表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第二章 ~『原点』~
81/216

『虜囚』

 俺の前を歩きながら、男は紋話でもう一人の方を呼び寄せて、合流した。



(……見張りを置いとかないのか?)



 街の動向は気になる所だろう。


 トズから情報が入らないのだから、俺なら南街門を監視させる。



(……わがんね)



 意図は読めないが、こっちとしては好都合だ。一箇所に固まっていてくれた方が、『処理』がし易い。


 前後を挟まれた連行状態の癖して、超余裕ですね、俺。



(……この二人には『無理』だな)

《そうね、胸当てが邪魔だわ》



 ここで仕掛けるつもりは無いけど、服装チェックは大事。


 向こうは動き易そうな軽装で、こっちはローブだ。


 歩行速度に差が出そうものだが、俺の速度に合わせているのか、負担はあまり感じない。


……もしかして、気遣い?



(……いやぁ、侮りだろうよ)



 二人いるのに、俺を拘束しない。


 逃げてもすぐに追いつけるからだろう、実際その通りだ。


……舐められてますな〜。善きかな善きかな。



《……ねえ、アーリス? 後ろの奴ずっと紋話してるけど、いいの?》


(いいぞ、ほっとけ)



 点火済みの爆弾を、無警戒でアジトに持ち込むのと同義。



――奴等の末路は決定している。






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






「……駄目ですね。繋がりません」



 何度目かの接続失敗をベイが告げた。



「――チッ、どうなってやがる?」



 流れが把握出来ない。



 トズが『*2つ目の仕掛け*』で目標を動かしたのなら、同行している筈だ。


……だが、居ない。連絡もつかない。



 あの手紙だけを見て、馬鹿正直に一人で来た?


……有り得ないだろう。周りの従者が許さない筈だ。



 トズがしくじった?


……なら、何故ここにガキだけが来る?



「……本当に誰も尾行つけていないのか?」


「…………追手の気配は無いそうですぜ」


「………………」



 囮の可能性も薄い。



(最初から替え玉が居た?……いや、駄目だな)



 アーリスは今街中に居を構えているらしい。専用の新邸が出来るまでの仮住まいだとか。


 そんな領民の目の届く所で、替え玉と同居など出来る筈が無い。それこそ双子が吹聴されるだろう。



 では、急遽用立てた?


……時間が足りないだろう。


 事前に計画が漏れていれば、予め容姿の似た紫瞳の子を用立てられるかもしれないが、そもそもこの計画自体が思いつきに等しい突発的なものだ。



(……視点を変えるか、……南の殺人、トズか?)



 トズがおこなったとは考え難い。情報収集の手腕は買っているが、荒事にはてんで才のない男だ。


……ならば、『トズが犠牲者の方だったら』どうなる?


 連絡がつかず……が、誘拐はほぼ成立しているこの状況。



(……目標を連れ出し、口八丁でガキだけを先行させるように仕向け、従者を引き剥がす)



 計画とは違うが、トズなら出来そうな気はする。



(そして返り討ちに……いや、ダメだな。これじゃ従者が残っちまう)



 追跡が無いのが不自然になる。



(……組み上げるには情報が足んねえな、こりゃ)


「――かしら、ハドからです。『間も無く到着』」



 ベイの言葉と同時に、アジト内に風が入ってきた。



「うひょ! 寒いっすね〜」


「アダ、五月蝿えぞ。……レブにそのまま連れて来させろ。ハドは哨戒に就くように言え」


「了解です。ハドはそのまま――」


「――ったく、風なんぞ珍しくもねぇだろうが」


「いやぁ、自分ダメなんっすよ。何か関節がチクチクするんで」


「…………ラキ、後で診てやってくれ」


「――はぁ、……好き勝手に食い過ぎるからだ、この馬鹿」


「おほっ⁉︎ ラキさん、きびし〜」



 アダが奇怪なパフォーマンスでおちゃらけている間に、レブがアーリスを連れて帰って来た。



「ほら、入れ」



 子供を中に押し出し、レブが一つしかない通路を陣取る。捕獲完了だ。



(……成る程、『女』だな)



 白い貴族のローブで身を包んだ子供。


 剥くまでも無く、顔付きを見れば判る。



――10歳の男児の表情では無い。



 精神年齢で推し量れるこれは、女の方が早熟で、男児ならもっとあどけなさが残るものだ。



(一応、後で確認はしておくがな)



 じろじろと四方から見られていながら、当のアーリスは堂々としたものだった。


 ぐるりと周囲を返すように見回し、大人に囲まれているのを確認しておきながら、平然としている。



(……こっちも肝の据わった娘だな)



