表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/18

第12話 すれ違い

 あれから結局、スマホの画面で見たチャンネルについて莉都子に聞けないまま、一学期が終わった。

 学校見学もあわよくばもう少し誘いたいと思っていたけれど、加藤と行った北陵だけ。


 それでも、暁翔と莉都子を繋ぐヒロタカの動画配信チャンネルがある。暁翔はなるべく莉都子を自分のテリトリーに引き込みたいと考えていた。


(なにか新しい曲を書かないと。)


 とはいえ、暁翔も莉都子も中三の受験生である。暁翔の一学期の成績は悪くはなかったが、受験の事を考えると気を抜けない。


(でも、勉強もしないとな。ギターを取り上げられかねない。)


 夏休みにゆっくり創作するつもりだった暁翔だったが、思いの外、学校と塾の課題が多くてまとまった時間が作れない。

 すぐ隣の家に莉都子がいるのに全く顔を合わせることがない。恨めしく、壁の向こうにあろう莉都子の部屋の方を見つめて、大きな溜め息を吐いた。


◆◇◆


 自室のベッドに転がり、スマホを見る。


(ヒロタカ、新しい動画、まだ出てこないなー。)


 莉都子のコメントに返事をくれたヒロタカ。会ったこともない人なのに、ちょっと近づけたようで嬉しい。


(どんな人なんだろ?どんな顔の人?何歳?何処に住んでるの?)


 ネットの人なんて、遠い世界の人で一生巡りあったりしないんだろうなと思いつつ、血の通った人間で同じ時代に生きているんだと思うと不思議な気持ちになる。


(夏休みになったところだし、学生だったら、塾とかクラブとかで忙しいのかな。)


 多分、ヒロタカは莉都子とそう歳が変わらない。大学生かもしれないが、腕や手の甲が少年のそれだった。


(ヒロタカのお陰で、アキトの事をあんまり考えなくて済んでるかも。アキトともますます気まずくなっちゃったしなぁ。)


 夏休みになって会う機会が減ったから、ある意味良かったのかもしれない。


(迷惑かけちゃうし、嫌われてるのか、仲良くなれる気配もないし。)


 窓のそばに立ち、暁翔の部屋の様子を伺う。


(あれだけ私の事を心配してくれて、ちょっと期待したのにな。やっぱり勘違いだったのね。)


 莉都子は、はぁっと大きな溜め息を吐いた。


◆◇◆


 夏休みということで、莉都子は友達と美術館にいくことにした。二学期の文化祭に出す作品のテーマのアイデアにするためだ。


「いぐっちゃん、おはよ!」

「ひか、ひま、おはよ!」


 待ち合わせは最寄駅。美術部のメンバー六人で出掛けるのだ。小学校からの仲良しで一緒に美術部に入った。莉都子の学年はこの六人だけだ。


「アコとユッペとリンダは?」

「さぁ。もう来るんじゃない?」

「私達も今来たところだし。」

「ふーん。」


 六人は今、莉都子とひかりを除いてみんなバラバラのクラスだ。放課後はなんだかんだ一緒にいる時間は長いけれど、こうやって出掛けることはほとんどなかった。

 それから十数分。全員が揃い、電車に乗り込む。

 双子の姉妹の丸川ひかりとひまり。ショートカットの似合うアコこと永山亜子と、姉御肌のリンダこと林田舞、そして甘えん坊なユッペこと境結愛。


「夏休みの宿題、進んでる?」

「んー?数学は半分くらいかな。理科と社会は終わったけど、国語と英語は全然これから。」

「いぐっちゃん、早くない?」

「そうかな?」

「そうだよ!明日、宿題一緒にやろ?」

「いいけど、写させないよ?」

「えー!!」

「えー!じゃありません。受験生なんだよ。ちゃんと自分で解いてモノにしないと!」


 他愛のない話をしながら、美術館に向かう。館内では騒げないので、ヒソヒソ作品の感想を言いながら巡る。

 二時間程で順路通り巡り、ミュージアムショップに出てきた。そこで今日の特別展のポストカードを買った。

 最寄駅のハンバーガーショップに6人で陣取る。


「文化祭、模写でもやる?」

「フェルメールの?」

「うん。」

「絵の具、どうする?」

「アクリルガッシュで。」

「いやー、無謀だよ。」

「だよねー。6人でなんかデカいパネル一つ描いて、あとは各自いくつか出す感じ?」


 ハンバーガーにかぶりついてモグモグしながら、あーでもないこーでもないと亜子と舞が話しているのを聞いている。


「いぐっちゃん、そういえば、あれからどうなのよ?」

「え?フェルメール?」

「ちがうちがう、瀬上よ。」

「え?何もないけど。」


 亜子に急に話を振られて驚いたけれど、本当に何もない。それを聞いて、舞と結愛がガッカリした顔をする。


「あっという間に夏休みになっちゃったもんね。まあ、学校で気まずい雰囲気になってたから、それでよかったのかもだけど。」

「折角隣に住んでんのに、あっくんも意気地無しだよなぁ。」


 ズゾゾと音を立てながらドリンクを啜るひかりとひまりがぼやく。


「家が隣でも、部屋が近くても、ほんと、なんにもないのよ。向こうが気がないんだから仕方ないでしょ?」

「いやー、気はありそうな雰囲気だけどねぇ。」

「そうかな?」

「そりゃ、いぐっちゃんは意識飛ばしてた人だからさ。今からいぐっちゃんの部屋行く?騒いでたら出てくるかもよ?」

「え?マジ?」


 そうして皆が莉都子の部屋に来ることになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