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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第二章 ~『原点』~
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『教育倫理』

 玄関に届けられた手紙にじっくりと目を通す。



――――――――――――――――――――

倭人の娘は預かった

返して欲しければ紫石を持って

南の森までアーリス団長1人で来い

――――――――――――――――――――



 倭人の娘とは、やはりどう考えてもリリアだろう。


 リリアではないという可能性もかろうじてあるが、いずれにせよ『行かない』という選択肢は無い。


 石の色は心底どうでもいい。


……ただ、誘拐犯の指定した南の森は、普段禁猟区と定められている場所だ。


 余程の事情がない限り、入る事は許されない。



(どうやってそこまで行く?……ったく、隠れ家にするにはうってつけの場所だな。確かに)



 動物の保護を目的とされた区域なので、人間が踏み荒らす事を極力避ける配慮がされている。巡回も最小限に留められていた筈だ。



(……ナスタは何人まで同時に処理出来る?)


《……アレ・・の事よね? 3人は絶対、5人がギリギリってところかしら?》


(南の森に使われてない管理小屋とかあんのかな? 其処を占拠した? ……室内戦想定だと、3人だとちょっと厳しいか? 屋外なら準備次第で無双出来るんだけど……。いや、ん〜な事よりどうやって門抜けよう……)



……と、そんな感じで、あれこれと考え込んでいると、



――いきなり玄関が開いた。



「邪魔するぞ、アーリス団長は……お、居るな」



 ナウゼルグバーグ戦の時にランフェスに紹介された、外部登録者のレドルが入ってきた。



「にょぬば⁉︎」



 超びびって飛び退く俺。


(ナスタ⁉︎ サーチはどうした⁉︎)

《あの男捕捉しとけって言われたし⁉︎》

(そうでしたね⁉︎)


 パニクる2人。



「……そんなにびびらんでも良いだろうがよ」

「ノック!!」

「ああ、すまんな。鍵が開いてたからよ」

「順番が逆では⁉︎」

「気にすんな、大して変わんねえだろ?」



 大違いである。



「……へぇ、取り込み中か?」



 俺の腰の長剣を顎で指しながら呟くレドル。



(あ、やべ……)



 部屋着に長剣である。違和感が半端ない。



(う〜ん、どうやって誤魔化すか)



 言い訳を考案していると、無防備な俺の手から、レドルがヒョイっと手紙を引き抜いた。



「あっ、ちょっと⁉︎」


「…………随分と素敵な招待状だな?」



……駄目だこりゃ、観念するしかないな。



「センスのカケラも見当たらないので、ちょっと書き方を教えに行こうかと……」


「ククッ、本当に面白い子だ……手伝おうか?」



……どうしよう? まだどう行動するか考え中だ。



(あちらさんが何人くらい居るのか、そこの男以外はわかって無いし………………そこの男⁉︎)



 手紙を持ってきた男は、通り向こうの路地で待機中だ。……何故?



――『監視』に決まってる!



(ナスタ! あの男は!!)


《え? まだあそこに(手の位置! 紋話!!)ッ⁉︎》



 俺の次の行動を仲間に連絡する係だろう。


 レドルが来たのは奴にも見えている筈だ。直ぐに紋話で仲間に伝える可能性は高い。



《今右手を上げたわ!》

(止めろ!)

《どうやって⁉︎》



 俺とは違い、他のやつは『発声』しなければ紋話出来ない。



(『口の中に風でも送り込め』!)

《『わかった』!》



 上を向いて、口の前で手をバタつかせる男のシルエットが見える……止められたかな?


 傍から見たらシュールすぎるが、人目を気にして路地の奥にいるので、通行人にはまだ気付かれていない。



「……レドル。向かいの路地に、口を開けてあわあわしてる人が居るので、ここに連行して下さい」


「――よく分からんが、了解だ!」



 一瞬怪訝な表情を見せたが、ニヤリと笑って直ぐに行動に移ってくれた。


 乱暴に玄関扉を開け放ち、そこから飛び降りて急行したように見えたけど、大丈夫かな?



「……ま、いいか」



 帰ってくるまでに次の準備でもしておこう。




 使っていない空室のドアを開けて、家具一式が揃っているのを確認する。


 不浄箱を開けて、部屋の中央に。


 他の机とかは、出来るだけ端に寄せる。


 次は壁だ。


 コンコンと叩いてみる。


……意外に響かないな。



「ナスタ、アスガンティアの防音ってどうなってる?」


「どう? って……マナで囲われてる部分は音が漏れないわよ?」


「そうなの⁉︎」


「建築の時の紋章陣が、その家の維持に必要なマナを、領主から受け取る為のものなの。微弱な結界みたいな物ね」



 そういう事か。


……だとすると建具周辺が『穴』になるな。



「……何してんの?」


「準備。……あ、ナスタ。俺の中に戻っとけ」


「別にいいけど、何で?」


「他の奴に姿が見えるだろ?」



 あっちの勢力に、ナスタの存在を示す必要はない。


 街中でも出していなかったし、領民で知ってる人はいないんじゃないかな?