 これだけの血統と気位の品は、扱った事が無い。



――さて、幾らになるか。



「……リリアは?」



 観察する様に動かしていた視点を、真っ直ぐオレに向けてアーリスが聞いてきた。



「……奥だ、先ずは石を見せて貰おうか」



 言われて、馬鹿正直にローブの内側でガサゴソと石を探し始めるアーリス。



(騎士団の団長さんねぇ……)



 無警戒すぎる。隙だらけだし、どう見ても肩書きに負けてる。


……右足で軽く地面を叩く。



〈ブンッ!〉


「――え⁉︎」



 アーリスの背後にいたレブが、分銅の付いた縄を放る。


 それは、ローブの内側に手を入れていた為、回避もままならないアーリスに容易く巻き付いた。



「何を⁉︎」



 アーリスの抗議の声に紛れて、紫石がコトリと零れ落ちる。


 丁度目の前に転がってきた石を拾いながら、アダに指示を出す。



「口も塞いどけ、話は後で聞く」


「――くっ、リリアは⁉︎」



……まだ、そんなこと言ってんのか。このお嬢さんは?



「……良いぜ、会わせてやる。おい、倭人の娘と同じ場所に突っ込んどけ」




 元はマーグの巣穴だが、この3ヶ月の間に色々と手を加えてある。


 早い段階で仕事の目星は付いた。


 商品ガキを仕舞っておく場所が必要なのは自明だ。


 二手に分かれた洞の奥を利用して、アダに木製の壁を作らせて、閉じ込められるようにしてある。


 一方は倭人の娘。もう一方に男共を放り込んだ。


 片方は長い潜伏期間の間で物置になっていたものだが、中の物資を掻き出して、急いで体裁を整えた。



(……同じ場所に突っ込む訳にはいかんからな)



『虜囚の餌』という言葉がある。


 監禁・投獄などする時に、中に希少品エサを置くな、といった意味合いの言葉だ。


 虜囚が、その希少品を『人質』に要求してきた事例から生まれたらしいが、迂闊にもやらかす奴は多い。


 全てを一箇所に纏めて管理する方が楽ではあるが、中に入れるのが人間の時は留意が必要になる。



(……ま、このアーリスは大丈夫だな。話にならん)



 倭人の娘に危害を加えるとは到底思えないし、何よりその力が無い。


 同じ場所にマイントリアーシュも居るが、あの魔獣は危害を加える者を狂わせる特性持ちな上に、籠は高所に置いてある。


 色々な意味で、簀巻きにされた子供がどうこう出来る代物じゃない。



(二度と会えなくなるだろうからな……最後の逢瀬の時間くらいはくれてやるよ)






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






 引き摺るように連れられたのは、木製の壁で塞がれた行き止まりだった。


 壁には扉が有り、閂で閉ざされている。



(……よくもまあ作ったな、これ)



 よく見れば、完全に通路を塞いでいる訳では無く、上下に少し隙間があった。


 開けずに中の様子を確認する為だろう。



「ほら、倭人の娘はここだ。早く入れ」


「ん〜〜!!」



 一応、抗議っぽく抵抗しておく。


 だが、抵抗虚しく、アーリスは牢に捕らえられてしまった!



(何て事なの、ヒドイ!)

《ノリノリね、あんた》



 俺を押しやると、ガコンと閂を嵌めて、男は去っていった。



(……さて)



 目の前には、枯れ葉の山にシーツを被せて作った寝床。



――その上に、スヤスヤするリリアの姿が窺えた。



(――――良かった〜〜)



 ドッと安堵の息を吐く。


 このアジトに入る前に、サーチで中の様子は全て取得していた。


 構造、人数、居場所も把握済みで、吐息から生存も確認出来ていたが、それでも心中穏やかでは無かったのだ。



(……転んだら一巻の終わり!)


《……何の為のローブなのよ?》


(雰囲気雰囲気)



 拘束は想定済み。


 内側から『風で持ち上げて』動けるようにと、わざわざ着込んできたローブだ。


 転んでも起き上がるくらいは余裕だろう。



 のしのしと慎重に歩を進める。


 そして、リリアの隣にダイブ!



(お、結構柔らかいじゃん)



 草の匂いが強すぎるが、思いの外ふかふかだった。



(……大丈夫そうだな)



 至近でリリアの寝顔を見る。


 俺と同じ様に簀巻きに猿轡だが、怪我とかはしてないし、血色もいい。


……それにしても、



(……おっぱいで捕捉出来るって凄いよな?)


《……実際、無茶苦茶エロいわね》



 縛られて迫り出した胸。垂涎ものである。



(……あいつら、悪戯とかしてないだろうな!!)


《………………ごめん、否定出来ないわ》



 なんて事だ。



 絶許をここに誓おう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