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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第二章 ~『原点』~
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『共謀する2人』

 トズを此処に置いて行く訳にはいかないので、『梱包』して馬車に載せることになった。


……誤解を招きそうだが、殺ってません。生きてます。いや、扱いは完璧に『お荷物』なんだけどね。


 シャリアの精霊術、『導睡』で完全に意識を失っていただいた後、レドルが麻袋に詰めてぐるぐるにしたのである。


 倫理的にも道義的にも完全にアウトな行いだが、先に道を踏み外したのはあちらさんなので、情状酌量の余地なんぞ一切無い。



 トズの袋詰めが完了する少し前に、シャリアに馬車の手配を任せて、俺は身支度。奴等の指定通りの紫石を準備し、全身が隠れるようなローブに身を包んだ。




 俺の準備完了から、シャリアの帰宅を待つ事15分。



《……帰って来たわ》



 ナスタの言う通り、シャリアが戻ってきた。


 玄関で出迎える。



「お帰り」


「はい、御待たせ致しました」


「よし、これで準備完了かな?……レドル、武装は?」


「戸口に一式置かせて貰ってるぞ。弓と矢が筒に20本程入ってる」



 さして懇意でもない家に、武装して入るような常識知らずでは無かったらしい。後はノックを覚えて下さい。



「……無駄に似合ってんなぁ」



 シャリアの用意した、フード付きのローブを着た俺を見て、レドルが要らん感想を漏らす。ほっとけ。


 (ふち)に金色の刺繍が施された、真っ白で引き摺らない程度に袖と裾の長いローブ。


 これを羽織るとすごく可愛いんだ……俺が。



(知ってる……うん。貴族御用達の一品だから、他意は無いんだ。判ってるんだけどね……)



 何ともモヤモヤする。



《……アーリス、レドルを先に行かせて》


「……レドル、先に行って準備をしておいて下さい」


「あいよ」



 レドルがトズ袋を持って出て行った。



(……んで? どうした?)



 何か内輪で話があるのだろうと、指示を出したナスタを問い詰めるが、口を開いたのはシャリアだった。



「……アーリス様、決して無理はなさらないで下さいね?」



 あの時と同じ台詞だ。思わずちょっと笑ってしまった。



「……うん、大丈夫」


「………………」



 シャリアには念話で、作戦の内容などのあらましを全て説明してある。ナスタがいるので俺に危険は無いのだが、それでもやはり心配なのだろう。


 少し目の潤んだシャリアを、どう安心させようかと言葉を探していると、



(……?)



 シャリアが額の髪を上げて、紋章を灯した。


 水色に輝く『俺の紋章』が見える。



《……額紋は婚約・婚姻と、主従の契約で使うもの……紋章を貰って、その人の『所有物』になるのよ》


(…………はい⁉︎)



 いきなりとんでもない事を言うナスタ。



(所有物って、流石に表現が悪すぎるだろ⁉︎)



 婚約と『イコール』で繋ぐには流石に暴言が過ぎる。



《……いいえ、ナスタの言に異はありません》


(シャリア⁉︎)


《私は、貴方の『物』です》



 他ならぬシャリアが肯定した。



――自分が俺の物だと。



(――っ、そんなの《あんたに足りないのがこれ・・よ》)


(は⁉︎ 何が⁉︎)


《さっきのあんたの推測、……ランフェスに同意するわ。説明するより見せた方が、体感させた方が早いって》



……駄目だ、分からん。一体何の話だ?



《覚悟しなさい。……シャリア?》


《はい》



 返事と共に、シャリアが俺との間を詰めた。



「…………んっ……」



 そのまま唇を合わせてくる。



(――うぃえっ⁉︎)


《何を驚いてるの? ただのお嫁さんの口付けじゃない♡》


(そんなフレンチなものじゃ無いだろこれ⁉︎)



 逃がさぬと言わんばかりに回された両腕で、否応無くも引き寄せられる。



「……ん、はむ……んっ♡」


(ちょっ⁉︎ 熱烈すぎ⁉︎)



 止まる事なくエスカレートするシャリア。


 俺の腰に腕を回して、ぐいぐいと色々押し当ててくる。



「……は、あっ、……あむ……♡」



 ぬるり、とシャリア舌が俺の口の中に入ってきた。



(――シャリア⁉︎ 待って、待って⁉︎)


