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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第二章 ~『原点』~
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『1人目の婚約者』

 石を増熱に移してから程なく、



「……もういいかな」



 一度冷めてしまったものを温めなおすだけなので、さほど時間もかからず温かくなった。



(浄化に移すのが勿体ない、と思うのは貧乏性かねぇ……)



 窪みにマナ石を置けば紋章陣が起動する。微量とはいえ、問答無用でマナを消費してしまうのだ。どこかに仮置きする場所があってもいいような気がした。






「アーリス〜、生きてる〜?」



 温めなおしたお風呂の中。


 浴槽の縁に後ろ向きに両肘をのせて、「あ〜」とか意味のない呻き声を上げつつ入浴タイムを堪能していると、ナスタが帰ってきた。



「極楽だ。シャリアは?」



 ナスタがふよふよ移動してきて、俺の肩に乗っかった。



「丁度、夕飯の支度が終わったところだったみたい。今こっちに来るって」


「さようか」



 俺が石を持ってくるのを忘れたばっかりに、シャリアにいらん手間を増やしてしまったな。猛省。



「次は石の認証か……どうやんの?」


「手順としては、さっきの紋章陣にからの石を当てて、紋章を石に複写すればOKよ」


「注意点は?」



 さっきやらかして酷い目にあったから、先に聞いておこう。



「……特に無いわね。あんたがマナを操作しなければ」


「ほむ、ならば良し」



 マナ操作の練習は既に予定されている。それまではナスタに任せよう。



「……お待たせ致しました」



 入り口に背を向けているので見えないが、ナスタと打ち合わせしている間にシャリアが来たらしい。後ろで戸の開く音と声がした。



「いや〜ごめん、持ってくんの忘れてて……」


「いえ……2つあればいいと伺ったので、お持ちしました」


「あ、うん。ありが……」



 受け取る為にくるりと振り向くと、



「とうぃええぇぇ⁉︎」




――何もつけていない素っ裸のシャリアが居た。




「んな⁉︎ ぬえ⁉︎ にょわ⁉︎」


「ちょっと! 耳元で変な奇声上げないでよ!」


「だっだだだって⁉︎」



 素っ裸の超かわいい美少女がいる。綺麗で、別嬪で、フルオープンだ。ピンク色で顔が真っ赤で胸がぷるぷるしてる。



「何で⁉︎ はだっ、はっ、はだっか⁉︎」


「落ち着けってば! 目を瞑って〜」


「はい!」



 ぎゅ〜っと目を瞑った。



「そのまま深呼吸〜」



 す〜っ……プハ〜ッ。



「……どう? 落ち着いた?」


「……無理」



 まだ心臓がバクバクしてる。



「あの、アーリス様?」


(ちょっ、声が良すぎる!)



 風呂場特有の反響で、シャリアの声が蠱惑的に響いた。



(すげえ艶っぽく聴こえる。ぶっちゃけエロい)



 目が開けられません。


……しかし、何ということでしょう。私ってば無意識に脳裏焼付したらしく、目を閉じていても鮮明に思い出せてしまいます。



《……アーリス? 頭に中にシャリアが居るんだけど……》


(すまん、許せ。無意識のうちに撮ったらしい。……しかし、まあ、なんだ……異種族って本当に発育が良……ん? あれ?)



 シャリアの艶姿を脳裏で反芻していると、1箇所妙なところがあった。



(……え?……えっ⁉︎)



 そろ〜っと目を開けて確認してみると、シャリアのお腹に赤い模様が浮かんでいた。見間違いでは無かったらしい。


 痣や傷とは明らかに違う。何らかの意図をもって描いたものに見えた。



「シャリア?……そのお腹の何?」



 シャリアが両手で、その模様を隠しながら恥ずかしそうに呟く。



「……その、私の深紋です……」


「………………」




――『深紋』。


 不意の深淫を防ぐ為に、女児の腹部に付与される紋章の事。


……だと、思っていたのだが、



(そうか、あれが深紋なのか……超エロい。何考えてんのリンリャス。これ絶対私情入ってるでしょ)



 と、疑わずにはいられないほど、ビジュアル的にアウトだった。



(……というか、何で消えてないの?)



