表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第二章 ~『原点』~
70/216

『紋話』

 薄暗い部屋の中。


 窓から差し込む太陰の光で覚醒した。


 のぼせてぶっ倒れた俺は、どうやら私室まで運ばれたらしい。


 多分……というか、ナスタじゃ俺を持ち上げる事など出来ないだろうから、間違いなくシャリアだろう。


 どこまでも迷惑かけちゃってるなぁ…………まあいい。……いや、よくは無いんだが、それは置いておいて、そんな事よりも問題は……。


 あの状況、土壇場になって、この男ってば……、



――『日和った』のである。



(いやあああぁぁぁ!!!)



「俺の嫁ぞ?」とか、「他の奴に裸は見せぬぞ?」とか幾度となく思っておきながら、いざその時になってみれば、あの有り様である。情けない事この上ない。


 穴があったら入りたいが、そんなものは無いので全力でシーツに包まった。



(何ぞあれ⁉︎ 何ぞあれっ⁉︎)



 失神と同時に、記憶もすっぽり抜け落ちていればよかったのだが、残念ながらバッチリ覚えていた。


 身体は10歳でも、中身は20歳の成人男子が、


 8つ下の、


 女の子に、


 壁ドンされて、



……落とされた。



(ノォぉぉぉ! ヌォぉぉぅ!!)



 内心で咽び泣く。


 名前が女だからといって、配役まで譲る事はないだろうがよ⁉︎


 マジでやり直したい。


 なぜ、俺は時間逆行的な特性チートを要求しなかったのか。


……リトライ案件だろ、これ。


 黒歴史3ページ目である。




 風の属性で、上手いこと時間跳躍出来ないかな? とか無駄なトライアル&エラーを繰り返していると……、


〈バサァ!〉


 包まっていたシーツが、『風』で剥がされた。



……こんな事が出来るのは、一人しかいない。


 そう、


 俺専属の精神ぶっ壊し屋メンタル・ブレイカーである。要らないから帰って。



「あら、アーリス、もう起きたのね♡」


「やめて!」



 早速である。


 手加減とか配慮とかをどっかに落っことして、代わりに別の何かを詰め込んだ、妖精のナスタさん。


 まさに大魔王の威風……逃げられない!



(――くっ、どうする⁉︎)


[泣き叫ぶ]

[ひれ伏す]

[開き直る]


(碌な選択肢が無ぇ!)



