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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第二章 ~『原点』~
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ユーシャ『明日の予定』

 見張り塔は、およそ5階の高度を誇るフロードで最も高い建造物だ。


 一般の家屋とは異なり、全てが石材で建築されていて、いかにも軍事施設といった印象が強い。


 その為、子供のオレ達から見ると、随分と物々しいというか、近寄り難い雰囲気のある場所だった。






「やっぱこっからの眺めは最高だな!」



 見張り塔の最上階。


 夕暮れで赤く染まり始めた展望櫓から、下の方を眺めながらベインが声をあげる。



「僕もこの歳で登れるとは思ってなかったよ」


「それな!」



 ニックの発言に、ベインが大仰に賛同する。


 近寄り難いというだけで、見張り塔に対する子供達の関心は強い。


 5階建という高さは、無条件で興奮せざるを得ないだろう。


 見張り塔での研修が終わる度に、展望櫓に集合するのは約束のようなものになっていた。



「ここから獲物を狙える人もいるんだってさ」


「化け物かよ」


「ユーシャなら出来るんじゃないの?」



 ここに居る3人は、弓術の達者な部類に入る。


 それでも、的が豆粒ほどにしか見えなくて、高所であるが故の風の影響も考えると、自信なんか持てる筈もない。



「……まだ無理だな、練習しないと。風の癖が全然読めないから、線が引けない」


「……練習すればいけるとか思える時点で相当だぞ? 俺は絶対無理だ」


「僕も駄目そうかなぁ、とても届きそうにないよ」



 3人で縁石に寄っ掛かって、下を眺めながら話す。



「…………レーゼル、弱くなってた?」


「アーリスだろ、気を付けろ」


「……今はいいでしょ?」


「階級と一緒だ、お前が言ったんだぞ? いざという時にボロが出る」


「……そうだね、ゴメン」


「…………ま、わかるけどな〜、隙だらけだった。……なぁ、ユーシャ、隣に居た長耳族エルフの女の人って誰だ?」


「ソシエって名前の、アーリスの専任侍従」



 こういう時は本来なら成名を教えるのだが、シャリアの名は使えないらしいから、幼名の方を答えた。



「あの人がアーリスの護衛なのか、……なら安心だな」


「何で?」


「多分すげえ強いぞ、あの人」


「……体捌きがレイジェルに似てるんだよな〜」



 レイジェルの動きを更に錬磨したような印象だ。



「あ! わかるわ、それ」


「じゃあ、得手は短剣?」


「多分そうだろ? 執事や侍女は懐に隠せる物じゃないと駄目らしいし……」



 護衛職の基本だと聞いたことがある。ソギルのおっさん経由だっただろうか?



「うお〜〜ッ! 一回手合わせしてみてえ!」


「ま〜た始まったよ」



 ベインの悪い癖だ。強そうな人を見ると、直ぐこんな感じになる。



「相当忙しいみたいだから、多分無理だろ」


「狩りにも行けないみたいだからな〜……。ユーシャ、明日の朝か?」



 ベインに予定を聞かれる。



「ん〜、……かな? そっちに同行者居る?」



 騎士団所属の何人かは、既に親元を離れて仮の兵舎で、一時的な集団生活を開始している。


 現在の住人は8名だった筈だ。ランフェスから当面の生活費は支給されているらしいが、肉の確保は死活問題だろう。



「ニック、どうだ?」


「…………欲しいね。2人同行させるよ。時間はどれくらい?」


「オレ、明日はフリーなんだ。一日中でもいけるぞ」


「なら、午前と午後で分けられる?……備蓄庫が底を尽きそうなんだ」


「ヤバイじゃん⁉︎」



 幾ら何でも消費が激しい。親の目が届かない所為で、歯止めが効かないのかも知れない。



「ベインが食べ過ぎるんだよ……」


「俺だけじゃないだろ⁉︎」


「全く……少しは我慢しろよ? 春先で狩り尽くす訳にはいかないんだからな!」



 今は4月の終わり。繁殖期が始まったばかりの動物も多い。無秩序に狩猟すれば、来年に姿を見せない動物も出てくるだろう。



「狩場は何処なの?」


「遠征組に着いて行こうかと思ってたけど……午前と午後に分けるなら、そうも言ってられないな」


「……ゴメン、1日空いてる子は居ないや」


「いいさ、近場で獲ってくるよ」


「ユーシャが居ると居ないとじゃ、効率が段違いだからな、すまん」


「いいって!」



 やたらと恐縮する2人。食べ過ぎた負い目があるのかも知れない。






「…………こっからでもバドムは見えないね」



 唐突に、ニックが北の方角を見ながら呟いた。



「当たり前だろ、馬車で何日もかかるんだぞ?」



 フロードに限らず、領の東西南北の四方には副領の街がある。


 北がバドムで、南がラズダ。


 西がギベルで、東がレブズだ。


 フロードに道の続いた副領は、バドムしかない。そして、そのフロード・バドムは、ランフェスが治めている街だそうだ。



「ランフェス様が、もうバドムに帰るらしいから、どうなるかなぁ……って」



 今回は多く接する機会があって、色々な話が聞けた。もともと内政に関心の強かったニックは、考え方や手法に、相当感動したらしい。



「……ちょっと帰るってだけで、またこっちに戻って来るって話だったぞ?」


「そうなの?」


「ああ、なんかランフェス様じゃなきゃダメな用事がバドムにあって、それを済ませたらまた戻ってくるって言ってた」


「そうなんだ! まだ色々聞きたい事があるから、話せる時間があるといいんだけど……」



 領主代行と話せる機会なんか、本当ならまず無い。今回はたまたまだ。


 気安く時間がもらえるとは思えないけど、目を輝かせて語るニックを見ると、なんとも否定しづらい。


 ベインと目を合わせて、お互いに肩を竦ませた。



「ま、あんま期待すんなよ? ランフェス様もそうだけど、俺たちもやる事が山程あるんだからな」


「わかってるよ……あっ! 商隊来たみたい!」



 並んで同じところに目をやると、確かに商隊の馬車の一団が見えた。


 直ぐさまベインが伝声管に報告する。



「展望櫓のベインです。北方街道から商隊が来ました」


「――連絡室のホーセルだ。予定通りだな、了解した。……そろそろ刻限だ。お前らも降りてこい――」


「了解です。交代の人が来たら、そっちに戻ります」



 伝声管から離れると、ベインは「そろそろ戻れってさ」と残念そうにぼやいた。



「聞こえてたよ、交代が来たら帰ろうか?」


「そうだね……それじゃあ、ユーシャ。明日はお肉よろしく」


「おう!……って、今度は食いすぎるなよ?」



 気まずそうに視線を逸らす2人を、ジト目で睨みながら釘を刺す。



(……リリアも誘ってみるか。時間があればいいけど)



 領主館に1人残されたことに、膨れっ面でぶーぶーと不満気に怒っていた。


 肉でも振舞って機嫌をとっておこう。


















【人間は足元の石1つでその進路を変える。】


【――布石。】


【1つでも違えれば、最悪この世界(アスガンティア)は終わる。】


【リリアの存在は必須。】


【ユーシャは正路に入った。】


【ここで躓くようであれば、6人目は容認し難い。】


【想定の流れを辿るか。】


【或いは、】




【予想を越えるか。】

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