第35話:お散歩には良い天気が必要だ
剣と魔法が物語の中心では無い、ファンタジーを目指します。
戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。
猫獣人の神殿長から2種類の大きな旗を受け取る。
縦2m×横3mのかなり大きな旗だ、この国の国旗だとか。
風になびく旗を持って、疾走してる騎士が持てば絵になりそうだ。
俺たちは騎士じゃないから、その辺りは微妙だな。
「 これを掲げていれば、町へ入る行列に並ばないですみます 」 と言ってるんだが。
それを全車に掲げて走れと。
神殿長はニコニコしてる、きっと善意からの申し出なんだろう。
「 グレイ、これは大丈夫なのか? 」
「 棒が細すぎっす 」
「 だよな 」
旗は大きいからそれに合わせて竿も太くなっている、そのまま走れば良く目立つだろう。
「 こりゃあ折れるな 」
渡された国旗から竿を抜き取ったブラウンが、竿の固さを確認して言う。
旗はブラウンのエージェントが持ってる。
「 柔らかい木を使っちゃいるが、耐えられんだろ。 あのスピードじゃ 」
両手で竿を持って地面に押し付けて、グイグイ曲げてる。
柔軟性は在りそうだ。
「 だよな~ 」
旗には丈夫な生地を使ってる、お値段もそれなりに高そうだ。
丈夫そうな生地だから破れたりはしなさそうだが、竿の方が折れそうだ。
あと、国旗だから落としたり無くしたり、ヘタすれば地面に落としただけで文句言わたりしてな。
正直面倒だ、国にも貴族にも関わりたくない。
猫神官長は積み荷のクラーケンを気にしてる、猫にイカって食べさせて良いんだっけ?
「 グレイ。 これは棒を外して、直接荷物に縛り付けた方が良いな 」
「 じゃな 」
「 んじゃそれで 」
「 初荷みたいっすね! 」
グリーンは楽しそうだ。 理由は分からないが。
最終的に俺の荷車の積み荷の前方部分に一枚、最後尾のブラウンの馬車の後方部分に一枚づつ付けることにした。
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「 それではグレイ様、準備をお願いします 」
猫神官長がお辞儀する。
日本人のマスターばっかりだから、神殿って言ってもお辞儀なんかの作法は日本風だ。
「 了解 」
荷車の引手の部分に手をかけ、ほんの少しだけ機力を込める。
荷車がポヤッと薄っすら光った。
「 OKだ、始めてくれるか 」
「 承知しました 」
猫神官長がシッポで合図を出す、猫らしい手の抜き方だ。
荷車の周りで待機していた熊やトラ獣人たちが、威勢の良い掛け声と共に一斉に荷物に手をかける。
持ち上げた荷物を荷車へと乗せていく。
2山目、3山目になると下から放り上げて、上に居る神官が受け取って積んでった。
荷物の扱いが雑だけど、中身が傷付いてないか心配だ。
積み荷が増えたんで途中で機力を追加で込めたけど、大した量じゃない。
「 マスター、大丈夫ですか? 」
俺の隣にいるチルが、荷車に山に積まれた荷物を見上げながら訊いてくる。
いやホントに山だな。
2mが3山だけど荷車の高さもあるから一番上は7m以上になる、2階建ての家の天井位の高さだな。
それを間近で見上げる俺とチル、コイネはもう山の上に乗ってる。
「 今の所問題無いな 」
積み荷は山になってるけど、俺が機力を込めてるから荷車は1mmも動いてない。
機力を込めない素の馬車なら、1山目の途中で積み荷の重さで壊れてるんだとさ。
生の海鮮とタップリ詰まった氷はかなりの重さだってことだな。
ざっとロープで固定して、上に居た神官が飛び降りた。
ちょっとビックリしたけど怪我はしてない、さすがは獣人だな。
最後に猫神官長が荷車の周りをグルッと一回り。
「 マスターグレイ、積み込みが完了しました 」
猫神官長のOKがでた。
「 んじゃ出発しようか 」
