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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第二章 ~『原点』~
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『センスの無い手紙』

 俺が想定する『最悪』の能力。出来れば敵対したくない属性。



――「精神作用だと、『木』か『水』ね」――



 ナウゼルグバーグ戦を経験しなければ、俺もここまで本格的に警戒はしなかっただろう。


 相手の意識に、強制的に空白ブランクを作って行動を阻害するような敵。


 アスガンティアには居るし、有るのだ。



――『精神に作用する異能』が。



 魅了、暗示、幻覚などの、思考を奪うような能力、またはそれに類する力を有した存在。


 強大な魔法も、無二の道具も、特性チートも、使うのは自身の意思だ。


 その意思を操られてしまえば、用を為さなくなる。特性チートを丸ごと奪われると言っても過言では無いだろう。


 普通なら対処のしようがない能力だけど、ナスタが居れば、それが叶う。






 ナスタは俺が睡眠ないし、昏睡状態でも平気で活動している。


 これは、ナスタは俺と1つの身体で共生していてるというだけで、俺の精神や身体の状態に一切左右されない、完全に別個の存在である事の証左であると言える。



 仮に、俺が精神支配のような力の影響下に落ちたとしても、『ナスタには関係ない』。


 薬物などで肉体を支配されても、『ナスタには通用しない』。


 俺を拘束しても、昏倒させても、何処かに閉じ込めても、『ナスタは自由のままだ』。



――風を操る術を、俺は知らない。


――ナスタを支配する術を、俺は知るつもりがない。



 だから、俺をどうこうしても、この『天災』を止める事など出来ない。





「……とゆ〜訳だ。頼むぞ、専属ボディーガード!」


「…………あんたって、本当に…………」



 呆然、といった感じで呟くナスタ。



「あ〜、もう! もう!……いいわ。なら、警戒すべきは『木』の方ね」



 なんかちょっと葛藤があったらしいが……まあいいや。



「『水』は問題無し?」


「水は医療方面で使われる属性だから、研究も専らそっちに比重が傾くのよ。《昇華》も、本来は患者の欲求を解消する目的のものの筈よ」



 毒薬変じて薬となる、何て言葉もあるし、ひっくり返ったら的な意味で油断は出来ないが、木よりは警戒指数低めかな?



(つーか、シャリアに聞いた方が早いな)



 今度詳しく教えてもらおう。



「『木』がヤバイ根拠は?」


「罪人から情報を引き出す時に使う、精神に働きかける《審問》って精霊術があるわ。私が知らないだけで、多分他にも色々あると思う」



……あるだろうなぁ。


 この手の探求は人間の得意とするところだ。絶対にある。



「……でも、精霊術よ? マナが続く間だけだから、永続した効果は見込めないわよ?」



 そこまで警戒する必要あるの? と、呑気にのたまうナスタ。何言ってんですかね、こやつは。



「んなもん、『俺に出させればいいだろ』?」


「――あっ⁉︎」



 俺が背負うべきリスク。大きすぎる力の代償。


 他の人間であれば一時的な効果で済むそれは、俺に対してだけは永続化する事が可能になるのだ。



 その危機感が伝わったのか、「ふふふ……」と笑いながらる気を漲らせるナスタ。やだ、怖いんだけど……。



「……良いわ、引き受けてあげる。私に任せなさい! 絶対にあんたのマナを守ってあげるから!」


「マナかよ⁉︎」



〔 俺 < マナ 〕



 ナスタの中ではこんな感じらしい。


……流石だ、涙も出ねえ。



「……まあ、いいや。それで頼む」


「ええ! ど〜んと…………あら?」



 入り口、玄関の方を見て首を捻るナスタ。



「どうした?」


「シャリア?……じゃないわね。アーリス、来客みたいよ?」



 風のエリアセンサーに誰かが引っ掛かったらしい。



「………………子供か?」


《いえ、違うみたい。大人で、多分男の人》


(……警戒しろ)



 急いで矢筒と赤石を自室に片付ける。



《……え? 何で?》


(今日ここに来る知り合い・・・・に心当たりが無い)



 この家の玄関は行き詰まったT字路の、中程に位置する階段を上がった所にある。一階に住人は居ないので、この路地を使用する来訪者は、俺の知人に限定される。



――シャリアなら判別がつく。


――カールネスは明日の予定。


――ランフェスは今朝出立した。


――騎士団の団員は子供だ、ナスタなら直ぐに気付く。



……さて、『誰だ』?



(ナスタ、一人か?)


