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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第二章 ~『原点』~
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ナスタ『幸運の魔獣』

 アーリスの行動は慮外のものだった。


 切っ掛けは誘拐犯達だ。その責もあちら側にあるだろう。


 とは言え、あの行為が世俗に理解されるか、と問われれば『否』を返す他ない。



――犯人の内の一人を拘束し、拷問して情報を引き出す。



 相応の『木』の使い手に頼めば、《審問》で確実に情報を引き出せる。あんな乱暴な手段を取る必要が無い。まだ発足に至っていないとはいえ、騎士団の団長が行ってよい所業では無いのだ。


……発足後でも基本的に駄目だけど。



 大急ぎでシャリアを帰宅させ、万が一の『身代わり』として同席させた。


 アーリスにもまだ気付かれていないようだが、私とシャリア間の念話なら『紋章は光らない』。


 人と人を繋ぐから光る。

 

 私は違う、婚約で繋がった経路を使うだけでいい。




《レドルにトズを運ばせて。案内は私の風に従いなさい》


《わかりました》



……アーリスの拷問行為が発覚すれば、騎士団は窮地に立たされる。



『10歳の子供が、独断で拷問の指示をした』のだ。



 醜聞、の二字では済まない。


 領民の信も遠ざかるだろう。



……そして、そう説明しても、アーリスは多分やめなかったと思う。



――『この男は自分を中心に据えない』。



 何故か比重が周りの者に傾く。


 レーゼル然り、シャリア然り、今回のリリア然りだ。


 例えどれだけの汚名を被ろうと、アーリスは強硬しただろう。



 一面から見れば、『美点』、と言えるかも知れない。……けど、アーリスの考え方は『上』に立つ者にそぐうものでは無い。



――『強固な監視が常時つく事になり、行動も大きく制限される』――



……『そんな筈が無いだろうに』。



――管理される事に慣れた思考。


――管理する側を配慮する思考。


――自身を軽視する思考。



 過去にどの様な扱いを受けていたのか、それを追求する程、無遠慮では無い。意味もない。


 重要なのは『これから』なのだから。


……判らせればいい。


 自分が『上』であると。


 使う側であると。


……だから、シャリアに言った。



――『物』として使われろ……と。



 どう説明しようと、実践に勝る指南は存在しない。


 経験させた方が手っ取り早いのだ。


 使わせればいい。


 極端な物言いをすれば、従者はその為に存在するのだから。






(……先ずは、上ね)



 この牢の中にあるもの。


 枯れ葉のベッドに、不浄の為と思われる、使われていない簡易な箱。


……そして、『棚』。


 壁に杭を打ち込み、そこに板を載せただけの簡素なものだ。


 その上に、籠がある。


 で見ていたアーリスからは丁度角度が悪く、気付かなかったようだが、間違いない。



――中に『マイントリアーシュ』がいる。



(……ごめんね)



 風で板の隅の方を弾く。


 杭に載せてあるだけの板だ。その軽い衝撃だけで、簡単に外れて落ちた。当然の如く、上に載っていた物が全て落ちてくる。マイントリアーシュの入った籠もだ。


 けたたましい音が鳴り響いたが、それは予め周囲を覆うように操られていた風によって、全てが遮断された。



(ほんと……何でこんな事知ってるの?)



 尋問の際、アーリスに「ドアの外で風を回せ」といわれた。


 後で「何故?」と理由(わけ)を聞いてみれば、音とは、突き詰めれば大気に伝わる振動なのだそうだ。躊躇するように、やや渋りながら解説された。



(……何で渋ったのかしら?……まあいいわ。何れにせよ、アーリスはここ(アスガンティア)に来る前は研究者だった可能性が高いわね)



 何というか、知識の底が深い。


 探究を常にする者でなければ、至らない場所にいるような気がする。



(防音はこれでオッケー。後は……)



 棚ごと落ちた籠を一瞥する。


 高所から落下したそれは、『偶然』にも鍵の部分だけが壊れたらしい。


 中に閉じ込められていたマイントリアーシュが解放された。



(……衰弱してるわね)



 私も見るのは初めてだが、明らかに弱りきっている。


 アーリスのマナを送って、食べさせた。



「……み〜」


(何その鳴き声⁉︎)



 魔獣の癖に随分と愛らしい。


 外見も猫に酷似しているし、愛玩として高値で取引されるのもわかる気がした。



(……悪いけど、理由になってもらうわ)



 元気になったその子を、牢の下の隙間から風で押して外に追い出す。


……筈だったのだが、



(――え⁉︎ 効かない(・・・・)⁉︎)



 マナの風が全て『吸収』されてしまう。



「み〜♫」

(み〜、じゃないわよ!)



 弱くはない風に晒されておきながら、気持ち良さそうに悠々としているマイントリアーシュ。


……呑気に毛繕いを始めた。



(ムキーッ! も〜! 『あっち行きなさい』ってば!!)



 心の中で呟くと、応じるようにマイントリアーシュがすっくと四足で立ち上がった。トコトコとあっちに行く。



(……え? あれ?)



 暖簾に腕押しの様な手応えが、不意に無くなった。


……凄く嫌な予感がする。



(……『待ちなさい』)



――マイントリアーシュが立ち止まった。



(…………………………『こっちを向いて』)



――マイントリアーシュが振り向く。



(あ、…………やっちゃった♡)



 自分で可愛く言ってみるが、現実は変わらない。



――マイントリアーシュの瞳は、『紫色』に染まっている。



『魔獣契約』が成立していた。

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