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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第二章 ~『原点』~
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『翻弄』

 西街門を馬車で通過した。



(マジで通れたよ……)



 門の手前で一度馬車を止めて、レドルがジーグの元に何事かを話に行った時はドキドキしたが、本当にノーチェックであっさり通れてしまった。



――「貨物車であれば流石に難しかっただろうが、この馬車はフロード領の借り物だからな。顔馴染みだし、必ず返却に戻ってくるとなれば、そうしつこく検分なんぞしないもんだ」――



 いちいち全て調べて渋滞になったら、領民の不満が募るだろう? と説明されれば、成る程と頷くしか無い。



「南西の見張り塔の方も、この『通証旗』があれば問題無い。後はこのまま禁猟区に向かうだけだが……本当に一人で先行するのか?」


「はい。秘策があるので、心配はご無用ですよ?」


「……つってもなぁ……」



 納得がいかない、と不満たらたらな様子が見て取れる。



……レドルには作戦を話していない。


 今回の一件で、ナスタと俺の力は明るみに出るだろうが、わざわざ自分から吹聴するつもりは無いのだ。



「……人質の安否が不明な状態で、不用意に犯人を刺激したく有りません。それに、救出後の退路の確保も重要ですよ? 何かあればソシエを通じて連絡するので、これも依頼の一つだと思って下さい」


「……了解した」



 不承不承ふしょうぶしょうな感じを隠しもせず了解を返すレドル。実際、同行されてもザク達を警戒させるだけだ。



(徹底的に『油断』してもらいたいからな……ぶっちゃけ、レドルは色々な面で邪魔になる)



『のこのこと馬鹿正直に一人でやって来たガキ』、それが俺だ。


 下手に同行者を連れて自衛と警戒を見せれば、人質共々返って危険になる。


 徹底的に、無能で、愚かで、浅はかな子供を演じてやる。



――奴等を残さず殲滅する為に。






「……ほいよ。到着したぜ」



 西の森手前の道を南に下り、少し走った所で馬車は止まった。


 轍の跡が微かに残る程度の、寂れた街道。


 その先は、雑草が生い茂り、何年も使われていないのが見て取れる獣道に繋がっていた。



「此処から向こうに歩いて行けば、南の森の禁猟区に入れる。確か、途中に看板があった筈だ……今もあるかどうかは分からんがな」



 馬車からシャリアと一緒に降りて、レドルの案内を聞く。



(……方角と、南街門の位置からするとあの辺りかな?)



 トズから聞き出したアジトの場所。その路程を概算で弾き出す……が、



(……やっぱ案内してもらった方が早いな)



 とっとと止める。


 俺がやるのは強襲じゃない。


『*潜入*』だ。素直にとっ捕まって連行されよう。



(……ナスタ、『やってくれ』)


《『了解』…………ッ!――行くわよ!》



 ナスタが息んだのがわかった。


 同時に、今までに感じた事ない程のマナ量が、俺の中で存在を増し、膨れ上がる。



(――うぉっ!)



――『力』だ。



 目に見えない力が、ブワッと俺から放出され、周囲に霧散した。


 次いで、それは森を丸ごとを揺らす『風』となって、禁猟区を吹き抜けて行く。



「――っと、凄え風だな」



 レドルの呟きが耳に入った。



(……そう、ここなら存分に振るえる)



 ただの強い風だ。


 違和感など抱かれよう筈もない。


 街中のように気遣う必要など無い。


 紫の風のソナーで、遠慮無く森に存在する全てを丸裸にする。



(……南街門に近い位置に一人、二人……案内役、見張り役……か?)



 奴等の総勢は7人。



ザク……リーダー、火精霊使い。

トズ……交渉、偵察担当。

レブ……元狩人、糧食担当。

アダ……元大工で、加工、設営担当。

ラキ……水精霊使い。生活水要員。

ハド……元兵士、戦闘要員。

ベイ……紋話、情報処理担当。



 こんな感じらしい。



(トズは潰した、ラキとザクはアジト詰めだろう……ベイも多分そこかな?)



 残りはレブ、アダ、ハドの3人。


……一人余る。



(……別行動?)