《……ええ、輪郭から成人の男性までは判るわ》


(装備は? なんか持ってる?)


《……武器の類は携帯してないみたい。でも、懐に何か忍ばせているかも知れないわ》



 判別出来るのは風が当たる範囲のみ。衣服の内側はその対象から基本外れる。



(……この間教えた『子供騙し』、いけるよな?)


《あのエグいやつね。出来るわよ》


(エグい言うな。発祥は子供の遊びだぞ?)


《……あんたの世界の教育倫理はどうなってるの?》



 すごい言われようである。大人でも見かけたら止めるぞ?


 やっても小学校低学年までだろう。高学年になると、その行為の危険性に察しがついて、躊躇うようになる……んじゃないかな?



 取り敢えず、私室で長剣を装備。ドアを半開きにして、様子を窺う。



《……階段………………来たわよ、玄関前!》



 玄関扉には当然鍵が掛かっている……が、アスガンティアに存在する物理的な鍵は、先端部にちょっと山が付いた『スケルトンキー』とかいう漫画でしか見た事がないようなやつだ。ピッキングは簡単だろう。


『紋章錠』なんてのもあるそうだが、余程の施設じゃないと採用されないらしい。……解錠に毎回金マナでも掛かるから……かな? 多分。



《……何? しゃがんだわよ?》


(……ピッキング中か?)



 人の入らない路地にある2階の扉。他者の視線を気にする必要が無く、ゆっくり作業が出来る場所だ。その手の者から見れば、さぞ魅力的だろう。



(武装も無いなら、物取り確定か?)



 入った瞬間を狙うか……いや、ちょっと様子見た方がいいな。



《いいえ、離れていくわ…………帰った?》


(はい⁉︎)



 予想外、何しに来たんだ?



《…………本当に帰ったみたい、通りの向こうに行っちゃったわ》



……意味不明。



(ナスタ、風で追跡出来るか?)


《……限界はあるけど、風を強めれば届くと思う》


(『やれ』、行き先が知りたい)


《『了解』》



 何も告げずに立ち去った訪問者。


 それを追跡する為に、俺の指示に従いナスタが風を繰る。



――次の瞬間、視界にもう一つの世界が重なった。



(おおぉっ⁉︎)



 紫の濃淡で全てが構成された別世界。


 紫の風が、ここら一帯の景観を浮き彫りにする。



(すっっげえ!! こんなんなるのか!!!)



 ナスタが操った風は、壁などの遮蔽も関係なく見る事ができた。


……いや、『見る』というのは少し違うかも知れない。目を閉じても見えるのだから、『透視』の方が適切な表現だろうか?



(ゲームみたいだな、面白……って言ってる場合じゃないか。え〜と……)



 目を瞑った方が、壁などの遮蔽が映らず、紫の世界に集中出来る。



――サーモグラフィーに似た紫の濃淡の世界。


――風の波が向かう先。


――紫色のソナーが集中する人物。


――ナスタが追う男。


――その男の行き先を注視する。



《……通りの向こうの路地で止まった……?》


(…………わからんな。あの位置なら風を弱くしても捕捉出来るか?)


《出来るわよ〜、悟られない程度に監視する?》


(する)


《了解〜》



 風を強くしすぎると、その男だけじゃなく領民にまで違和感を持たれる。ソナーの使い過ぎには注意せねば。



(……玄関前、すぐに離れた……)



 何となく私室から出て、玄関に向かう。



(しゃがんだ……何か仕掛けた?)



 或いは目印でも付けられたのだろうか?



「ナスタ、玄関の外に異物みたいなのはあるか?」


「…………無いわ、平気よ」



 どれ、と鍵を外して、ドアノブに手を掛けたところで、気付いた。



「……手紙?」



 扉の下の隙間に、白い封筒の端がちょこんと見える。



「……何かの連絡かしら?」


「それなら投書箱の方でいいだろ?」



 玄関扉に付いてる投書箱をスルーして、その下のドアの隙間に突っ込んでる。不自然すぎ。



「……取り敢えず、読んでみるか」



 封も宛名もない封筒。


 その中から手紙を出して、カサリと開いた。



――――――――――――――――――――

倭人の娘は預かった

返して欲しければ紫石を持って

南の森までアーリス団長1人で来い

――――――――――――――――――――



 簡素な一文。……ぶっちゃけ、思う。



「……センスねぇな」


「第一声がそれ⁉︎ これ、リリアの事じゃ無いの⁉︎」



 十中八九リリアだろう。




……誘拐されたらしい。

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