 身体の紋章は使用時に淡く輝くものだ。使っていない時に浮き上がるようなのは、見た記憶が無い。



《深紋は常時発動しているから、解除するまでずっとこのままよ?》



……マジかよ。何その狙い澄ましたかのような仕様。



「……それ、女の子は全員義務だって聞いたけど、本当?」


「はい。領に属する娘であれば、例外は無いと思います」



 アスガンティアでは合法らしい。当時の王族やらがGOサイン出した理由がわかった。



(……俺、リンリャス信仰するわ)


《いきなり何なの?》


(マジでエロい。これを法律で通したとか偉業だろ)



 感動に打ち震える。


……ひょっとしたら畏怖かも知れない。アスガンティア、恐るべし。



「はぁ……シャリア? これはほっといていいから、早く入んなさい。冷えちゃうわよ」



 ナスタが俺を放置して、手招きでシャリアを湯船に誘った。



「……はい、失礼します///」



 真っ赤になりながらも、しずしずとシャリアがお風呂に入って来る。タオルも何もつけていないので、色々と丸見えだ。



(……ヤバ、鼻血出そう)


《しょーも無いわね、あんた》



 流石にこれ以上はマズイ。風呂場での流血は命に関わる。



「……んで? なんでいきなり混浴?」



 気持ち上を向く感じでシャリアから視線を逸らし、ナスタにこの状況について問いただす。どうせ発起人はコイツだろうし。



「認証石試すからに決まってるでしょ?」


「……俺だけじゃダメなのか?」


「一緒の方が早いじゃない。あんたら将来くっつくんだし、別に構わないでしょ?」



 結果が決まっているからといって、横暴にすぎる気がしますが。



「あの、アーリス様?」


「あう……はい、ごめんなさい」



 ちょっと暴走した自覚はあるので、先に謝っておく。



「いえ、違います。……その……ちょっと遠いです」


「……はい?」



 何が?



「……に、認証石…………です」



 シャリアが両手に持った屑石を掲げて見せた。その動きに連動して、腕の間にある膨らみが揺れる。いかんでしょ。



「…………受け取れと?」



 言ってから、自分で持って来させておいて何を? とか思ったが、



「…………///」


「…………」



 あの妙に艶かしいシャリアに裸で近づく?



(高すぎるよハードル!!)



 だが、受け取らない訳にはいかないだろう。そこから放り投げろとも言えんし。



「……はよ行け」



 ナスタが俺から離れて、つっけんどんに言い放つ。



「お、おう」



 お風呂で血行が良くなったのか、シャリアの肌に赤みが差していた。


――ちょっと上気した頰。

――濡れた肌。

――潤んだ瞳。


……あかん。



《……何してんの? 早くしなさいよ》


(いや、待って⁉︎ やっぱこれまずくない⁉︎)


《どやかましい! 男の子でしょ!》


(男だからヤバイんだよ!)

「ちょ、ちょっと待ってね? シャリア。今心の準備を……」



 遠巻きから眺めるのと、近くで見るのはまるで別物だ。近づくだけなのに、無茶苦茶緊張する。



(とゆーか、何でシャリアは平気なんだ?)



 普通、男と入浴なんてもっと躊躇いがあるだろうに……。



(…………おかしいよな、流石に)



 今まで他の事に頭が一杯で考えが及ばなかったが、この状況はなんか変だ。


 シャリアの献身を疑うつもりはないが、幾ら何でも度が過ぎている。


……そもそもシャリアが俺に忠義を示す理由がわからない。どちらかと言えば、厄介ごとしか押し付けていないだろう。



 初っ端の昇華に、支流の橋。ナウゼルグバーグ戦での耳栓に、さっきの買い物。そして、今。



(…………でも、好意は感じるんだよなぁ……)



 そう、こんな何も出来ない、しょうもない主人なのに、シャリアからは親愛のようなものを感じるのだ。何故?