《ダメです♡ ちゃんと味わって下さい♡》



 唇を重ねたまま、念話で語り合う。



(味わうって、何を⁉︎)


私を・・、です♡》


(にょ⁉︎)



 何か凄い事を言い出したぞ⁉︎



《将来が楽しみね〜♡ こんな娘を好き放題に出来るのよ?》


《はい♡ ナスタに聞きましたよ? ご主人様・・・・はマナが無尽蔵だって……幾らでも出来るって……》



(――『ご主人様』⁉︎)



――って、いや違う! そこじゃ無くて、いやそこもだけど、『幾らでも出来る』⁉︎ 何それ⁉︎



《私はご主人様の物です。しとねで何を命じて頂いても、決して背きません。……その時が来たら、ご主人様の色で思うように染め上げて下さいね♡》



 自分の発言に酔うように、吐息を熱くするシャリア。


 その熱が、口を通じて俺に移ってくる。


――ドクン、と全身が脈を打った。


 10歳の幼い身体……それでも、その内に確かに存在する『雄』の本能が、シャリアの熱に反応する。



《……あんたには『王』になってもらう。今の気質のままじゃ、途中で行き詰まるのが目に見えてるの》


《……だから、私とナスタとで、ご主人様の価値観を変えさせて頂きます》


(……王って、な……に、?)



 熱で融解した脳が、辛うじてその疑問を吐き出す。



《……何れ判るわ。シャリア?》



 ナスタの指示で、シャリアが離れた。



「ぷはっ、……はぁ」



 文字通り息つく間も無かったので、酸素が足りない。


 呼吸を整えながらシャリアを見ると、ちょっと頬が赤いだけで、他は堂々としたものだった。



「では、参りましょうか、……ご主人様♡」



……もの凄く問い質したいが、今はリリアが先だ。



(帰ったら絶対説明してもらうからな!)


《ええ、ちゃ〜んと説明してあげるわ♡》



……どうやら、説明する気はあるらしい。



(何で、ここの住人は色々と順番が逆なんだろう……)



 取り敢えず、後だ。これに気を取られて救出に失敗しましたとか、目も当てられないし。



(…………う、……)



……流れ的にこのまま出発したいところだけど、



(……シャリア)


《……? どうされましたか?》


(…………《昇華》して)



 頭の中がピンク一色でどうにもならなかった。







 階段を降りて、下で待ちぼうけていたレドルと合流する。



「……随分と遅かったな?」


「……すいません。直ぐに出ます」



……まだ身体が熱いけど、無理矢理にでも思考を引き戻す。



(俺はこれから人質救出に行くんだからな? さっきのは無し! 集中! 考えちゃダメ!)


《難儀なやつね〜》



 一体誰の所為だと。



 騎手はレドルだ。先に乗ったシャリアの手を掴んで、馬車に入る。



「……乗ったな? 出すぞ!」



 気合いの入った掛け声と共に、馬車がゆっくりと動き出した。 


 昼間のこの時間に、馬車を全速で走らせる訳にもいかない。そんな暴走車、領民の目にも強く映るだろうし。


 車輪と路面で、のんびりカラカラと鳴る車輪の心地良い音に耳を寄せて、心を落ち着かせる。


……この馬車は『西街門』に向かっている。レドルの提案だ。



「……本当にノーチェックで通れるんですか?」


「ああ、間違いなくな。……ジーグには貸しがある。ソギルが居なけりゃ、押し通れるさ」



 トズは、ユーシャに連れられたリリアを偶然見かけて、それから遠巻きに尾行していたそうだ。


 西の十字路で、大人2人と子供2人の集団と合流。


 子供2人の方は不明だが、大人の方はノードとソギルらしい事がわかった。


 そして、その子供2人とソギルは、北に向かったらしい。



「……おそらく、狩りの分担だろうな。全員で南に行かなかった理由はわからんが、『*ソギルが戻る前に*』西門を抜けて、そのまま南に下りゃあ、組合の許可無しで森に入れる」



……とまあ、そういう事である。



(ジーグさんってば、どんな貸し作ったんだろ?)



 興味があるけど、聞いてはいけない気がする。

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