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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第二章 ~『原点』~
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『魔獣の首輪』

 突発の救出劇は、子供の身体に相応の負担を強いたらしい。朝起きると節々がめっちゃ痛かった。



「あたたたたた……」


「み〜?」



 身体中が筋肉痛で酷い。昨日一緒に寝たトリアが、じじいと化した俺を不思議そうに見上げている。



「お早う御座います、ご主人様。……大丈夫ですか?」


「お早うシャリア。あんまし大丈夫じゃないけど、動いてる内に治ると思う」



 感覚的にそのレベルの筋肉痛だ。動き始めれば治るだろう。



「何時頃来る予定だっけ?」


「10時頃になるとのお話でした。文書比較、ジャグジーの試用、後は……昨日の事情聴取が行われると思います」


「OK。ま、何とかなるでしょ」


「はい。では、朝食の準備が出来ておりますので、食卓の方へお越し下さい」



 パパッと着替えて、シャリアの手料理を堪能する。



(暫く肉料理が続きそうだな〜)



 誘拐事件から棚ぼたでGETした肉。


 あんまり手放しで喜ぶようなものではないのだが、仕方あるまい。食欲には勝てん。



(……香草か? これ)



 あんな所にあった代物だ。それほど状態が良かったとは思えないのだが、臭みがまるで無い。


 俺は料理に関しててんで門外漢だが、レーゼルは野営の時の調理法にちょっと心得があったりする。……でも、ここまで肉の味を殺さず、徹底して臭みだけを消す香草に見当が付かない。



(これも今度習うか……)



 前の世界と違い、保存食に関してはかなりシビアだ。


 調理のメニューは数あれど、携帯食料の類いは干し肉と缶詰めが主。真空パックやカップ麺なんて物は流通していない。


 街にいる間はいいが、行軍などでは最小限の調味料と、現地調達でやり繰りする事になる。


 糧食の質は重要なファクターとなり得る。団長として、団員の胃袋は掴んでおきたい。






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






「ご馳走さま」



 食後のお茶タイム。


 膝の上に乗ったトリアと一緒に文書の最終チェック。


……興味深そうに見てるけど、読めんのかね? 魔獣の知性ってどれくらい何だろ?



(異世界だし、猫が喋っても不思議じゃないよな……)



 期待と浪漫が常識を超えた。



「よし! トリア、読んでみろ!!」

「みー!」

「……何してんの、あんた?」






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






……んな事している間に、カールネスが来訪した。



「お久しぶりです、アーリス様」



 平静を装って出迎える一同。


 錯綜した隠蔽工作。


 その追求に、内心で皆が身構えていた。



……のだが、予想とは裏腹に話はとんとんと進み……。






「……では、家具に関してはこちらで宜しいですか?」


「……はい。その装飾で統一して下さい」


「畏まりました。職人に伝えておきましょう」


「……お願いします」


「私からは以上となりますが、アーリス様から何か確認するような事項は御座いましたか?」



 と、質問されるが、



「……いえ、何もありません」



 とっとと話を終わらせたいので、色々あるけど遠慮する。



「そうですか……アーリス様の方で準備が整っていたので、幾分も早く終わりました。御礼申し上げます」


「いえ、多忙な中、御手数お掛けしました」



 カールネスが口に手を当て苦笑を隠した。



「アーリス様、謙遜は美徳ですが、従者には不要です。今少し鷹揚に構える事をお勧めします」



 気を付けていたのに最後でやらかす俺。


……う〜ん、この感。



「わかった。忠言感謝する」


「……失礼、差し出口で御座いましたな。では、10日後にまたお会いしましょう」



 と、会釈と共にカールネスはあっさり退出した。



(…………ナスタ、帰った?)


《……今馬車に乗ったわ。…………帰った、わね》



 マジで帰ったらしい。



「何で⁉︎」



 身構えていたのに雑魚の……じゃなかった、ザクの一味の話がまるっっきり出て来なかった。



「ノード氏の報告がそのまま通った、という事でしょうか?」


「んな馬鹿な⁉︎」



 付け焼き刃の突貫で思い付きな計画である。いや、の割に出来は良かったけどね?


……にしても、



(バレないとか夢にも思わなかったんですけど⁉︎)



 歓迎すべきだが、何か不完全燃焼。



「ん〜、トリアの許可証もくれたし、何も知らないって事はないでしょうから……」

「……やっぱバレなかったのかな?」

「或いは、黙認されたのかと」

「あ、そっちの方が高そう……」



 面倒だから「ペイッ!」てされたのかな……のかな?



「気にしてもしょうがないんじゃない? こっちから切り出す訳にもいかないし」


「……ですな」



 まさに藪蛇だ。んな事出来ない。



「……すんげえモヤッとするけど、忘れるか」



 あちらさんがアクション起こさない限り、受け身にまわるしか無い。



「はい。……それよりも、大事があります」



――『リリアの転居』。



 カールネスがここに来る前にリリアの家に寄って、色々と話してきたらしい。



 なんでも、領主からの祝辞と転居の許可を届けてきたとか……、


 そして更に、本日中にこっちに引っ越して来るとか……、



(展開が早いよ⁉︎)



 生き急ぐアスガンティアの住民。今日も平常運転である。



「どうしよう⁉︎ 部屋の準備しないとだよね⁉︎」



 リリアとの共同生活は新居が出来てからだと思っていたから、なんの準備もしていない。


……ついでに覚悟も出来ていない。パニックである。



「落ち着きなさいよ! 何れあんたは『王』になるのよ? この程度でガタガタしないの!!」

「王って何だよ⁉︎」



 そういや聞いてなかった。下克上する気なんか無いぞ?



