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第9話 グループ学習

 あれから莉都子の体調も落ち着き、暁翔の付き添いも有耶無耶になって数日。少し近付けたと思ったのも束の間、すっかり元通りの関係に戻った、というより更にギクシャクしてしまった感は否めない。


 総合学習の時間に、班毎に別れてのグループ学習をすることになった。

 キャリア学習の一環で、近隣高校の特色を調べてくるというものだ。学校見学に行っても良いし、ホームページやパンフレットでの調査でもいい。先生が各班に学校を数校ずつ割り振っていく。その他にも自分が行きたい学校が別にあるならそれも調べてきて良いことになっている。


 暁翔と同じ班に、なんて都合の良いことは起こらず、順当に出席番号順に6人ずつの班分けとなった。

 莉都子の班は出席番号一番から六番で、男女半々のグループだ。男子が有本と伊藤と尾崎。女子が井上と織田。有本がサッカー部、井上と織田はバレー部という体育会系。伊藤と尾崎は帰宅部で陽キャでも陰キャでもない。莉都子は紛うことなき陰キャなので、皆には逆らわず大人しくしておこうと決めている。

 暁翔の班は出席番号七番から十二番で、男子が四人で女子が二人の班。男子のうち二人は暁翔の親友である栗本と新谷。あと一人が加藤。女子は斎藤と鈴木。男子は全員帰宅部。女子は吹奏楽部とバドミントン部。話が合うのかどうかはわからない。


 莉都子の班では寄せた机を囲んで、先生から配られたプリントを見ている。


「で、俺らが調べる学校ってどこになったん?」

「ええっと、県立高宮北高校と、県立海原総合高校だって。」


 想定通り、有本と井上さんが仕切り出したので、莉都子は黙ってその様子を伺っている。油断すると他人より多く仕事を押し付けられそうな予感もするので、気は抜けない。


「この学校に興味ある人いる?」

「俺、海原、気になるわ。私服で単位制なんだろ?」

「じゃあ、伊藤は海原かな。」

「私のお姉ちゃん、高宮北に行ってるよ。制服可愛いんだよね。」

「ふうん。織田は?姉ちゃんと同じく高宮北行きたいの?」

「まだ決めてないけどね。どっちかなら高宮北かな。」


 こんな感じで話が進んでいった。有本はサッカー部で陽キャだし、性格がキツいのかと思ったけれど、聞き上手というか、話し上手というか、で揉めることもなく担当を分け終わった。結局男女で別れて、男子が海原、女子が高宮北ということになった。

 他、どこか気になる高校はないか?ということで、有本、井上、織田でスポーツ強豪校の山城学園を調べることにして、残りの莉都子と伊藤、尾崎で進学校の桜林館学院を調べることにした。


(アキトの班はどうなったのかな……。)


 ちらと隣の班の様子を窺うけれど、どの学校を調べるのか、担当分けはどうなったのか等々、知りたいことは何もわからなかった。


(せめて仲良い人が居たら、聞き出せるのに!)


 莉都子は自分の陰キャな性格を恨めしいと思った。


◆◇◆


 グループ学習のために、許可を得れば、自分のスマホを学校に持ち込んでよいことになった。使える時間は総合学習の時間だけではあるが、学校のネットワークに繋げる。学校のタブレット端末もあるが、写真を撮るのにはタブレットよりスマホの方が使いやすいということで、一時的に使えることになったのだ。


(桜林館のホームページは……。)


 調べていたら、操作を誤って、ヒロタカのチャンネルを開いてしまった。音量はミュートになっていたので、周りには気付かれなかった。


(あわわわ、こんなところで趣味を露呈してしまうわけにはいかないのだよ!!)


 ホッと一息ついて、ホームページにある情報をレポートに書き写していく。


(そういえば、ヒロタカの動画、まだ配信されてないのかなぁ。確認したい……。家まで我慢するのも辛い……。)


 こっそり、ヒロタカのチャンネルを開き、新しい動画が配信されていないか確認した。

 やっぱりまだだったと、小さく溜め息を吐いたところで、誰かが莉都子の後ろを通り過ぎた。


 狭い教室の中、椅子と椅子の間を強引に通っていったせいで、莉都子の身体が押されて前のめりになった。


「あっ!」


 机の端に置いていたスマホが床に落ちた。バシッと乾いた音はしたが、多分割れたりはしていないはずだ。莉都子は椅子に座ったまま身を捩って床に手を伸ばした。届きそうで届かないなと思ったとき、頭上で声がして、誰かがスマホを拾ってくれた。


「ごめん!」

「あ、ありがとう。」

「いや、俺が無理矢理通ったからだし。」


 声の主は暁翔だった。拾い上げたときに画面を見たのか、ちょっと顔色が変わった。


(やばっ。ドン引きされてたりする??声優オタクが好きなチャンネルだもんなぁ……。)


 暁翔はすぐにいつもの調子に戻って、机の上に私のスマホを置いた。


「はい、これ。」

「あ、あ、ありがと。」


 暁翔は再び歩き出して、教室の出口に向かって行った。


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