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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第二章 ~『原点』~
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『理性的な行動』

 リリアの無事は確認した。


 隣の奥の方に閉じ込められている二人も、心配はいらないそうだ。呼吸の仕方でナスタには判るらしい。



(――んじゃ、始めますか)



 起爆の時だ。


 室内に使える物があるか、ちょっと見回してみる。



(……目を塞がないとか、甘いよね?)


《何言ってんのあんた?》



 俺なら絶対塞ぐぞ。


 行動を著しく制限出来るし、ストレスで衰弱させて、反抗の意思を挫く効果もある。



(手緩いよ? ザクちゃん・・・・・



 名前から不思議と「雑魚っぽいな〜」とは思っていたが、その通りだったようだ。頭はそれなりに回るらしいが、『それだけでは足りない』。



(………………)



 俺は中途半端な犯罪者は嫌いだ。


 別に犯罪を容認するするつもりは無いが、それでも『やるなら徹底して突き抜けろ』と思う。



(……人を攫って、それを売るつもりだった奴が、『人間らしさ』なんか持つんじゃねーよ)



――俺はお前らを人間だと思っていない。


――だから手加減しない。












      須らく『死ね』。












(ナスタ、『殺るぞ』)


《……『主命のままに』》






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






かしら、ガキを牢に入れてきました」


「おう、ご苦労さん。お前も吸い出しとけ、よっと」



 アーリスの持っていた石をレブに放る。



「……助かります。紋話すら出来なくなるところでしたから」


「苦労かけたな、こっから挽回するぞ。ありゃあ相当な上玉だ。余裕があれば飼いたいぐらいだな」


「はい! 自分、倭人の娘の方イイっすか!」



 アダが股間を押さえながら喚く。



「先走りすぎだ阿呆」


「溜まってんっスよ⁉︎ 三ヵ月近くご無沙汰で、あのおっぱいだけでかなり「あ〜、わかったわかった。全部終わったら好きにしろ」」



 片手を振りながら適当にあしらっておく。



「ベイ、もう一度トズに繋いでみてくれ」


「了解です。マナが補充出来ましたからね、少し粘ってみます」



 ベイが椅子代わりの岩に腰掛けて、紋話を開始する。



「レブはその石をハドに渡して補充させてくれ」


「終わったらどうしますか?」


「……今後の行動はこれから考える。トズが捕まりゃ話しが早えんだが、雲行きが怪しいな」


「どこ行ったんスかね〜、トズの兄貴」


「一先ず、ハドと哨戒に当たってくれ」


「わかりました」



 レブが外に出ていった。


 その背を目で追っていると、風が入って来るのを感じた。



「……本当に今日は風が強いですね」


「今度入り口に風避けでも作りやスか?」


「要らんことすんじゃねえ、目立つだろうが」



〈カタン!〉



 何かが倒れる音がした。見ると横倒しの矢筒から、アダが量産した矢がバラけて散乱していた。



「あ〜あ〜、なんてこった」

「何してんだお前は?」

「おれじゃないっスよ⁉︎ 風で倒れたんですよ!」

「いいから早く直せ」



 牢をからにする為に、突貫で中の物資をここまで移動してきた。その際の置き方が悪かったのだろう。


 アダが倒れた矢筒に向かう。



――強い風が吹いた。



「うぉ⁉︎」

「クッ⁉︎」

「んなっ⁉︎」

「チッ、ウザってえな⁉︎」



――砂埃が目に入った。



「いってえ⁉︎ 何だこの風⁉︎」

「おい! 擦るなよ⁉︎ 返って傷が付く!」

「イタイっス⁉︎ ラキさん助けて!」



 ここに居る全員が喰らったらしい。



(――駄目だ取れねえ、随分と山盛り入りやがったな)



 涙の洗浄を待つより、ラキに洗わせた方が早そうだ。



「ラキ! お前の精霊で洗〈ヒュン!〉――⁉︎」


「うぐっ⁉︎」

「くはっ⁉︎」



 風を切る音。


 次いで二人の、『ラキとベイの苦悶の声』。



「――なっ⁉︎ おい! 何があった⁉︎」


「ひっ⁉︎ なんスか⁉︎ 何があったんスか⁉︎」



 風が弱まり、止むを得ず擦って砂を拭うと、



(――何だ? 何が起こった⁉︎)



――矢で射抜かれたラキとベイの遺体があった。



「ひいいいぃぃぃ⁉︎ 何で⁉︎ ベイの兄貴⁉︎ ラキさん⁉︎ どうしたんスか⁉︎」



 アダが泣きながらラキの元に擦り寄る。



(……滑稽だなぁ、おい)