「『ハーレムの』に決まってるでしょ!」

「阿呆ですか⁉︎」



 勿体ぶった割に実にしょうもない事だった。



「ど喧しい! 必要なのよ!!」

「オーケー判った!」

「判ってくれたのね!」

「うん!」



 話にならんという事が。取り合ってられんわ。



「一部の家財を持参すると思われますので、その置き場所の確保と清掃が済んでいれば、体裁は整うかと」


「……ここって借家だよな?」



 勝手に家具の処分は出来ないだろう。いや、余裕で買い直せるだろうけど。



「はい。先方もそれは承知しているでしょうから、持参するのは寝具と……鏡台くらいでしょうか?」

「……本人に聞いてみればいいんじゃない?」

「それだ!」



 リリアとは紋話が繋がるんだった。本人に確認した方が早い。


 左手を耳に当てて、早速リリアに繋ぐ。



(もしもし? リリア、聞こえてる?)

《お〜? アーリスだ〜。リリアだよ〜、アーリスおはよう!》

(おはようリリア。早速だけど、今日こっちに引っ越して来る?)

《うん!》



……事実でした。


 婚約したとは言え、昨日の今日である。動きが早いな〜。



(何時頃の予定?)

《今から》

(本気で早いよ⁉︎)

《え〜、でもそっちでお昼一緒に食べたいよ?》



 そういう理由からか……。


 現在の時刻は丁度11時。昼食を一緒するなら、もう行動に入らないと確かに間に合わない。



(……判った。何を持ってくる予定?)

「シャリア、もう来るって。掃除頼む」



 リリアに運び入れる物を聞きつつ、シャリアに部屋の掃除を促す。


 ちょっとピクリと動揺したが、すぐに表情を戻して、シャリアは空部屋に向かった。



《え〜とね、斧が16本と〜(置いてきなさい)》



 図らずも自覚する。俺が砦だ。



(そっちは俺の家が出来てからで。仮宿への持ち込みは最小限で頼む。持ってきても置き場が無いぞ?)

《む〜……、お気に入りの3本は良い?》

(それくらいなら大丈夫)

《やった! 後はねえ……》



 と、リリアから運び込む物のリストを聞き出した。


 メモ紙に記して、ナスタにパスる。



「ナスタ、《シャリアに渡して》」

「《オッケー》」



 紫の風が空部屋に向かって吹いた。その流れの上にメモ紙が乗る。木の葉が川に流されるような感じで、メモ紙がシャリアの元に向かって行った。



(こっちは部屋の掃除しながら待ってるから、気を付けて来いよ?)

《うん! また後でね〜》



 紋話終了。



「……うっし! シャリアを手伝いに行くか」



 リリアの持参品は、鏡台、寝具、斧3本、狩りの装備など一式。後はお風呂用品と着替えだそうだ。



(シャリアの言った通り、場所空けて掃除だけで良さそうだな)



 考えながらテクテクと空き部屋に向かう。



「シャリア〜、手伝うよ」

「終わりました」

「はや⁉︎ マジで⁉︎」

「家具を避けて精霊を使うだけですので」



 マナの浪費よりも時間を優先したらしい。



(……そういや、そういう世界でしたね)



 浄化での掃除は割と基本だ。一般には家具を片付けてから行うが、扱いに慣れた者は必要な所だけに絞って行使出来る。



「水便利だな……っと⁉︎ お?」



 何かが背中を押したと思ったら、トリアが俺に飛びついたものだったらしい。


 そして、そのまま左肩によじ登った。


……定位置になりつつあるな。



「みー!「あ〜、ハイハイ」」



 右手の人差し指をくれてやる。すかさずちゅーちゅーとマナを吸い始めた。



「……丁度いいな。大人しくしている間に首輪着けちゃおう。シャリア頼める?」


「…………はい、直ぐに」



 許可証……正式には『魔獣認可証明章』というらしいが、それは首輪の形をしていて、途中にマナ石の様な物が縫い止められていた。


 シャリアが手早くトリアの首にその許可章を着ける。



「み?」



 流石に新たに首に着いた違和感は無視出来ない様だ。食事を中断し、首輪を気にしだした。



「みっ⁉︎ み゛っ⁉︎」



……外れないらしい。そりゃそうだろうよ。んな簡単に外れたら困る。



「って、俺の上で暴れんなよ! ほら、降りろ」



……ん?



「あれ? もう染まってる……」



 トリアに着いた首輪の石は『紫』になっていた。


 魔獣認可証明章は、縫い止められている石に、龍脈のマナと主人のマナを込めて使う物らしい。


 これに更に他のマナを加えようとすると、鈴のような音が鳴るそうだ。



「私がちゃっちゃと染めちゃったわよ?」


「さよか。……ちょっとどんな音するのか聴いてみたいな」


「では、失礼します」



 シャリアがトリアの石に触れる。紋章が光ると同時に、〈リーン〉と澄んだ音が響いた。



「ほ〜……こんな音なのか」



 結構綺麗で、広く響く音だ。



「私が乗って来たリムルツェーケルも、街に入る時に同じ音がしましたよ?」


「街の結界にも反応するらしいわね」


「へ〜」


「み〜……」



 一頻り暴れていたが、とうとう諦めたようだ。



「すまんな、それが着いてないと街中出歩けないんだ」



 かいぐりかいぐり。ごろごろ。



〈バタン!〉



「来たよーー!」



 リリアが到着した。



「失礼します、アーリス卿。御挨拶に伺いました」



……親父さんを連れて。

良いお年を〜ノシ

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