表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/18

第15話 未遂

 ドアが開いた向こうに、ひまりと亜子がいた。

 ベッドのドアに近い方に莉都子が座っていて、こちらを向いて、ドアに背を向けている状態だ。暁翔はその莉都子と向き合っていて、ドアの向こうのひまりとバッチリ目が合ってしまった。


「どうも、お邪魔様……。」

「あ、いや!誤解だ!」


 暁翔にしなだれかかっていた莉都子は、その声を聞いてパッと姿勢を正した。


「やっ、あっ、瀬上、ごめんねっ!なんか変な感じになっちゃった。あの、あの、今の忘れてっ!!」


 真っ赤になった莉都子が立ち上がって、部屋から出ていった。


「ほんと、邪魔してごめんって。そんな怖い顔で睨まないでよ。」

「いやいや、邪魔して良かったんだよ。いぐっちゃんの性格だったら、あのまま流されてたと思うよー。未遂で良かったね、瀬上。」


 ひまりがバツ悪そうに謝った。その後ろで亜子が呆れ顔をしている。


「わ、悪かった。理性が飛びそうになってた。リッコ……井口の様子、見てきて。」


 わかった、と亜子が階段を降りていった。残ったひまりが暁翔に問うた。


「瀬上はいぐっちゃんのこと好きなの?」

「……。」

「好きなんだよね……?好きじゃないのにあんなことしたら、私、許さないから。」

「好き、だよ。」

「ほんと、いぐっちゃんに早く言ったげてよ。周りから見てたら丸分かりなのにさ。あの子、自分に自信がないから、あり得ないって思い込んでるんだよ。」


 さあ降りようと階段を降り始めたところで、階下から大きな声がした。


「ねぇ!いぐっちゃん、どうしたの!?」


 バタバタと音がして、玄関から誰かが出ていった。どうやら莉都子が荷物を持って、家に帰ってしまったようだ。そのあとを亜子が無言で追いかけていった。

 リビングに入ると、残された面々が茫然としていた。


「ねぇ、一体どうしたの?」


 ひかりがひまりに聞いた。舞と結愛もゲームのコントローラーを握ったまま、様子を窺っている。


「いやー、瀬上がフライングしてね。いぐっちゃん、私達に見られて正気に戻っちゃって、悶絶してるとこなんだよ……。」

「えー!瀬上ー!」


 女子達に責められ、恥ずかしくて顔も上げられない。


「いや、ほんと、全面的に俺が悪い。井口に謝っといて欲しい。自分で謝るのが筋なんだろうけど……ちょっと落ち着いた方が良さそうだから。」

「わかった……。今日は急に無理矢理押し掛けたし、ごめんね。」

「また落ち着いたら一緒に宿題しよ?いぐっちゃん、多分、自分では言い出せないから。」

「ああ……。」


 女子達はゲーム機を片付け、コップやお皿をお盆に集めた。ごちそうさまでしたとお礼を言って帰っていった。


◆◇◆


(アキトがヒロタカだった!)


 その事実だけでも頭が沸騰しそうなのに、流されてあんな状態になってしまって、恥ずかしくて自己嫌悪だ。

 櫻田に似た声で耳元で優しく囁かれて。耳から理性が吹っ飛んで、何もかもをアキトに委ねたくなった。耳も唇も胸もお尻も太股も。あの声で囁かれながら、身体中をまさぐられたかった。ぎこちない指が余計にくすぐったくて、下腹部がじゅんと湿るのがわかった。


(私、どんな顔してたんだろ。もうちょっとでキスしそうな距離だった。間近で惚けた顔を見られちゃった。アキトも視線が熱くて、興奮してそうだったけど……。)


 自室に戻ってベッドに突っ伏した。莉都子の後を追って、亜子が部屋に入ってきた。


「いぐっちゃん、大丈夫?」

「アコ……。」

「痛いところとかない?酷いことされてない?」

「うん、大丈夫。私の方が悪かったの。変な気持ちになっちゃって。今もまだ、変な感じがする。」

「変な感じ?」

「ちょっとエッチな感じ。……アキトが、瀬上がヒロタカだったの!」

「ええっ!?ヒロタカって、あの動画の?」

「そう。それで、櫻田の真似してって頼んだら、耳元で囁かれて……。そしたら、もう、我慢できなくなって。そのままエッチしてもいいかな、と思えるくらい。」

「ダメだよ!」

「うん。でも、ずっと好きだったアキトがヒロタカで。アキトが私のためだけに囁いてくれて、もう、何も要らないと思えるくらい、何も考えられなくなって。」

「いぐっちゃん。」


 亜子に強い調子で名前を呼ばれ、沈黙する。

 冷静になって考えてみると、あの場で流されてそんなことになっていたら、とてもじゃないけれど、次はどんな顔をして会えば良いのかがわからない。


(うわぁぁぁぁぁ!)


 莉都子は悶絶した。流されなかったけれど、次、暁翔と会ったときにどんな顔をすればよいのか!


「いぐっちゃん??」

「アコぉ!今頃になってめちゃくちゃ恥ずかしくなってきた!!次、アキトと会ったらどうしよう??」

「ど、どうしようったって……。普通にするしかないでしょ?」

「そうなんだけどぉ。」

「心配するな!向こうもおんなじように悶絶してるって。瀬上も同じくらい恥ずかしかっただろうから、おあいこじゃない?寧ろ、いぐっちゃんの可愛い顔見た、ラッキー!くらいかもよ?」

「そ、そんなことある?」

「あるある。好きな子のことは可愛く見えるのだよ。」

「好きな子!?」

「そ。脈ない訳ないじゃん。何でわかんないかなー。」

「そんな訳ナイナイ。」

「ほんと、いっぺん告白してみ?うまく行くと思うから。」


 莉都子が落ち着いた頃に残りのメンバーも莉都子の部屋に戻ってきた。斯々然々、事の顛末を悶絶しながら話すと、告白の結果を楽しみにしてるねー!と、皆、ニヤニヤしながら帰っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