俺と自分
俺=転生者
自分=プログラム
です
俺と自分が人型の肉体に受肉したことで異変はすぐに起きた。
最初に、自分の自我がほぼ消えた。後で聞いたら、この地を解析しようとしたらしい。
素粒子レベルで。この地=宇宙全体を。人のサイズで。
結果、オーバーフロー。個々のモジュールはともかく、全て統括する自我の大部分が焼き切れた。バッカじゃないのか。
でも物知りでよく話をしてくれる。
ともあれ、個々のモジュールはいわゆる異世界転生モノによくある「スキル」となって俺の身に残った。
次に、俺の魂と称される何かだけ残った。仕方ないんだ。自分の知識に晒された結果、あまりの情報量に魂もほとんど消えかけた。
体感時間で100年ほどブラウン運動をただひらすら見続けたわ!この地の解析中の情報だろうな!拷問か!拷問だな!
残ったのは薄く広く万物の知識。深いこと考えるのはダメだった。自分の奴が使い潰したらしい。
自分がからかってやがる。
「πの3765桁目すら暗算できないんですか?バカなんじゃないですか?」だって。知らねえよ。
で、残ったスキルを使って俺を構成していた何かをサルベージしたよ。結果、日本人っぽかったとか抑鬱抱えてアルコール中毒だったとか意識混濁して孤独死したとかろくでもない情報が出てくる出てくる。まあ悪行してたわけじゃないようだが、俺自身の能力の無さに絶望していたらしい。成仏してくれ。あ、俺か。成仏してねえな?
結局前世の俺のことは忘れた、忘れる事にした、忘れたい。
でもまあ魂までは変わらなかった。何か全部めんどい。引きこもって暮らしたい。
自分「ちゃうねん!あんなに人の身が脆いとは思わなかったんや!なんやあのせっまーい計算領域!拷問か!拷問だな!」