(……最初の遣り取りか?)



『シャリアが自分の意志で望み、あんたが尊重すると了承した』



(あれだけで?)



 双方の勘違い、とまでは言わないが、今の俺とシャリアの関係は状況に流されて出来上がったものだ。この先、どうとでも変化し得る。ナスタは「自分の意志で」と言うが、シャリアはまだ未成年だ。この先で新しく何かや、誰かを見出す事もあるだろう。



(…………出させた方がいいな)



 今更かも知れないが、シャリアの将来を考えれば、この状況はよろしくない。


 この先も俺に仕えて、嫁になってくれる可能性もあるだろうが、あくまでも『可能性』だ。最終的に決めるのは成人してから……もっと精神や経験が成熟してからでも、遅くは無いだろう。



「……シャリア? あのさ「シャリアの相手はあんた以外にいないわ」」


「はえ?」



 いきなり何を?



「異種族に理解のある異性で、主人で、伴侶。マナも豊富で、子も望める相手。5歳と離れておらず、10代の内に巡り会えた」


「…………」


「シャリアに限った話じゃない、リリアもそうよ。自覚なさい? あんたは同世代の異種族の娘から見たら、信じられないほど恵まれた相手なの」


「いや、でもさ「シャリア、今婚約しちゃわない?」」


「はい⁉︎」「…………」



 またナスタがなんか暴走し始めた。



「いい機会だわ。あんたらここで婚約しちゃいなさい」


「いやいやいや、唐突にも程が「わかりました」」


「うぇ⁉︎ ちょ、シャリア⁉︎」



 なんでわかっちゃうんだよ! と振り返ると、



「…………え?」



 シャリアが視線の鋭くして俺を睨みつけていた。



「――ッ」



 思わず息をのむ。


……見た事が無かったからだ。


 はにかんだり、照れ笑いだったり、会ってまだ短い期間の中で様々な表情を見たが、こんなふうに鋭く見据えられた事は一度も無い。


『綺麗だ』と思うのは場違いだろうが、最初に浮かんだ感想はそれだ。



(……覚悟?)