「 はい! マスター! 」
ジッとしてても機力は減っていく、ムダに機力を使いたくない。
荷車を持ち上げてサッサと出発する。
先頭は俺、ブラウン、ホワイト、グリーンの順で神殿の敷地を出る。
グリーンもブラウンも来る時より重い荷物を積んでる、ほとんど水だけど。
今回の主な目的はブクブクを試すこと。
ブクブクで王都まで活魚を運べるかどうかの確認だ。
んでも、一番目立ってるのは俺の荷車の荷物だったりする。
3人の神官の先導付きでトープの町中をユックリ進む。
すれ違う人たちは、荷物の高さにビックリしてる。
荷車なのにガラガラなんて車輪の音がしない、機力を込めてるからな、音なんてしない。
んで、いきなり真後ろに7mの荷物を積んだ荷車が現れたら、そりゃ驚く。
俺の引く荷車はちょっと改造されてる、チルとコイネの乗る場所が作ってある。
馬車で言えば御者席っぽいところだ、チルはそこに居る。
チルの役割は俺のサポートと前方監視。
コイネは荷物の山の上で足をブラブラさせてる。
猫獣人だから高いところから落ちても大丈夫なんだと。
コイネの役割は後方の馬車の確認、コンボイだから後方監視は欠かせない。
コンボイの戦闘に居る神官は、『 どけどけ! 』 なんて荒っぽい事は決してしない。
神はこの国にマスターとエージェントをもたらしている。
神は全ての種族を等しく愛おしく思っており、差別も区別もしない。
神が存在して神を敬うこの国では、神の意向を正しく理解している。
種族で差別しないのだから職業で差別はしない、それは相手が神官でも変わりはない。
神に仕える神官でも立場が上の訳じゃない、神官もそれを正しく理解している。
大人はビックリして見てるだけだけど、子供は何人も走りながら追いかけてる。
獣人の子供が多いのは、チルのファンが多いんだろう。
門まで着くと神官が左右に分かれて先を譲ってくれる。
「 全員が町を出たら加速するぞ〜 」
『 分かりました 』
予定通りだけど一応チルに伝えておく。
チルはコイネに伝えて、コイネは青色の手旗を振って後続に知らせる。
全車が青色の旗を掲げたら準備完了の合図だ。
んで、前回の反省を生かして、荷車にちょっと付属物を取り付けた、伝声管だ。
いちいち後ろを振り向いて大声で話すのは大変なんでね。
伝声管って言っても適当に管を取り付けただけだが、もうすでに重宝してる。
トープの町を出てとっとこ走る、かる~いランニングだ。
そんなに飛ばしてるつもりは無いんだが、それでもその辺の馬車や機車をドンドン追い抜いていく。
『 ・・・・・・・・ 』 何か聞こえた。
『 マスター! 全車に青旗が上がりました! 』
伝声管からチルの声、ってことは最初のはチルとコイネの会話か。
「 少しずつ加速して、そのままハイパーブーストに入る 」
『 分かりました! 』
トープの町近くは石畳で舗装されてるけど、もう地面は赤黒い土になってる。
思えば遠くに来たもんだ。
ちょびっとだけ早く走り始める、チルからは何も言ってこない。
もう少し早く走ってみる、やっとランニング程度のスピードだけど、チルは何も言ってこない。
何かが顔に当たる、ゴーグルを用意して置いて正解だった。
「 そろそろ行くぞ 」
「 準備OKです! 」 嬉しそうなチルの声。
俺は左利きだ、左利きだけど機力を込める時はバイクのアクセルをイメージしてる。
バイクのアクセルは右に在るからな、俺は右手で機力を込める。
今日も天気が良い、絶好のお散歩日和だ。
「 行くぞ。 ハイパーブースト! 」
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で、2022年の台風15号で被害を受けた方々に、心からのお見舞いを。
未だに元の生活には戻れませんが、何とか頑張ってます。
お互いに負けない様に、出来ることからやって行きましょう!




