第17話 好きだと言ったけれど
暁翔からの謝罪と告白を受け、二人でドーナツを食べて帰ってきた。
ずっとぎこちない関係だったものが急にスムーズになるわけもない。二人で並んで歩いて帰ってきたものの、特に会話も弾まず、手を繋いだりもなく、ぎこちないまま家の前で別れた。
もうちょっと気の利いた事言えなかったかなと、莉都子は後悔していた。
◇
「明日、一緒に宿題する?」
「え、あ、でも、大体終わったし、ひか達と約束あるから。」
「そ、そうだよな。」
そしてしばらく沈黙。
「普段、どんなテレビ見てる?昨日のクイズ番組見た?ドラマとかの方が好き?」
「テレビ……部屋にないからあんまり見ないんだ……。」
「そ、そっか……。」
再び沈黙、といった具合だった。暁翔は莉都子に気を遣って色々話し掛けてくれたけれど、莉都子にはイマイチ答えにくい内容で、話が弾まなかった。莉都子も何か話しかけようかと思ったけれど、暁翔が喜びそうな話題がわからなかった。
◇
「ダメだー!ダメすぎる。アキトごめん。」
カーテンが掛かったままの開いていない自室の窓に向かって拝むように謝る。その頃、向かいの暁翔の部屋でも同じようなことになっていた。
◆◇◆
「で?それから?」
莉都子の部屋にいつものメンバーで集まっている。
「で?って言われても……。いちおう、告白されたんだけど……。」
「おおっ!!」「ついに!!」「それから!?」「はやく!」
聞いてきたひまりを筆頭に全員が身を乗り出して、莉都子に迫っていた。
「それが……、特に話が弾むわけでもなく……。付き合う付き合わないの話にもならず、次の約束も特になくて……。なにかな?この状況?」
「えぇー。別れ際にキスとかさ、そういうのがあったりするんじゃないの?」
「な、ないよ。大体、家が隣同士なんだよ。家の前とかなんか、家族に見られたら大変じゃない。」
キスを期待していたひまりがはぁっと小さく溜め息を吐いたところで亜子が口を開く。
「ひまもそうやって言うけど、少女漫画やドラマじゃあるまいし。そもそもが隣に住んでる同級生男子だからね?逆にいきなりキスされたりする方が怖いわ。」
「そうよねー。徐々に仲良くなっていくしかないよね。」
「瀬上のさ、何か趣味とかないの?そういうところから歩み寄りっていうか。」
亜子の言葉に、舞と結愛が同調する。黙っていたひかりがボソッと。
「瀬上って、ヒロタカなんでしょ?歌、歌ってもらったりとかしたらいいんじゃない?」
「歌ってくれるかな?」
「わからないけど。最初の話題にしてみたら?嫌がりそうだったらサッと引けば良いでしょ。」
莉都子は自信無さげに小さく笑って、そうだね、と答えた。
(もし、そう言ったら、アキトはどんな顔するのかな。『見つけてくれた』って言ってたんだから、私に聞かせたかったのよね?だったら、喜んで歌ってくれそうな気もする。でも、私がアキトだったら、面と向かって歌うのはちょっと恥ずかしい気もするんだよね。)
「ほら、宿題やるよ!もうちょっとで終わるんでしよ!?」
みんなに発破を掛けて、勢いよく自分のテキストを開く。そうやってやる気を出したように装ったけれど、莉都子の頭の中ではまだまだ妄想が止まらない。
(うーん、アキトとの会話というか、距離の詰め方がわからないなぁ。まだ付き合ってるのかどうかもわからないから、ベタベタできないしね。いや、そもそも、部屋に二人きりとかには、家族の目もあって、中々なれないし。折角、隣に住んでて物理的距離は超絶近いのに。)
宿題の問いの答えに全然違う文字を書いて、あわわと慌てて消しゴムで消す。宿題は一問も解けず、全く進まなかった。




