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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第二章 ~『原点』~
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『貴族』

 木製の牢から通路を抜けて、このアジトの中程にあった広間と言える場所に出ると、三人の男衆が集って何やら話し込んでいるのが見えた。



「――! アーリスきょブッ⁉︎」

「あはははは! なんだそれ!」

「おいおい! 随分と面白い事になってんな!」

「………………」



 こちらに気付いて、俺を見るなり爆笑する三人。「きょブッ」って何だよ……。


 まあ、その気持ちは嫌と言うほどわかる。俺の左肩に乗ったトリアだろう。


 肩に乗せたまま構わず歩いて来たのだが、何を思ったのか、途中でトリアがくるりと仰向けになった。


 ころん、とそのまま横に転げ落ちそうなものだが、二本の尻尾で肩を挟んでバランスをとっているので、信じられないくらい安定している。


……俺の頭を枕にして(くつろ)いでいやがるんですよ? こいつ。


 両足をだらりと開脚した完全リラックス状態。何という傍若無人っぷり。傾げっぱなしの首が痛いんですけど……。



「トリアちゃん、いっぱい食べたね〜」



 トリアの膨らんだお腹を撫でながらリリアが笑う。


……常々思うが、仔猫のお腹って張力が異常だよね。


 本当に「ぱんぱん」としか表現出来ないくらい膨らむんだよ。風船かと。


 前の世界の飼い猫が「大丈夫なのか、これ?」っていうくらい膨らんだ事があるので調べてみたけど、原因としては、


1、食べすぎ

2、ガスの充満

3、便秘

4、病気

5、ただの肥満


……と、この辺りが考えられるらしい。


 元気いっぱいで便もちゃんと出てるなら、消化器の処理が追いついていないだけなので、餌の量を見直せばOKなのだとか。……魔獣でも通用するのかは知らんが。


 食べたのは質量の無いエネルギー(マナ)だ。何故に膨らんだのか理解不能。考えたら負け感がすごい。



「……その様子ですと、契約は――ブフッ!」



……台詞の途中で我慢出来ずにノードが噴いた。残りの二人もまだ腹を抱えて笑っている。


 然もあらん、実際相当お間抜けな姿だろう。想像すると自分でもやばいし……、



「……けぷっ」


「「「「「「「………………」」」」」」」



 狙いすましたかのような不意打ちだった。



……「笑うな」って言う方が無理だろ、これ。






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






 みーみーと文句を言うトリアを、無理矢理肩から降ろして両腕で抱え直す。



「……いい加減行動しましょう」


「……そうですね」



 笑いすぎで体力を消耗してぐったりした一同。


 そろそろ巡回の刻限が近い。


 打ち合わせをして行動に移らないと、そのままタイムアップを迎えてしまう。



(……まあ、そうなったらなったで別に問題は無いけど)



 説教と監視生活が始まるだけだ。


…………あ〜、やっぱ嫌だなぁ。



「……ユーシャ君が全ての肉の再処理をしたので、それを理由に空白を埋めます」



 鬱々としていると、ノードがやおら話を切り出した。集中しよう。



 マイントリアーシュの特性によって暴走した動物達。


 その遺骸を全て回収し処理していた、と報告するつもりらしい。



「……成る程、確かにこれぐらいの時間は掛かりますね」



 奴等の物資が集積されていた場所には、物資の代わりに山積みの肉が整理して置いてあった。


 どんな状態だったかは知らないが、あの量の再処理となると、かなり面倒な作業になる。



「ご苦労様、ユーシャ」


「割と状態良かったから、そんなに手間は掛かって無いぞ?」


「そうなの?」


「縛ってる紐を取り替えて、結び直しただけだし」


「……よく足りたね」



 結構な長さが必要になりそうだが……。



「今日の要求ノルマがキツかったんだよ。一日中籠る気だったからな〜」


 

……マジか。気軽に頼んじゃったんだけど、悪いことしたな。



「アーリス卿、我々三人はこのまま街に戻り、門兵伝手で領主へ報告します」


「え⁉︎ 俺……じゃなくて、私からの報告では無いのですか?」



 この手の報告業務は、大抵最も身分か階級の高い者が行うのが常だ。



「経緯を最初から把握している私が担当するのが、最も適切かと」


(……妥当、ではあるか)



 隠蔽計画の中で、主導を握っているのはノードだ。



――マイントリアーシュ発見。


――判断と対応、手配。


――救援到着後の処理。


――普段の禁猟区を知り、それについて仔細に述べられる者。



 加えて、考えてみれば、系譜から外れた俺に公的な身分は無く、騎士団もまだ発足していないので団長の階級にも価値は無い。


……俺がノードを押し退けて報告に赴く必然が無かった。



「……確かにそうですね。明日、私は別件で領主家執事長との面会の予定が入っています。こちらの事情聴取は、その時にお受けするとお伝え下さい」



 解決済みの案件で、緊急性も無い。俺の方は明日でも特に問題は無いだろう。



「……別件、ですか?」


「はい。詳細をお話しする権限が無いので、内容は公開出来ませんが……」



 権利を全て譲渡してしまいました。


 本当に軌道に乗るかどうかすら怪しいし、軽率に公言していいとも思えない。お口チャックで。



「いえ! お気になさらず、口をついただけです」



……ん〜、何か恐縮されてる?


 貴族って、成前式の後は周りの反応とか対応が色々変わるものなんだな。



「こっちの肉は馬車に載せちまっていいんだよな?」



 と、言いつつレドルが山盛りの肉を担ぐ。



「ああ、こちらの三人で持つには多すぎるし、目立つからな」

「リリアはこっちのやつだ、持てるか?」

「うん!」

「……俺も何か持「主人に荷物持ちをさせる訳には参りませんので」」

「あ、ハイ」



 トリアを抱えてるし、そんなに持てる訳でもないけど、何となく手持ち無沙汰。


 手伝おうかと声を上げたところで、すかさずシャリアのストップがかかった。



《……大人しくしときなさいよ》


(すみません……)



 気遣いが難しいなぁ……。



「……アーリス卿。迅速な救援に改めて御礼申し上げます」


「いえ! 勝手に来ただけですから」

《貴族が恐縮すんな戯け!》


「そうはいきません。今回の恩義は今後の忠誠にて返させて戴きたく思います」


「…………はい」



 あかん、貴族マジで面倒い。



(今後もこんな感じになるのか? めげるぞ?)



 今後の体面を考えると、「んなもん知らん!」なんて開き直る訳にもいかない。


……慣れるしか無いのだが、



(……無理っぽい)



 民主主義、平等思想が根付いている俺の脳味噌。



『貴族』という特権階級に慣れて生活するのは、想像以上に難しそうだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新、お疲れ様です! アーリスにもたれている猫を想像するとほっこりしますw ヒロイン2人に猫が来るとなると3章ではとうとうヒロイン候補の獣人族と有翼族が登場か!? その前に同じ転生…
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