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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第二章 ~『原点』~
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アゼスター『フロードの縁』

 領主館3階の領主私室。


 中央の龍脈塔に唯一繋がる『心臓』とも呼べる部屋であると同時に、領主のアゼスターが日中ほぼ常在する執務室でもあった。


 今、その部屋の執務机の上には、山の様に積まれた書類の束がある。


 日夜処理すべき業務に加え、アーリスの邸宅や統合浴場の建設に絡む案件がドサリとのし掛かって来たのだ。



――土地の使用許可。


――周辺地域への影響。


――建設費、担当する職人達の身辺調査。


――予想される運営資金。



 許可申請、調査報告、施工依頼、資金調達。


 各方面から集約された情報の坩堝。それらを濾過し、選定し、容認の判を落とす。


 余人には任せられない『決済』の戦場。


……その報告は、そんな最前線に挑むアゼスターの元に夕食を運ぶカールネスの口から告げられた。






「……禁猟区でだと?」


「はい。マイントリアーシュが目撃されたそうです」



 配膳と同時に渡される一枚の紙片。内容を確認しながら、吟味する様に目を通していく。



「…………の特性により暴走したものと推察される。本件により動物達の生態系に深刻な傷を残す結果となった。その傷が癒えるまでの間、領主御手より再び南猟区での狩猟を禁ずる様告知されたし。……手配は?」


「即座に閉鎖を命じました。後の巡回も、荒らされた形跡有りと報告しています」


「事実か……」



――幸運の魔獣、マイントリアーシュ。



 その名が知られたのは、リンリャスが護身獣として愛育していたという古い文献からだという。


 特性のみを鑑みたとき、『幸運』の二つ名は適切とは言えない。『反逆』、或いは『守護』の方が適しているだろう。


 では、何をもって『幸運』と称するのか?


 マイントリアーシュは天然で開いた龍穴の周りに姿を現す魔獣だ。


 つまり、この魔獣の近くにはマナの吹き溜まりがある可能性が高い。真実か否かは不明だが、昔は龍穴を探す際の指針として使われていたとか……。その生態から得られる恩恵を指して、『幸運』の二つ名を冠するに至ったらしい。


 龍穴の管理を担う、領主に名を連ねる者しか知らない事だ。無為に拡散すれば、考えの浅い者の無法が蔓延るのは明白だろう。



「……穴は確認されたか?」


「いえ……ただ、不確定ではありますが、南西の監視塔より、南の山間にマナの残光らしきものが立ち昇るのが見えた、と報告があったようです」


「今は?」


「一瞬で消えたそうです。このノードからの報告の後、その位置に調査を向かわせましたが、マーグの巣穴があっただけで、それらしいものは発見出来ませんでした」


「閉じたか……ならばよい」



 相応の結界で補強しなければ、龍穴は再び閉じる。閉じる迄の期間は、開いた龍穴の規模に比例する。


 遥か昔であれば兎も角、今は龍脈塔により小規模の龍穴では比較にもならない程マナが、安定して供給されるのだ。


 些少の魅力はあるが、無理に確保するようなものではない。


 結界から設備建築、信用に値する管理者。龍穴という誘惑に流されない要員。選出の余地もなく、そんな余剰人員は存在しない。


 管理されていない龍穴は騒乱の元だ。現状であれば、早々に閉じたのは御の字と言える。



「念の為、監視はそのまま継続させろ。巡回も信の置ける者を使え」


「畏まりました」



(しかし、マイントリアーシュとはな……)



 唐突ではあるが、不思議でもない。見かける事自体が稀で、その特性も生態も、伝承に等しい程しか把握されていない魔獣だ。



「その魔獣とアーリスが契約したか……」


「魔獣認可証の発行が同時に申告されています。受理なさいますか?」


「無論だ。無害希少種の処分など一利も無い」



 今回は禁猟区に被害が出たが、マイントリアーシュは『無害』に区分される魔獣だ。


 敵対しなければ危険はない魔獣。リンリャスが護衛獣としていた実例もある。ましてや契約したのがアーリスとなれば、取り上げずそのまま付けて置く方が利が高い。



(……レーゼルでは無かったな)



 気運に恵まれている……と、感じた。


 レーゼルは優れた兄達に埋没するような子だった。兄達の個性が強すぎたのもあるが、このように目立つ子では無かった。


 多数の兄弟に囲まれた環境ではよくある事だ。長たる者を支える、従うといった価値観が自然と育つ。


 内政にランフェスが、闘士はザックスが居た。この二人が次世代の長となる事は、誰の目にも明らかだっただろう。


 その二人とは異なる道を選び、研鑽を積んでいたのがレーゼルだ。……些か武に寄りすぎていたきらいはあるが、方向は誤ったものではない。


 各分野に於ける長は一人で良い。二頭は内が荒れる。


 ザックスから剣を学び、『秘して守に身を置く』を体現するような子だったレーゼル。



……アーリスは異なる。



 身体はレーゼルのものだが、中身は違う。頭では判っているのだが、どうしても『喪った』とは思えない。



(……目立つわ、あの童め)



 寧ろ『好ましい』と感じた。


 今迄目立つ事なく、研鑽に明け暮れていた子。その努力は「何らかの形で芽吹かせてやらねば」と思っていたが、自身で……いや、アーリスが萌芽させた。



――ナウゼルグバーグを討伐し、


――利益の見込める事業を考案し、


――伝承の魔獣と契約を成した。



 群れから頭角を示す者。


 悪であれ善であれ、突出した者は目に見えない引力を持つ。


 それは先頭を行く者として、必要な資質だ。他者と混ざる者に、率いる事は出来ない。



(本人も……或いは周囲も知らぬ間に、『場』が支配されている)



 自由騎士も、系譜から外したのも、全て「動かし易い様に」とのこちらの都合からだった。


 が、同時にアーリスも自由に動ける。執着するものがフロードに残っていなければ特に、だ。



(……フロードの目、か)



 あれは内に収まる気質では無い。欲が内ではなく、おそらくは外に向いている。


 何れアーリスは外に出るだろう。今の繋がりは、外に出る事が叶わぬランフェスの……ひいてはフロードの助けとなる。



(ランフェスは土地以外で縛れぬと言っていたが……さて)



 それもどこまで信が置けるか。


……繋ぐならば、やはり『人』の方だろう。



 報告には、倭人の娘が『左手』で紋話したと書かれている。



(まずは一つ……か)



 郷里の生家を捨てられる者は少ない。


 望郷の念を無碍に出来る者も少ない。


 婚約者の懇願に手を払う者も少ない。



 フロードで繋いだ縁は、必ず、外に出たアーリスを再びこの地に引き戻すだろう。



「……カールネス。明日、アーリスの仮宿に赴く前に、手紙を一つ届けてくれ」


「承りました。どちらにでしょうか?」



 引き出しから祝辞の際に使う便箋取り出し、



「ハウゼの元にだ。婚約の祝いと、転居の受理を先んじて通達する……とな」



 外堀を埋め、繋がった線を補強した。




……事態はアーリスの考えとは全く別の方向に急進していた。

熱は下がったが鼻風邪が治らん。

風邪注意。

……ヤバイ。唐突に新術閃いた。

でも使えないw

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― 新着の感想 ―
[一言] 領主はなんだかんだ言っても考えが善人だな
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