 奴等にもまだ知られていない筈だ。



「…………私、普段は他の人に見えないわよ?」


「……………………」



 固まった。



「はぁ⁉︎」

「言ってなかった?」

「聞いてないぞ⁉︎」



 ナスタが言うには、精霊の『顕現』は姿を現せ、という主人の命令である為、他者の視界にも映るが、妖精は自分の意思なので、その辺の自由が効くらしい。


 そして、契約者の俺から姿を隠す事は出来ないそうだ。



(……つまり、今まで俺は盛大な独り言を?)



 自覚せぬままに、4ページ目が追記されていたというのか……泣きそう。



《安心なさいな、そんな恥はかかせてないから》



 俺と話していた時は、ちゃんと他の人にも見えていたらしい。よっしゃセーフ! 4ページ目セーフ!



「――団長さんよぉ、連れてきたぜ!」



 盛大に安堵していると、レドルが手紙の男を連れて帰ってきた。



(あらやだイケメン)



 俺から見ても、端正な顔立ちをした男に見える。俳優とかやれそう。


……ちな、隣のレドルもナイスミドルである。俺のように、『一歩間違えば女』なんて形容は決して付かないだろう、ちくせう。



「んで、どうすんだ? コイツ」



 この男がどちらの陣営なのか、レドルにもおおよその察しは付いているらしい。両腕をガッチリ極めて離そうとしない。



「その不浄箱に座らせて、縛り付けて下さい。今縄を持ってきます」



 自室の狩りの装備から縄をゲット。戻ってレドルに渡す。


 観念したのか、特に抵抗もせず男は拘束された。



「…………よっと、完成だ」


「有難う御座います」



 10歳で成人を連行して縛り付ける何て無理だ。本気で助かった。



「大した作業でもねえ、次は?」


「その前に……」



 と、レドルに向き直る。



「レドルはどうして此処に?」



 来訪の要件を聞いて無かった。



「……ナウゼルグバーグ戦で初手気絶なんつー、みっともない戦果をあげたオレに、それでも満額の報酬が支払われた。……礼を言いに来たんだよ。他の奴らの分も代表してな」



 他の形で返せそうだ、何て言葉を添えて語るレドル。何だこのおっさん、カッコいいぞ。



「ギルドを通さずに依頼って出来ます?」


「……可能だ。あそこは仕事を斡旋しているだけで、俺たちを専属に雇用している訳じゃないからな」


「……他言無用とか出来ます?」


「……報酬次第だな」


「荒事とかは?」


「報酬次第だ」



 OK。



「では、レドル。報酬は言い値をお支払いしますので、他言無用で荒事をお願いします」


「………………」



 何を言われたのか? と、タップリ思案したらしきレドルは、数秒の沈黙の後、豪快に腹を抱えて笑った。



「――イイなぁ、実にイイ! オーケーだ。その依頼をレドルの成名で受領する。報酬は全額後払いで構わんぞ」


「有難う御座います」



 自分でも「直截すぎるかな〜」とは思ったが、案の定だったらしい。笑われてしまった。



(……仕事の内容で引かれなきゃいいけど)



 けど、まあ、リリアを誘拐した犯人の仲間だ。



――『()()()()()()()()()()()()()()』。



「それで、雇用主さんよ。仕事の内容は?」



 部屋の端から椅子を持って来て、男の正面に陣取り、レドルに指示を出す。



「この男の指を折って下さい」


「………………」


「………………」


「………………」



 無音。


 最初にそこから脱却したのは、指折り宣言されたその男だった。



「――な⁉︎ おい、ふざけんなよ! このガキ、何を……」

「取り敢えず一本だけお願いします」


《アーリス⁉︎ あんた何を……》

(ナスタは音が漏れないようにドアの外で風を回せ)


「……いいのか? 声が響くぞ?」

「一階に住人は居ませんし、路の奥にある家です。気にしないで下さい」



 精霊建築で見たが、アスガンティアの外壁は石材と木材をマナ・・で貼り合わせた物だ。


 更に、この部屋は外壁に接していない内部屋で、窓なども付いていない。


 ドアなどから響く振動の伝播を風で遮れば、そうそう音は漏れないだろう。



「折る前に聞いておきますが、この手紙は誰かの依頼ですか?」



 一応確認。


 誰かに頼まれた無関係な人の可能性も、無い訳では無いし?



「はぁ? 何だよ⁉︎ そんな手紙、俺は知らねぇよ! 早く解放しろ! こんな事して……」



 嘘吐き発見。



「折って下さい」



 レドルが男の背後に回る。


 男が青褪めて、抵抗を強めた。



「おい⁉︎ おい!! ふざけんなよ⁉︎ 俺は無関係の一般人だぞ! 止めろ!!!」



〈ポキッ〉



「がぁぁあああぁぁ!!!?!!?」



 男の絶叫めいた悲鳴を冷静に見つめながら、チラッと時刻を確認する。



[11:18]



 早くリリアを助けに行きたいし、後10分もすればシャリアも帰ってくるだろう。


 時間に余裕は無い。


 かける気も無い。



「……隣の指も折って下さい」



 早急に、この男から全て・・の情報を引き出さないと……。



(何本折れば、心って折れるかな?)



 男の悲鳴を聞きながら、前の世界の創作物から得た拷問・尋問のノウハウを引っ張り出す。



(……ナスタの言う通り、教育倫理が甘いかも知れないなぁ……前の世界)



 性的表現よりも先に、こっちを規制すべきじゃないかな?



 実際にやった事なんか無いけど、結構知ってるわ、俺。

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