、楽しそうだ。
良き良き。
出ても居ない汗を拭きながらそんなチル達を見てる。
チルを中心とした風景として見てるって感じだ、他にやることはない。
チルが楽しそうなのを見てるだけで嬉しいから、それで充分なんだよ。
満足すればそのうち帰って来る、キラキラした目で俺を見て水を飲みたがったりおやつを欲しがったり。
食べ終わったら一声鳴いてまた遊びに行くんだ、ドッグランの話しだけど。
「 マスターお土産を渡し終わりました! 」
コイネも一緒に帰ってきた。
「 もういいのか? 」
「 はい! イカ素麺を勧めておきました! 」
クラーケンのイカ素麺は美味しかった、真イカより全然美味しかった。
あの味なら食べたことがない人にも自信をもって勧められる。
この国にはマスターが色々と伝えてるから、すべてのゲート神殿には醤油とワサビが完備されてる。
市販もされてるから生で食べるのに不都合はない。
「 んじゃ、もう出発できるか。 ホワイトがまだだけど 」
「 はい 」
「 ああ。 噂をすればってヤツだな 」
チルと話をしていると、神殿の庭に入ってくるホワイトとエージェントが見えた。
ニコニコ笑ってるから交渉は上手くいったみたいだ。
「 すまんすまん、待たせたかの? 」
「 ちょうど今終わったところだ。 それでそっちは? 」
「 交渉は上手くいったぞ。 後で取りに来る必要はあるが問題なかろう 」
ホワイトはそう言いながら自分の足を叩く。
こっちの感覚だと1日掛かりの移動だけど、俺たちならちょっと遠目の公園まで散歩にって感じで来れる。
今のホワイトなら大丈夫だろ。
「 よっしゃ。 じゃあじいさんの準備が終わり次第出発だな 」
「 了解っす! 」
ブラウンとグリーンが、エージェントと一緒にそれぞれの機車に戻ってく。
事前の打ち合わせじゃ、1時間ほどしか走ってないから小休止で充分だろうって事になってた。
軽いジョギングか早歩きを10分程度の感じだったし、汗もかいてないし疲れてないし。
ちょっと遅くなったのはホワイトのスルメが原因だ。
それでも誤差の範囲だからグチグチ言うほどの事じゃない、事前に相談はして欲しかったけどな。
そこは後でスルメを強奪して帳尻を合わせればいい。
「 あ。 椅子返し忘れた 」
そろそろ出発の準備だなと立ち上がって気が付く。
ブラウンが貸してくれた木製の折り畳み椅子を返しておかないと、と思ったけど途中で止めることに成功する。
ついウッカリでも俺が手を離したら荷車が潰れるんだよ、危なかった。
「 私が行ってきます! 」
「 サンキュ、頼む 」
さてどうしようかと悩むまでもなく、チルが椅子を持って走ってく。
チルは走るのが好きだな、並んで歩いてる時以外は走ってるとこしか見ていない気がする。
んなこと考えてたらチルが戻ってくる、椅子を持ったままだ。
「 どしたチル? 」
「 この椅子はマスター ブラウンからのプレゼントだそうです 」
「 そうなのか 」
4台は出発準備を進めてる、んで、神殿の庭に並んで止まってる。
車止めは無いけど引手をそろえて綺麗に止まってる。
チルが椅子を荷台にしまうのを確認してから荷車を動かす。
コイネはさっきから準備万端で、低くなった荷物の上で寝転んで待ってる。
猫が寝転んで待ってる、正確には猫獣人だが。
ブラウンの機車の前でいったん止まる。
「 ブラウン、椅子をありがとな。 楽できたよ 」
「 おう、気に入ればそれでいい。 この後も頼んだぞ 」
「 あいよ 」
ブラウンに椅子のお礼をしてから、荷車を動かす。
神殿の出口で待っててくれた神官に先導されて、門まで移動する。
ちょっと低くなったけど、それでも2階建ての屋根位はあるから注目の的だ。
俺たちを先導してくれてる神官の一人が近づいてきた、白い神官服の猫獣人だ。
「 マスター グレイ。 クラーケンのお土産ありがとうございます 」
隣まできて、並んで歩きながら頭を下げた。
「 礼ならチルに言ってくれるか? あれはチルが倒したヤツだからな 」
「 それでもです 」
マスターが神殿に持ってくるモノは、全部お土産って事になってる。
それはお金でも同じで寄付とか寄贈とは呼ばれない、多くても少なくてもお土産だ。
「 そんなもんなのかね~ 」
「 はい。 お土産は町民にも無料で配ります 」
良い笑顔だ。
んで、今日も快晴だな。
「 全員に配ったら一口位になりそうだけど? 」
「 記念ですからね、量は問題ではありませんよ 」
何でもクラーケンの討伐は百数十年ぶりとか。
なるほど、だったら俺でも食べてみたくはなるな。
倒したクラーケンは2体だけど、運んできたのはチルが倒したヤツだけだ。
俺の方はマルッと海軍に渡しといた、もっと良い船を作れってね。
魔石ごと渡したから、少しはまともな船にはなりそうだって言ってたな。
チルが倒したクラーケンだから、お土産の量も渡す場所も任せた
こっちじゃ一人前だから。
「 言い伝えでは、魔力が高い魔物の肉を食べると不思議な力が宿ると言われています 」
「 そうなんだ。 俺たちは特に変わったところは無かったけどな? 」
ステータスは出発前に表示してそのままにしてる。
レベルは上がったけど、それ以外に変わったところは無い。
「 変わるのは魔力に関係したところの様です。 マスターは機力の専門家ですからね、それで変わらなかったのでは? 」
「 魔力か~。 派手な魔法使いたかったんだけどな~、無理か~ 」
こうバ~ンってな、と空いてる右手でやってみるけど何も起こらない。
神官が笑ってる、悪意のある愛想笑いじゃないから気にならない。
チルもコイネも笑ってるな、そういや俺も笑ってるわ。
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