 あるいは意志か、それとも決意か。その吸い込まれそうなほどに透き通る水色の瞳からは、不退転に挑む戦士のような強さを感じた。



「アーリス様?」



 浴槽の中を、俺に向かって淀みなく、真っ直ぐに歩を進めるシャリア。



「お疑いなのですね?」


「い、いや〜」



 情けない事に、迫力に圧されて後ずさる俺。あっという間に浴槽の端に追い込まれた。



「お疑い何ですか⁉︎」


「いや⁉︎ 疑うとかじゃなくて」


「では何故⁉︎」



 詰め寄られる。壁に押し付けられて、退路を断たれた。



「私は!「シャリアはまだ若いだろ?」」


「……え?」



 諭す。


 外見はともかく、中身は俺の方が年上だ。「リリアもシャリアも可愛い! ラッキ〜」なんて軽々しく決めていいとは思えないし、思わない。


 俺の今の立ち位置はかなり不安定で、将来の展望はそこそこに明るいと予想出来るが、確定では無いのだ。


……最悪もあり得る。巻き込んでいいとは思えない。



「この先、幾らでも出会いなんかあるだろうし、今決める必要はないだろ? もっと後でもいいじゃん」


「…………アーリス様は、私を手放しても良いとお考えなのでしょうか?」


「いや⁉︎ そんな事はないよ⁉︎ シャリア可愛いし、優秀だし、嫁に来てくれれば勝ち組確定だし……」


「…………」


「でも、それは俺の一方的な願望で、シャリアの意志が本当に反映されているとは思えない」


「……え?」



 不意を突かれたかのようにキョトンとするシャリア。



「もっと成長して、色々経験して、成人してから決めた方がいいと思う。一生の事だし」


「…………」


「その……将来? 俺でもいいとか思ってくれるんなら万歳だけど、今の状況はちょっと違うだろう? お互いに流された感じが「ナスタ?」」



 埒が明かないと言わんばかりに、シャリアがかぶりを振ってナスタに視線を移す。



「いいわよ、やっちゃえ。というか、その誑しに遠慮なんかいらないわ……『やれ』」



 不穏な物言いでナスタがGOサインを出した。


 何を? と思う間に、屑石を手放したシャリアが強引に俺の両手を掴んで捉える。


 五指を交互に絡めた手の繋ぎ方。俗に言う『恋人繋ぎ』とか言うやつだ。



「はえ? シャリあぁぁぁ⁉︎」



 半呼吸で密着してきた。


 むにゅっとシャリアの双房が胸に押し当てられてられる。



(ぬおぉぉ⁉︎)



 後ろは壁。両手も捕られているので逃げる場所など無く、密着感が半端じゃない。


 やわらかい感触が身体に伝わり、一気にゲージが増加した。



「ちょっ、待っ……んん⁉︎」



――接吻。



 感触を味わう余裕なんか無い。状況の推移についていけず、一気にパニックだ。



「ん……んんっ……ぷは! シャリア⁉︎ ん〜〜っ⁉︎」



 息継ぎの間も逃さず追撃される。2つ歳上の異種族で、武勇にも優れたシャリアを振り解ける筈も無い。


 強く拒絶する事も出来ず、どうすればいいんだと思案していると、両手と額が熱くなった。


 その熱を俺が自覚したのと同時に、ナスタが「もういいわよ」と告げ、シャリアが離れる。



「…………説明プリーズ」



 耳も手も額も超熱い。何が起こったのかさっぱりだ。



「あんたとシャリアの婚約が、たった今成立したわ」


「………………はい?」


「あんたが悪い」


「なにゆえに⁉︎」



 理不尽!



「アーリス様……」


「ちょ、待って、シャリア⁉︎」



 シャリアが手を掴んだまま顔を寄せて、俺の肩に顎を載せた。



(シャリアの身体熱い! 待って⁉︎ やばいって!!)



 12歳の女の子にいいように翻弄される俺。頭に血が登り、思考力がガンガン削られていく。



「主人も、番いも、アーリス様以外に考えていません。この先……私がこんなにも望む相手は、他に現れないでしょう」



 俺を魅了するかのように、シャリアが耳元で囁く。



「……な、んで?」


「最初に『私』を認めた方だからです」


「そんなの……」



 大したことじゃないと続けたかったが、踏み止まった。



(本当にそうか?)



 何を大事に思うかなど、人によって変わる。軽々に否定して良いものでは無い。



「……お願いします。側に置いてください」


「うぁ……う……」



 脳髄を焼かれるとは、こういう状況を指すのだろう。心臓がばくばくで、頭が火照って何も考えられない。


 念頭にあったものが、シャリアの将来を案じてから、俺がシャリアを欲しているか否かに変化したのを自覚した。



「……はい」



 迷う余地もない程容易な問題。本当にそれでいいのか? という懸念は拭えないが、他の回答が俺の中に無かった。



「う……よろしくお願いします……」



 気の利いた台詞の1つも思い浮かばず、結局色気もへったくれもない返事になってしまった。



「はい♡」



 そんな返答を、本当に嬉しそうに喜ぶシャリア。身体を摺り寄せるようにぐぐっと抱き締められる。



(あかん、死ぬ……)



 この状況、2人とも『裸』である。本気でマズイ。



「――ッ⁉︎ シャリア! 離れて昇華して!」



 慌てて離れるシャリアの裸身を直視してしまい、それがとどめになった。



(おうふ……)


「アーリス様!」



 シャリアの額に、新たな水色の紋章が浮かんでいるのを見ながら、俺はのぼせてぶっ倒れた。

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