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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第二章 ~『原点』~
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ノード『西地区の総意』

 シャリアがマイントリアーシュに翻弄されている間、話はノードを中心に進行していた。




「一味はこれで全てなのだろう? ならばこのアジトごと埋めてしまえばいい」


「おいおい、オレが態々(わざわざ)持ってきた奴はどうするんだ?」


「殺して埋めるさ。騎士団は今後のフロードに必ず必要なものだ。こんな無頼漢達と比べるまでも無いだろう?」


「……『東』か?」



 レドルが問う。それに頷いて応じる。



「ああ。……諸々の時事が噛み合いすぎている」



 大っぴらに話題にはするな、とノードはレドルに釘を刺した。






 東には『終末の災神』と呼ばれる魔獣がいる。


 本来であれば領主に管理され、副領として開発の中心となる筈の龍穴。その龍穴を占拠し、フロード発展の障害となり続ける魔獣『アーデベルシャール』。



――西の樹海。


――南の連峰。


――東の魔獣。



 大自然の威容に挑むなど正気の沙汰では無い。進出を考えるなら、どう考えても東になる。


……が、『倒せない』。過去幾度となく派兵し、前年もザックスが大部隊を率いて挑んだが、結果は痛恨を上回るものだった。




――『新設の騎士団は災神の討伐を目指したもの』




 それが、西を中心とした一部の領民の見解だ。


 どの様な因果か、アーデベルシャールは『成人年の者』でなければ、相対すら出来ない。


 龍穴のマナで特殊な結界でも張っているのか、それ以外の者は東進を阻まれてしまうのだ。



(……アーリス卿は10歳。成人まで後5年)



 5年後は、丁度『渇年』に当たる。


 龍穴から獲得出来るマナが減少する年だ。アーデベルシャールの弱体化が期待出来る……が、現在の領主一族は人数が全く足りていない。



――同世代に恵まれ、多くの挙兵が叶ったザックス。


――成人が渇年に重なるアーリス。



 フロード領の悲願であるとはいえ、実子を二人、それも今の余裕の無い状況で差し向けるのは、領主にとって苦渋である筈だ。



……それでも、決断した。



 渇年を見据えて、異種族混合の騎士団を立ち上げ、その結束と絆を深める為に、実子を系譜から外してまで縁付かせようとしている。


 この姿勢に、異を挟める者などいないだろう。



(……加えて、アーリス卿は『強い』)



 ナウゼルグバーグ討伐戦時、西地区で弓を扱える者には招集が掛かった。狩猟組合に所属するノードにも声は掛かり、街壁の弓兵としてそれに参戦していた。



 あの時、結界が不意に張られ、誰もが「逃げろ!」と叫ぶ中で、アーリスは一歩も引かなかった。


 広域に黒い靄を振り撒き、異常な『圧』を放つナウゼルグバーグは、既知の枠を超えた能力を有する『異常個体』の域に達していた。


 噂に聞く程度で、狩人として比較的広範囲に活動しているノードでさえ、遭遇した事など無い。



 大人から見ても単身で挑もうとは思えない相手に、真正面から相対し、攻撃を見極め、その突進に合わせて、アーリスはナウゼルグバーグの眉間に剣を突き立てたのだ。



――その瞬間、西街壁が歓声で湧いた。



 その後も、身を引き摺るようにナウゼルグバーグに近づき、復活を予期するかの如く、突き刺さった剣を手に魔獣を封じ込める様は、さながら何らかの武勇伝(サーガ)を想起させる光景で、『英雄』の二字を思ったのは自分だけではないだろう。



