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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第二章 ~『原点』~
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『音楽』

 一通りの打ち合わせの後、ノードは俺が居た方の通路を、土の精霊の力を使って埋めていった。


 地面から次々と土が盛り上がり、奥の牢へ向かってドドドドッと雪崩れ込んでいく様は結構壮観だ。



「……完了しました。助力感謝致します」



 精霊術の行使で掲げていた両手を、ゆっくりと下ろしながらノードが感謝を述べた。


 地質が思いの(ほか)硬かったらしく、事前にシャリアが渡したマナだけでは足りなかったので、追加で支援したのだ。



「協力頂いたのはこちらの方です。ご苦労様でした」



 これで一味の痕跡は完全に消滅した。


 ノードとレドルから見ても、この洞穴は『マーグが居なくなった巣穴』としか判断出来ないそうだ。



 ザク達のアジトの隠蔽が完了したので、ここから先はノード達と別行動になる。



「アーリス卿、帰参の道中お気をつけて」

「じゃあな、アーリス!」

「アーリス、まったね〜!!」



 と、狩りの三人組は手を振りながら南街門へ向かって行った。


……あの子供二人が憔悴するような事態にならなくて、本当に良かったと思う。



(リリア、何かあったら直ぐに連絡しろよ!)


《うん!》



 リリアには紋話の事を話してある。


 今回のような事がまた起こったとしても、これで大丈夫だろう。



 残った俺達の進路は西だ。


 馬車の回収もそうだが、来る時に使ったのは西街門なので、南街門の通行には別の手続きが必要になってしまう。


 ジーグ程の融通は期待出来ないだろうし、何より今は『魔獣』のトリアが居る。


 契約済みなので街の結界に阻まれる事は無いらしいが、だからと言って不用意に衆目に晒せば、混乱を招き騒動になるだろう。


 尻尾が二本の仔猫にしか見えないが、ノードのように魔獣だと気付く者は気付く。


 領主からその旨が公布され、『許可証』が出てからでないと、トリアを公然と連れ歩く事は出来ない。



「みー!!」


「あ〜はいはい、御免よ。ちょっとの間だから」



 何処に目があるかわからないので、念の為トリアはローブの内側へ隠すように抱えている。


 外が見えないのが不満らしい。さっきから「みーみー」と、とても喧しいのだ。



(え〜い、揉みくちゃにしてくれるわ!)



 と、ぐわしぐわしと撫でまくっていると、ごろごろと言い出した。……現金なやつ。



「……しっかし、なんだ。報酬の割に、仕事は荷物運びだけだったな……」



 思い出したかのように唐突にレドルがぼやいた。



「その荷物持ちが子供の俺達では難しかったんですよ。凄く助かりました」



 たかが荷物持ち、されど荷物持ちである。


 成人男性を俺とシャリアで担いで移動するなど不可能だ。時間が掛かり過ぎてお話にならない。


 今も十数キロはありそうな肉を、平気な顔して一人で運んでいるのだ。マジ感謝。



「もうちっと楽しめるかと思ったが……まあ、こんなもんか」


「……?『楽しめる』ですか?」



 享楽目的の同行だったのかな?


