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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第二章 ~『原点』~
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ユーシャ『狩人の心情』

 三人が隠蔽の打ち合わせをしている間、手持ち無沙汰なユーシャは、乱雑な物資の山から押収された装備を回収していた。



「…………、――っ! よっしゃ! あったあった!」



 自分の武装と私物、ノードの腰袋、同じ所にマナ石もあった。


……が、色は黒。中のマナは全て奪われてしまっていた。



(……あ〜、やっぱりか)



 何となく想像は付いてたし、覚悟もしていたが、せっせと溜めていたマナ石が真っ黒になっているのを見ると、気落ちせざるを得ない。



 肩を落としながら、ユーシャは見つけたマナ石の一つをノードに渡す。



「……ノードさん、マナ石見っけといたぜ」


「……ん? ああ、有難う。丁度いいな、ソシエ嬢?」


「はい、何か?」


「これから遺体を奥に移し、私の土の精霊で埋めようと思うのですが、マナが心許無いのです。御助力いただけますか?」



 ノードの要請に応じて、シャリアが即座に腰のポーチからマナプレートを取り出した。



「――紫⁉︎」

「おいおいおい⁉︎ とんでもない物持ってるな⁉︎」

(すげ〜、紫だ!)



 ナスタが補充した時は知らなかったが、母に聞けば、マナプレートの色はその色のマナ石の『万倍』に相当するらしい。



(……つってもな〜、紫石も滅多に見ないのに、それ10000個分とか、ほんとか?)



 ユーシャが半信半疑で見つめる中、シャリアがノードのマナ石にプレートを当てた。


 みるみるとマナ石の方は色が変わっていくのに、プレートの色は『まるで変化しない』。



(マジかよ⁉︎)



 万倍と言われてもちょっと想像出来なかったが、目の前の光景で疑念が吹き飛んだ。



 同世代はもとより、多少の年嵩の者と比べても、ユーシャはかなり稼いでいる方に入る。


 成前式を終えて紋章を得てからは、母親が介在せずともマナのやりとりが可能になったので、効率もかなり向上した。


 それでも、紫色に達した事はない。



(……アーリスって、あの時『青』半分くらいまで補充してたよな?)



――『黒から青』。



 大人の月給くらいだ。それを万倍の半分。



(え〜と……青の5000倍? 石だと紫になって、赤に……え?…………ぉお⁉︎)



 試算すると凄い量になった。


 間違えてないか? と何度も検算するが、どう低く見積もっても、紫なんか余裕で越えて赤になってしまう。



「――ッ、これで充分です!」



 半ば茫然自失に見ていたユーシャの目の前で、ノードが慌ててプレートから石を離した。


 隣にいたレドルが「貰っときゃ良いのに」と揶揄(からか)う。



「馬鹿を言うな。不当な収入は、油断や慢心を生むものだ。生活を壊す原因になるぞ」



 そうレドルに言い捨てると、ノードは改めてシャリアに向き直った。



「……心配は無用です。『遺棄の実行を私とレドルが担当』しますので」



 言いつつ、ノードは片方だけ(・・・・)手袋を外した。肩を軽く竦めて、レドルもそれに倣う。


 その二人を見て、シャリアが驚いたように目を見開いた。



(……? 何してんだろう?)