 既にリリアだけを連れ去ったという可能性が、脳裏をよぎった。



(――ッ、……落ち着け。考えられる『最速』でここまで来た。誘拐の時刻から考えても、そう遠くには行ってない)



 単にアジトに4人詰めているだけかも知れないし、万が一があっても、こっちには『足』がある。


 一人を拷問して行き先を聞き出し、別働隊としてシャリアとレドルに追わせれば良い。十分追いつける。



――リリア達を誘拐した犯人。


――レーゼルの死の遠因となった一味。



「……行ってきます」



 後ろに一言だけ告げて、俺は禁猟区の森に入って行った。







 レドルの言う通り、立ち入り禁止的な文句の書かれた看板を、獣道の途中で発見した。



(……昔は盛んに使われてた道なんだろうなぁ)



 でなけりゃ、まるで役に立たん代物だ。半ば以上が草で隠れていて、「あるぞ」と言われていなければ、気付かなかった可能性が高い。


……気付こうが気付くまいが関係無いけど。



 ナスタの風で全てが丸見えになった森。


 その景観を、俺は『上から』眺めていた。


 ソナーで得た結果を、脳裏焼付で角度を起こすように変えて、小枠のMAP的に別画面表示しているのである。



《……こんな発想、どこから湧いてくるのよ……》



 ナスタの呆れ声が聴こえた。



(考えたの俺じゃないけどね)


《…………もういいわ》



 諦めたらしい。


……まあ、俺もゲームの画面から引用しただけのものを、仔細詳細に説明しろと言われても困るし。



(……あっちか……んじゃ、俺はこっち)



 真っ直ぐには向かわず、奴等の居場所からやや進路をズラして進む。


 森の中をウロウロしている所を、あちらさんに見つかる方が『それっぽい』。


 緩い風が吹き続ける森は、葉音がそこかしこで聴こえて、中々に賑やかだ。



(……動いた)



 MAPはリアルタイムでターゲットの動きを補足している。


 街中とは違い、此処では風が吹いているのを不思議に思う者はいない。



――補足した獲物は徹底して監視下に置く。



(……参ったなぁ、脳裏焼付便利すぎ。俺の特性チートとして保証されてる訳じゃないのに……)



 偶然で得た、神様のうっかりの産物。


 あまり頼りにし過ぎるのも危険だ、とわかっているのだが、如何せん使い勝手が良すぎる。



(記憶力は兎も角、ナスタのご飯は維持したいなぁ……)



 いきなり消失!……なんて憂き目に合わない事を祈るばかりである。






「――おい! そこの子供! 此処は禁猟区だぞ? 何処から入ってきた?」



 補足していた一人が、程なく接触してきた。



(……ヤバイ、頭良いな)



 出方が絶妙だ。もうちょっと粗野な感じのイメージだった。



(……付き合ってらんないな、こっちから切り出すか)



 狩りの装備で身を包んではいるが、こちらを捕捉するまで身動きしなかった。巡回の動きでは無いし、狩人の『狩待ち』にしても、踵を返すのがあっさり過ぎる。


 素性の探り合いに時間を割くつもりは無い。奴等の欲しい手札を見せてしまおう。


 フードを降ろして、『瞳』を晒す。



「……石を持って来ました。リリアは『何処』ですか?」


「………………」



 あちらさん好みの単語な筈だ。早く誘導しろ。



「……一人か?」



 読みは外れていなかったらしい。よしよし。



「手紙の指示に、そう書かれていましたから」


「…………男は?」


「……?」


「その手紙を持ってきた男はどうした?」



 想定内。



「……誰ですか? そんな人知りません」


「…………どうやってここまで来た? 何故南街門を使わなかった?」



 質問ばかりですね〜。



(そりゃそうだろうけど)



 トズを初手で抑えられたのは大きい。



――『奴等は街の近況を知る手段がもう無い』。



「……南で殺人があったそうです。厳しい通行規制がかかっているので、別の道を使いました」


《……え? そうなの?》

(いや? 嘘だけど?)

《……え?》



 非難するような視線を送ってやる。


『お前らの仕業だろう』と言わんばかりに。


 当然、そんな事件など無い。が、コイツは否定する事も、無実を証明する事も出来ない。


 ざ・ま・あ(笑)


 男が顔を顰めた。



《……なんでそんな嘘吐くのよ?》

(てきと〜。即興で南ルート使えない理由でっち上げた)



 下手に事実に即した虚構より、荒唐無稽な方が確信に届かず、見抜かれ難いとか何とか。



「…………どの道を使「あなたに話す必要などありません! 早くリリアを返して下さい!『何処』に居るんですか⁉︎」」



 苛立ちを募らせた感。実際早くして欲しい。



(ちっ、めんどくせーな、コイツ)

《……あれ? 私何か錯覚し始めたんだけど……》



「………………いいだろう、こっちだ」


(おっしゃぁ!!)



 心の中でガッツポーズ。



《……え? 良いの? これ?》

 


 何をおっしゃる。


 バッチリじゃねーか。

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