……うん、そんな感じだったな、確かに。



「人生は一回こっきりだからな! 楽しまなきゃあ損だろうよ!!」


「「………………」」



 豪快に言い切るレドル。


 シャリアが「何言ってんだこいつは?」みたいな顔をしている。然もあらん。


……が、考え方としては理解出来るし、間違ってもいない。




 転生した俺が言うのも何だが、死んだら終わりだ。


 何も出来ず、


 何も生み出せず、


 何も為せないあの無力感は、どんな言語を以ってしても表現出来ないだろう。



……生きている間だけだ。


 頭を使う事も、


 身体を動かす事も、


 作る事も、歌う事も、泣く事も笑う事も、


 生きている間にしか叶わない。


 当たり前で、当然の事。


 誰もが知っていて、その実『誰も解ってなどいない』。




 だから、レドルの言葉に同意を返した。



「……そうですね、良いと思いますよ」



――彼の考え方は、間違い無く『正しい』。



 存命の内にそれに気付けるのは、とても尊くて、幸福な事だ。



「………………」



 俺の返答を聞くと、レドルは足を止めて思案げな表情で振り返った。



「…………やっぱ、変わった子供だな」

「え?」



 そう呟いたかと思えば、すぐさま前を向いて歩き出した。



「そういや、団長さんは『音楽』なんか聴くのか?」

「……はい?」



 肉を担ぎ直しつつ、そんな話題を振ってくるレドル。


……随分と唐突だな。



「音楽、ですか?」


「おう! 好きな曲は何だ? 貴族なら色々聴く機会もあんだろ?」


「…………」



 アスガンティアで何らかの音楽を聴こうと思えば、歌手か奏者の存在が必須になる。録音機器や再生機器の類いが無いので、生で聴く以外にないからだ。



「大陸中を旅して色々な曲や歌を聴いたが、『パッヘルベルのカノン』や『スティーヴィーワンダーのパラダイス』何かが特に良くてなぁ……」


「え〜と……」



 ヤバイ、全然知らない。



(どうしよう⁉︎ 「知らない」とか言ったら、無教養とか思われるんじゃないか⁉︎)



 適当に相槌打って誤魔化すか? とレドルの様子を伺うと、



「………………」


(あ……駄目だこれ)



 見定めるような目で俺を見ていた。下手に藪を(つつ)けば、間違い無く蛇が出そうである。



「……すいません、知らないです」


「……………………そうか、ハズレか」


「ハズレ扱い⁉︎」



 (つつ)かんでも蛇が出たよ!



「レドル、些か言葉が「いや、すまんな。そういう意味じゃないんだ」」



 シャリアから僅かに立ち昇る怒気を、レドルが慌てて諫めた。



「団長殿は毛色が違うからな。オレのちょっとズレた嗜好を理解出来るんじゃないかと思ったんだが……」


「あ、そういう意味のハズレですか」



 中傷ではなかったらしい。



「……フロードは最東領だからな。ま、楽曲の類いが届くのも遅れるか」



 流行は中央領から生まれて、地方に伝播するらしい。この辺はどの世界でも変わらないようだ。



「でも、成前式を終えましたから、耳にする機会はグッと増えると思います。他にオススメみたいなのありますか?」



 音楽が流れる場所は酒席が主だ。子供が入れる場所じゃない。


 けど、今後は外交の機会も増えるだろうし、社交に使えそうな知識は蓄えておいた方がいいだろう。



「そうだな……貴族の間でも評価が高い楽曲を幾つか上げとくか。……今度侍従の嬢ちゃんにでも演奏してもらうといい」



 にんまりと口端を上げて、レドルが意味深にシャリアに振った。振られたシャリアがピクリと身体を強張らせる。



「ソシエ、演奏出来るの?」


「……ピアノ曲であれば手習いの経験が御座います」



 おお、凄え! 無茶苦茶似合いそう。是非聴きたい、超聴きたい。



「じゃあ、今度お願いしてもいい?」


「――っ⁉︎ いえ⁉︎ あの⁉︎…………ひゃい///」


「へ?」



 盛大に動揺した挙句に(ども)った。何故に?



「よし! ピアノ曲だな? 任せろ!」



 と、レドルがお薦め曲を列挙しだした。脳裏焼付で端から書き留める。シャリアも真剣な表情で脳裏に刻んでいた。



(……しっかし、音楽か~)



 風の属性を使えば、再生機器に似た物が再現出来そうな気はする……が、余波が大きい。広めて流通させるのは危険だろう。



(……けど、個人で楽しむ分にはいいかな?)



 ちょっと興味が湧いた。


 余裕が出来たら試してみよう。

検索して吃驚、ずっと『パラダイス』だと思ってたよw


Stevieスティーヴィー Wonderワンダー


Pastimeパスタイム Paradiseパラダイス

邦題名:楽園の彼方へ



子供の頃ヘッドホンで聴いて鳥肌が立った事があります。むっちゃ懐かしい。



Canonカノンは言わずもがな、卒業式とかで流れるあれです。


クラシックは演奏する奏者・楽団で『別物』と言えるくらい雰囲気ががらりと変わります。


お気に入りの楽団のCDがあったんだがなぁ……。


どっかいった。T△T

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― 新着の感想 ―
[一言] おお、伏線がきましたね。 楽しくなってきました!
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