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第13話 窓の向こう側

 お昼を食べ終わって、莉都子の部屋。皆、小学校からの付き合いなので、お互いの家も比較的近く、しょっちゅう行き来している。勝手知ったる他人の家である。


「で、あっくんは今日は居るのかな?」


 早速、ひまりが窓から顔を覗かせて、暁翔の部屋の様子を伺う。


「おーい、瀬上ー!」


 結構な声量で呼び掛けている!


「わっ!ひまっ!何してんのよ!?近所迷惑だし!!」


 莉都子は急いでひまりの腕を引いて窓から遠ざけ、窓とカーテンを閉める。


「バカ!こんなんで瀬上出てきても、私、何て言えば良いかわかんないし!」

「えー?勉強教えて、でも、一緒に宿題しよ、でもいいじゃん。」

「バカ!全員、宿題なんか持ってきてないし!手ぶらじゃない!」

「口実なんかなんでもいいのよ。」

「そんなのができてたら、こんなに拗らせてないよ!」

「だから、ハッキリしちゃえばいいって。いぐっちゃん、自分で呼べないなら呼んだげるから。」

「え、でも、だって、えー!」


 有言実行のひまりは引き下がりそうにない。ひかりは呆れ顔で、亜子と舞はワクテカ。結愛は我関せずで莉都子のベッドの上で寝転がって漫画を読んでいる。


「瀬上ー!瀬上暁翔ー!!」


 ひまりは再びカーテンと窓を開けて、隣の暁翔に向かって呼び掛け始めた。


「あれー?留守なのかなぁ?せ……」


 もっと大きな声で!の瞬間に、窓が開いた。


「うるさいぞ!人の名前を連呼するな!」


 暁翔の声がする。莉都子の部屋の窓と暁翔の部屋の窓は向き合っていないので、莉都子からは暁翔の姿は見えない。ひまりは窓から顔を出しており、多分、暁翔も自室の部屋の窓から顔を出しているのだろう。


「ねぇ、何してんの?暇?こっち来て、いぐっちゃんの部屋で一緒に宿題しない?」

「は?何言ってんの?なんで俺がリッ……井口の部屋に行かなきゃなんないんだよ!」

「素直じゃないねぇ。女子の部屋に入れるのにぃ。」

「ば、バカ!リッコの汚ったねー部屋なんか何度も入ったことあるわ!!」

「じゃあ、そっちに行ってもいい?」

「へ?……俺の部屋なんかもっと汚ねえからダメだ。」

「じゃ、決まりね。五分後、そっちに行くから、見られちゃ不味いもの隠しといてね!」

「ちょ、おま!丸川!!おい!!」


 ピシャンと窓を閉めて、ひまりが一言。


「さ、隣に移動よ!」


◆◇◆


 五分後、ぞろぞろと六人で階下に降り、玄関を出た。律儀に隣の玄関前で待っている暁翔が居た。


「なっ!?勢揃いじゃん!六人?俺の部屋、そんなに広くないぞ。」

「瀬上、お出迎えありがとう!律儀だね。無視決め込むと思ったのに。」

「え?無視して良かったの?じゃあ。」

「ちょい待ち!折角なんだからさぁ。」


 踵を返して自宅に帰ろうとした暁翔を、ひまりが小走りで近付いて腕を掴んで引き留めた。


「リッコと二人になりたい?」

「~~~!!」


 ひまりが小声で囁いた内容は莉都子に聞こえなかったが、それに反応して暁翔の顔はみるみるうちに真っ赤になった。


「部屋は無理!リビングでいいならどうぞ。母さんも妹もいるからあんまり騒ぐなよ。」


 お邪魔しまーすと、六人で瀬上邸に上がり込む。莉都子は五年振りくらいだろうか。おそらく、他は初めてのはずだ。


「母さん、急にごめん、リッコとその友達が宿題しようってうちに来た。六人。」

「あら、いらっしゃい。六人?全員女子!やだー、暁翔、モテモテじゃなーい!」

「そういうんじゃないから!」

「何にもないけど、ゆっくりしていってね!」


 そういうと暁翔の母親は、麦茶とコップ、クッキーやマドレーヌをダイニングテーブルの上に出して、リビングから出ていった。


「え、すご!何にもないことないよ!」


 結愛が驚きの声を上げた。


「瀬上のお母さん、アイシングクッキーの先生やってるんだよ。焼き菓子は割といつもある感じ。美味しいんだよねー、あっくんのママのクッキー。」


 莉都子がひとつ取って口に運ぶ。

 莉都子も暁翔も、子供の頃の呼び名がポロっと出ている。お互いに突っ込まないようにしているのか、気付いていないのか。


「サクッと軽くて、バターの香りフワッとしてね、ホロホロと口の中で溶けるっていうか。美味しい。」


 その感想を聞いて、皆がそれぞれ口に運ぶ。美味しい!という歓声が上がる。


「で、宿題。」

「ん?」


 ひまりの間抜けな声。宿題を手に持っていたのは莉都子だけだった。


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