 よくわからないが、まるで何かの儀式のようだ。外した手袋の片方ずつを、シャリアに渡している。



「どうぞ、お受け取り下さい」


「……主人に代わって御配慮に感謝を申し上げます」


「気にすんな、その分報酬に乗せて貰えりゃあ、オレは構わん」



 シャリアが神妙な面持ちで二人の手袋を受け取る。その様子をぼーっと眺めていると、ノードがいきなりこちらへ振り返った。



「……ユーシャ君」


「え? はい?」


「奴等の乱獲した肉を、『我々が収穫した』と見えるように手直ししてくれないか?」


「……? あれをですか?」



 奴等が無計画に乱獲したと思われる肉の山。


 心得のある者がいたのか、保存の状態は良い。多少の手直しを加えれば、今日の収穫として持ち帰る事は可能だろう。



「時間がない、事情は道すがらに説明する。全て(・・)の肉の再処理を頼む」



 一つも無駄にしたくないから、とノードが瞑目する。


 事情の方はさっぱりだが、狩人として最後の心情を察するのに、苦は無かった。



「わかった。直ぐに取り掛かるよ」


「頼む」



 ノード達から踵を返す。



……役目が出来た。



――失った命を無駄にしない。



 その当然を当然にする為に、ユーシャは再び物資の山に向かった。






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






 目覚めると、何故か後頭部が滅茶苦茶痛かった。



「……ナスタさんや?」



 何があったのか想像に難くない。毎度の元凶(ナスタ)に身体を起こしながら語りかけてみると、



「起きたわね、アーリス」

「良かった……ご主人様」

「アーリスおはよう!」

「……ほえ?」



 聞き覚えのある声で返事が3つ。


 暗がりの中、よくよく目を凝らしてみれば、何故か嫁‘s(よめ〜ズ)が揃って心配気に俺の様子を見ていた。


 縛られた縄とかも既に解かれていて、さながら拘束から解放され、目覚めたばかりのお姫様な気分である。



(…………あれ? 助けに来たの俺だよな?)



 ちょっと混乱。



「〜〜ッ! アーリス!!」

「のわっ⁉︎」



 状況の推移に頭が追い付かず、脳味噌をフル回転させていると、久々のリリア・タックルが発射された。



「ぬぐぉ⁉︎」



 むにゅっ、とした暴力に呆気なく倒される。


 枯れ葉のベッドが、ガサリと音を立てて沈み込んだ。



(ちょっ⁉︎ 溺れる⁉︎)



 所詮(しょせん)枯れ葉である。子供とはいえ、二人分の重さを一点に受けて、返すような力はない。



「きゃはは!」

(きゃははってる場合じゃねー⁉︎)



 完全に埋まった。身動(みじろ)ぎすら出来ないが、俺の上に乗っかってるリリアは、その限りではないらしい。



「――ん〜しょ、と。……えへへ〜///」



 そのまま下にズレて、俺の両手をガッチリ握る。



「……お?」



……ホールドされた?



(何だ? リリアに寝技? みたいなの仕掛けられてないか、俺)



 幾ら身体が頑丈といっても、身長相応にリリアの体重は軽い。なのに、丹田に重石を乗せているかのように、まるで身動き出来なくなった。


 救出されてテンションでも上がってるのか? と思っていたが、どうも様子がおかしい。


 流石に違和感を感じたので、リリアをじっと見てみる。



――俺の上で、両手に指を絡ませて顔を赤らめるリリア。



(……あれ? 何かデジャブ)



 最近似たような事無かった? と自問し、俺が思い出す前に、リリアが行動でその既視感の答えを示した。



「ん〜♡」

「んん⁉︎」



――リリアが俺を拘束したまま覆い被さる。


――そのまま唇が接触する。



(これって、まさか⁉︎)



――両手の甲が熱を帯びる。


――額の紋章が熱を灯す。


――リリアの熱が口から伝播する。



「……ん」



――吐息が顔に掛かる。


――草の香りが混じった甘い匂いが、鼻腔から脳に浸透する。



(ちょちょちょちょちょ〜〜⁉︎)



 その匂いに溺れる前に、辛うじて残っていた最後の理性で復帰した。



(何だ⁉︎ 何が起こってる⁉︎)



 相も変わらず状況に流され易いワタクシ。帰ってきたはいいが、着いては行けてない。



「もういいわよ、リリア。婚約は成立したわ」


「――ぷはっ! 奇襲成功〜!」



 そして、俺が追いつく前に状況は完了してしまったらしい。


 苦悩する俺を余所に、あっけらかんとしたリリアが、ナスタに向けて『V(ブイ)』の字に指を掲げる。



(だから、先に事情を説明しろよ……!)



 ムードもへったくれも無い。


……ある意味、実にリリアらしいとも言えるけど。



(こんな所で婚約とか、親父さんに何て説明すんだよ……)



 マーグの巣穴の奥底。まだ碌に挨拶もしていないのに、婚約が先に成立してしまった。



















【第二の因果の修復を確認。】


【綻びた因果を全て結べ。】


【世界はその矛盾を許容しない。】


【一つでも取り零せば、】


【崩壊は避けられぬ。】

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