――街壁の残存部隊を一瞥もせず、一心に魔獣を睨み据えたまま相対。


――自身の不調を悟るや否や、逃亡ではなく膝射に切り替えての継戦を選択。


――迫り来る魔獣に剣を突き立てる判断。


――油断の無い残心。


――視界を遮る靄の中で降り(しき)る矢の雨に動じない覚悟。



……10歳の胆力では無い。



 技量などは幾らでも補えるが、心胆の教唆には限界がある。最終的には、当人の資質に大きく左右されるものだ。


 属性が風である事を懸念する声もあるが、そんなものは周りの者が賄えばいい。その為の騎士団だろう。



 最近は「顔付きも変わった」と噂されているアーリスに対する領民の期待は総じて高く、西地区は特に顕著で、未だ発足すらしていない騎士団への協力体制が確立しつつある。



 戦力足り得る後進の育成は勿論の事、


 他地区への喧伝と支援要請や情報統制、


 各諸施設運用時の優遇措置など。



 既に何度かの集会が秘密裏に行われ、これらが具体的に討議された上で、『一部はもう実行に移されている』。


 発足前で、これほどの期待と威勢を集める組織なのだ。


……その騎士団存続の為の隠蔽であれば、協力しない道理など無い。ましてや野盗が原因での解体など、断じて許容出来ない。




「……正直、此奴等は動物達の餌にしたい所だが、禁猟区に棲息せいそくしているものに『人間の味』を覚えさせる訳にもいかない。このアジトの奥底に封じてしまうのが一番だろう」



 禁猟区で『乱獲』したのだ。


 (はらわた)が煮えくり返る思いだが、今は私情で動いて良い時では無い。


 慎重に、丁寧に、一つ一つ処理していく。



「……この一味の痕跡はこれで完全に消せる。後は私達の行動の辻褄合わせだな。そちらの動きを聞かせてくれ」




 レドルから経緯の詳細を聞き出し、整合性を重視して、ノードは今後の流れを連ねていった。






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






 一方、ノードが隠蔽の構想に注力しているその(かたわ)らで、



(ふわわわわ///)



 シャリアは完全にマイントリアーシュの虜になってしまっていた。



《ちょっと! シャリア!!》

《ナスタ! どうしましょう⁉︎》

《あなたがどうしたのよ!!》



 どうしたもこうしたもないのだ。


 尻尾がふわふわで、お腹がふにふにしている。



《喉がごろごろしてます⁉︎》

《落ち着きなさい! その子は『処分予定』なのよ!》

《――ッ!》



 ナスタの言葉に激しく動揺する。


 そう……このマイントリアーシュは『処分』しなければならない。




 隠蔽で重要なのは、余分なものを『全てを消し去る事』。



――痕跡を残らず消去し、


――辻褄合わせて、


――空白を埋める。



 トズは街で色々と情報を集める時に、旅人なり商人なりを偽称していたらしい。そして、この一味は3ヶ月の間『潜伏』していた。


 目立った活動は今回のもののみ。このまま消えても、気に留める者など居ないだろう。


……が、この子(マイントリアーシュ)は違う。



 最初の予定では、マイントリアーシュは籠から解放し、適当に周りの者へ存在を印象付けて逃がすつもりだった。



《……やっちゃったのよね〜》


《紫瞳……完全に契約が成立していますね》



 魔獣との契約の条件は不明だ。種族ではなく個体によって変わるらしく、千差万別としか言いようがない。


 ナスタを責める事など出来ない……が、契約が成立した事で『因果』が発生してしまった。


 因果の繋がりがある以上、このマイントリアーシュは今後アーリスに付き纏う事になるだろう。



……処分しなければ、この子(マイントリアーシュ)の存在は浮いたものとして残ってしまう。



(………………)



 出来れば処分したくないと思う……が、どう考えても今回の一件の『痕跡』になる。



――『その魔獣を何処で?』、と。



 今後の主人(アーリス)の立場を憂慮すれば、迷うような事では無い。……しかし、



(……この子(マイントリアーシュ)は居合わせてしまっただけです……)



 魔獣とは言え、何の罪も無い仔猫に刃を落とせる程、シャリアは極まっていなかった。



「……ソシエ嬢?」


「――ッ⁉︎ はい⁉︎」



 思い悩むシャリアに、ノードが声を掛けた。



「思案の中、突然失礼します。私の方で隠蔽の詳細を詰めました。拝聴いただきたいのですが……」


「……伺います」



 誘導するまでも無く協力的なノードに、疑心のようなものが浮かぶが、表情に出さず内心で留める。



「時間は有るようで、有りません。早急に行動しましょう」



 僅かな焦りを感じさせる口調で、ノードは隠蔽の計画を語った。

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