 この時点で既に結果が見えたようなものだが、取り敢えず開き直ってみる。



「ふ、ふふふふ……な、何だ、ナスタ! 何かも、文句でもあんのか⁉︎」



 動揺しまくっていた。しかも何故か喧嘩腰。



「ううん♡ とっても男らしくて、素敵だったわよ♡」



……駄目だ、勝てそうにねえ。



()()()()()♡」


「あああぁぁぁ……!!!」



 崩れ落ちる。


 再起不能、クリティカルだった。



「ああ、目を瞑っても思い出せるわ〜♡」



 窓の外の太陰に身体を向け、祈るように両手を握り合わせて、陶酔しながらナスタは語る。



「何を言われようとも己を曲げず、アーリス姫に詰め寄るシャリア王子……素敵だった♡」


「ぐはっ!」



 吐血級の追撃。



「……とまあ、冗談はこれぐらいにして、色々と目が覚めた?」


「何がだよ⁉︎」



 寧ろ、精神的に致死のダメージを背負った気がするんだが……。



「明日がどうなるか何て、そんなの誰にもわからないのに、『将来』なんて曖昧極まりないもので逃げる様な奴には、いい薬だって言ってんの」


「――――っ」


「……自覚なかった?」



 歯噛みする。


 実際、そこまで考えていなかった。



「自覚したんだから、次の娘からはもっとちゃんとしなさいよ?……基本的に、異種族の貴族の娘は『肉食』なんだから」


「…………はえ?」



 今何か不穏当な単語があったような……。



「……わからない? 異種族が貴族に嫁ぐのは、敷居が高いのよ? いい人が居たら色仕掛けでも何でも使って、速攻で落としに掛かるに決まってるじゃない」


「うぉい⁉︎」


「あの程度で、コロっと頷いてるようじゃ、部屋が幾つあっても足りない……あれ? 別に構わないかしら……」


「いや、構えよ⁉︎」



 何考えてんだこの妖精。



「ま、取り敢えず食事になさいな。今シャリアに温め直すように言ったから」


「……そうするか。…………ん?『今言った』?」



 まさか、気配を殺して控えていたのか? と、後ろを振り返るが、そんなことはなかった。



「婚約者同士は紋話が無条件で繋がるわ。そこに私が割り込んでる感じ」


「ああ、成る程」



 昼にそんな話題があがったな、そういえば。しっかり忘れていた。






 副団長候補3人と話していた時のことだ。


 今後の連絡の為に、紋話の契約を結ぼうかと思ったら、ランフェスに『にこやか』に止められたのである。


 俺としては友人間のつもりだったのだが、軍事組織の情報管理規則に抵触するらしい。



 政治に関与の大きい貴族の紋話契約は、平民に比べて厳しい制約が課せられている。


 軍事組織に属する者は、開示される情報の深度も関わってくるので、上下間の契約は更に上位の許可が必要になるそうだ。


……領主直下の騎士団の団長の上司。つまり、俺の場合3人と紋話の契約を行うならば、領主の許可がいるのだ。とても面倒くさい。


 加えて、情報漏洩を危惧しているのか、人数の制限まであり、直下の階級は3名までとなる。副団長が3人なのは、これが理由だ。因みに横は制限無し。


 正式に発足してからの方が手間が掛からない、との事なので、結局ユーシャ達とは繋げていない。


 後で婚約するとわかっているから、リリアともまだなのである。






……とまあ、以上のような理由から、結局誰とも契約していなかったので、俺の紋話第一号はシャリアになった。



「……ん? ちょっと待て。俺とシャリアのホットラインに、割り込んでいると申されましたか?」



 いい度胸である。



《私とシャリアじゃ繋げる訳がないんだから、それ以外にやりようが無いでしょ?……ね、シャリア?》


《……アーリス様?》


「うわぅっ⁉︎」



 いきなり脳内トークにシャリアの声が入ってきた。



(あ〜、もしもし? シャリアさんでしょうか?)


《あの、アーリス様?『さん』は(ああ、ごめん。つい……)》



 またやらかしてしまった。



(まあ、本人なのはわかった。でも、紋話って片手を耳に当てて話すものじゃないの?)



 婚約者が相手だと左手、それ以外は右手を耳に当てて、『発声』して話す筈だ。念話が出来るなんて、聞いたことがないぞ?



《紋話も、突き詰めればマナの操作だもの。私が仲介すれば楽勝よ。手も当てなくて良いわよ?》


(マジで⁉︎ シャリアも手当ててないの?)


《いえ、左手が熱を持ったので、当てています》


(離してみて)


《……離しました。聞こえますか?》


(聞こえとります。……ナスタ、手を当てずに話せる奴って他にいる?)


《ん〜……、動作と連動してるって常識が蔓延してるから、居ないんじゃない? 流石に断言は出来ないけど》


(シャリアはどう? 聞いたことある?)


《……ありません。私も断言は難しいですが……》


(ほうほう)



……面白いな。やるかどうかはさておき、『フェイク』に使えそう。



(んじゃ次。発声せずに紋話してる奴は?)


《……成る程、そういう事ね。『常識』で持ってる人は居ないわ。断言してあげる》


《――ッ、……はい、断言出来ます。今の私達を見て、『紋話している』と思う者はいないでしょう》



 察しがいいな、二人とも。



(繋ぐ時はナスタに頼めばいいのか?)


《ええ、頼まれてあげるわ》


(おーけー。後は……左手だな)



 淡く輝く紋章を眺める。これを隠せれば、完璧に周囲を騙せる訳だ。



《あの、よろしければ今度グローブを作りましょうか?》


(お、いいねぇ。頼める?)


《はい! あ、夕食が温まりましたので、こちらにいらして下さい》


(了解)



 左手の紋章が消えた。ナスタが紋話を切ったのだろう。



「うっし、飯を食いに行くか!」


「……その前に服を着なさい」


「……ぬぉう⁉︎」



 着替えまではやってなかったらしい。当然か。



 真っ裸だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