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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第二章 ~『原点』~
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ザク『強行』

 ラズダで活動していたザク達は、仲間の一人が失敗した為に追い立てられ、山に逃れた。


 フロードとフロード・ラズダは、森と山脈によって完全に分断されている。管轄も、この山を境に分かれているのは調べが付いていた。


 万が一に備え、山越えに必要な物資と、精霊使いの確保を済ませていた周到さが功を奏し、追っ手から逃れる事に成功。逃れた先……『フロード側』の山の麓の穴蔵で、3ヶ月の間、何もせずに潜伏を決め込んだ。


 ラズダからフロードに情報が流れていたとしても、山越えが叶わず『のたれ死んだ・・・・・・』と判断されるには十分な時間だ。




 仲間のトズを街に放ち、情報を集めさせ、仕事に当たりを付ける。


……程なく、決まる。


『上物の脳天気なガキが多い』。


 攫って売り捌けば、十分な金になる。


 容姿と器量次第では、自分達で飼ってもいいだろう。


 幸いなことに、上の連中の頭は堅いようだが、軍事には疎い街らしい。


 そして、そのガキ供は定期的に、集団で無邪気に狩りに出かけるそうだ。


 都合よく誂えたような好条件に、目が眩んだ。


……その所為だろう。油断を生み、欲をかいた。






 ラズダの最後の仕事で拝借した魔獣、『マイントリアーシュ』。


 片手に乗るような小さい魔獣で、自らが危険に陥った時、その原因となる対象の精神を狂わせるらしい。


 滅多にお目にかかれない、『幸運の魔獣』とも呼ばれる珍獣中の珍獣だ。


 間違いなく、赤石の値は付く。二度とお目にかかれないだろう。


 だから、売る前に使ってみる事にした。


 使用感次第では、今後の仕事に使えるかも知れない。


……だが、ガキ供は結界柱の内側でしか狩りをしない。このままでは結界に阻まれて、マイントリアーシュを中に入れる事が出来ない。



――柱を破壊し、結界を消す。



……ここまではよかった。



『ヤツが現れなければ』。



 無理に戦闘して、犠牲を出すのも馬鹿らしい相手。


 まさに『不慮の死神』だ。予定が狂って、何の稼ぎにもならなかった。






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






 フロードの南、森を掻き分けて進んだ先の山の麓。


 マーグの巣穴を改良し、広げて作ったアジトに、6人の男達が集っていた。



「……かしら〜、やっぱり食いませんぜ、コイツ」


「――チッ」



 手下のアダの情けない声に舌を鳴らす。



「ここまで飢えてんのに、まだ龍脈をご所望かよ……いい御身分だな、クソがッ!」



 魔獣であるマイントリアーシュの食料は、マナだ。


 それも、『龍脈のマナ』で無ければお気に召さないらしい。他のマナには見向きもしない。


……想定外甚だしい。


 まさか、こんな高級嗜好の珍獣だとは、思いもよらなかった。


 アジトを移すほどの犠牲を払って盗んだ魔獣だ。飢え死にさせて失うなどあり得ない。


 おまけに、女の深紋を消すために保管していた貴重な龍脈のマナだったというのに、その全てを平らげられたのだ。


……是が非でも金に換えなければ。



「……トズに連絡を取れ、明日動くぞ」


「……結界柱は直されちまったらしいですが、コイツはどうするんで?」


「こんな状態で力使わせて、そのまま死んじまいでもしたら、元も子もねえだろうが! 使えるかよ……今回は普通にやるぞ」



 3ヶ月の潜伏とマイントリアーシュの所為で、蓄えていたマナをかなり浪費した。いい加減稼ぎに出なければ身動きがとれなくなる。



「……繋がりました。……トズか? 明日動く……ああ、珍獣殿が限界でな。飢えて死ぬ前に、アジトを移して手放したい」



……困った事に、本気で上層部連中の頭が堅い。


 この街で売り捌く事も、餌の龍脈のマナを手に入れる伝手を作る事も、見込みが薄い。


 早々に何人かを攫って拠点を変えた方がマシだ、とザクは判断した。



「……今はこの間の魔獣騒ぎで、子供の狩りに大人の同伴が義務付けられているそうです」


「――ッたく! あんの死神は!」



 始末された後も面倒を振りまきやがる!



「……余裕がねえ、強行だ。付き添いの大人は面倒そうなら殺せ」



 死体に価値は無い。それどころか、手間が増える事すらある。


 殺しは手っ取り早いが、いざ捕まった時に言い逃れが出来ず、追跡も厳しいものになりがちだ。


 厄介この上ないが、こっちにも余裕が無い。間が悪かったという事で、邪魔な奴は速やかに消えてもらおう。



「……トズ、強行する。いい獲物が居たら連絡を寄越せ」



 ベイが紋話を切った。



「……街の方は随分と動きが激しいようですな」


「領主のガキがおっんだからだろう? 勿体ねぇなぁ……」


「ああ、俺たちで『保護』してやる予定だったのに……死んじまったら『お駄賃』のお願いが出来ねえじゃねぇか」



 ザクは部下たちの会話に、嘆息を混ぜて内心で同意した。


……本当に惜しい事をした。レーゼルとかいうガキは領主の直系の息子でありながら、護衛も付けず、頻繁に狩りに勤しむという素敵な獲物だった。


 トズの連絡から絶好のタイミングで行動に出たというのに、まさか不慮の死神と鉢合わせるとは……。



「……どこが幸運の魔獣だよ……食った分、ちったァ役に立ちやがれ」



 籠の中のマイントリアーシュに毒突く。


 反撃で精神を狂わされたら敵わないので、迂闊に八つ当たりも出来ない。



「チッ……寝るぞ、明日は何が何でも『収穫』する」



 状況が切迫詰まったものだというのは、部下たちにもわかっているのだろう。


 各々が頷き、明日の準備を始めるのを尻目に、ザクは寝床に移り、身を横たえた。

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