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






《え、何で? あの男、仲間を斬り殺したわよ?》


(……あ〜〜)



 確実を期す為に、取り敢えず標的を二人に絞ったのだが。



(考えてみれば、そうなりますな〜)


《なに⁉︎ あんたあの凶行が理解出来んの⁉︎》



 うっわ、すげえ誤解されてそう。



(……よし、わかった。解説しよう)

《私は理解したくないんだけど……》

(聞いてください、お願いします)

《………………どうぞ》



 つっても、そんなに難しい話でも無い。



(室内に居るのは4人。一時的に目が塞がれて、周囲が見えなくなった)


《私らがやった事ね》



 ナスタの風で砂埃巻き上げて、奴等の顔にぶち当てただけである。


 子供騙しその1:『目潰し』



(視力が回復して、次に目を開いて最初に見えたのは、二人の死体だった)


《……うん、私らがやった事ね》



 最初に風で矢筒を倒し、中の矢をバラバラにしておく。


 奴等の配置は風の中にある限り丸見えだ。仕掛けを『設計』する時間も充分ある。後はタイミングを測って放てばいい。



(優先度の高い水の使い手と、通信役に絞った訳だが、まあ役割はどうでもいい。生き残ったのは二人)


《……うん》


(ザクは自分が犯人じゃないってわかってるんだ。……殺ってないからな)


《――あ!》



 ナスタにも解ったらしい。



(……つまり、そういう事)



 残りの一人が無条件で犯人になる。


 あの凶行は寧ろ、理性的な行動と言えるだろう。






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





 斬り殺したアダの遺体を見下ろして、ひとちる。



(何でこんな事になった⁉︎)



 状況からアダの裏切りは明白だ。



(クソが! 何処で叛意なんぞ抱えやがった⁉︎)



 ラズダでの見殺しか? いや、満場一致での判断だった筈だ。



(……女か?)



 今奥にしまっている女を独占したいという、欲情からの犯行か?



「――この、馬鹿が!!」



 本当に下らないが、他に思い当たる動機が無い。



「……かしら? 中で何か――な⁉︎」

「――ッ!!」



 哨戒に当てていた二人が、騒ぎを聞きつけて戻ったらしい。



「何があったんです⁉︎」

「アダが裏切りやがったんだよ!!」

「――そんな⁉︎ 何で!!」

「オレが知るか!!!」



 死んだ奴の事などどうでもいい、問題はこれからだ。



(……ッ、畜生! この人数じゃ厳しすぎるぞ⁉︎)



 碌な計画が組めない。必要な役割に対して、振り分けられる人数が少なすぎる。


 

――風がまた強くなり始めた。



「……どうするんです、これから」

「今考えてんだよ! お前らもちったあ知恵を出せ!」

「――ッ⁉︎」

「…………」



 三つの遺体が横たわり、三人の男が険悪な空気を作る其処に、再び強い風が吹き荒れた。



「――うぁ⁉︎」

「くっそ、またかよ!」

「……ッ!」



 強くなった辺りで予感はしたので、予め目を瞑っておいたが、視界が閉ざされるといった結果に変わりは無い。



〈ヒュン!〉



(――ッ⁉︎ おい⁉︎ まさか!!)



 一層強くなる風が、耳元で音を掻き消す。


 顔を狙うように吹いてくるので、目を開ける事が出来ない。


 危機感から後ろに飛び退いた。


 風はまだ治まらない。



「――あっ⁉︎ ガッ……」



――ドサリと『誰かが倒れた』。



(何だ⁉︎ またか・・・⁉︎)



 屈むような姿勢から手をかざして薄く目を開くと、頸動脈を斬られ、倒れているレブの姿が見えた。



「――ッ! てめえが『主犯』か!!」






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






(と、ゆ〜事で、今回は『狙いました』)


《……今回のポイントは?》


(首を掠めたところですね〜、残ったお二方は剣の所持者ですし? 矢が残ってると不自然かな〜、と)


《何でそんな事をサラリと思いつくの⁉︎》



 弛まぬイメトレの成果じゃないかな? 後は推理物?


 視界には、二人の男が剣闘を繰り広げているのが見える。


……シルエットだけど。



(……勝てよ、ザク。負けるんじゃねえぞ!)


《いきなりどうしたの?》


(ザクが勝った方が都合が良いから)


《……ごめんなさい、わからないんだけど?》



 ん〜、観察眼が足らんなぁ。



(ザクは条件クリアしてたぞ?)


《……ああ、そういう事ね》


(そういう事です)



 お前の死に方は、もう決めてあるんだ。



――『鬼灯』で殺してやるから、勝ち残れよ?

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