表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第二章 ~『原点』~
62/216

『婚姻約定』

 なんやかんやで邸宅の視察を終えて外に出ると、ユーシャとベインとニック、3人の副団長候補達が勢揃いしていた。



(何でここに居るの⁉︎)



 思うと同時、ユーシャが新居を見上げながら、俺の胸中の疑問に答える。



「やっぱアーリスだったか、見張り塔から家が出来上がるのが見えてたぞ」


(見張り塔に居たのか……って言うか、気にしてなさそう……?)



 領主館に置いて行ったから、怒られたり拗ねられたりするかと思っていたが、そんな気配がない。



「……みんな見張り塔に居たのか、おはよう」


「ああ、おはようアーリス。随分長く寝てたみたいだけど、大丈夫そうだな」


「おはようございます! 団長」

「おはようございます、就任おめでとうございます!」


「うぇっ⁉︎」



 ビックリだ。


 こっちの2人に会えば、レーゼル云々(うんぬん)の遣り取りは避けられないだろうと警戒していたのだが、そんな素振りも無く当然のように敬礼してくる。



「オレが説明して周ったから、みんな知ってるぞ」


(……ああ、なるほど)



 事前にユーシャの説明を聞いて、彼らの中で既に決着が付いているらしい。


……ならば、わざわざ不用意に混ぜっ返す必要も無い。普段通りに行こう。



「……おはよう、2人とも。いつも通りでいいよ?……何か副団長お願いする事になったけど、大丈夫?」



 畏まった礼節は、俺が面倒い。気楽に話しかけてみる。



「だから言ったじゃないか。今まで通りでいいって」


「……そうみたいだな」


「階級の関係は重要だぞ? いざという時に部下が混乱する」


「わかってるよ、部下の前ではちゃんとやるさ。……副団長の業務は聞いてる。俺もニックの奴も問題は無い。願ったりだからな」


「10歳でこの収入は破格です。断る理由がありません。団長こそ、本当に良いんですか? 俺たちが副団長で……」



 ベインは素に戻ったが、ニックはまだ固い。……でも、当人の理念があるみたいだし、無理に正す必要もなさそうだ。



「2人は長く班長を務めていたから、能力に疑問は無いよ。今も引き継ぎしてるって聞いてたし……ん? あれ? 何で今まで見張り塔に居たの?」



 今更気付いた。子供が立ち入る施設じゃない。



「北西見張り塔の管理を、騎士団に振るつもりだ」



 ランフェスが加わってきた。



「「「おはようございます!」」」



 おおぅ、元気。たった3人でも、揃うと中々に迫力がある。



「おはよう諸君。済まないが、君達の団長は暫くの間、政務に注力してもらう事になる」


「……そうなのか?」


「さいです。金策に奔走します」


「……新設の組織だからな。地盤がまだ無いのか」


(ベイン凄え! 子供の発想じゃないぞ、それ)


「要求された業務の内容から、自分の班で出せる余剰人員は居ません。手伝いは難しいですけど……」


(ニックも頼もしいな⁉︎ 即座に配分考えるのかよ⁉︎)



 アスガンティア・チルドレン、高性能すぎる。



「大丈夫。予算はこっちで捻り出すから、暫く団の維持をお願い」


「「了解です!」」



 この2人は使えるな。


……優秀すぎて、そのうち俺の方が見放されるんじゃなかろうか?



「アーリス、狩りは行けそうか?」



 ユーシャからお誘いを受けるが……、



「……暫くは無理かな、頼める?」



 ちょっと難しいだろう。






 アスガンティアは乳牛と養鶏は認めているが、屠殺を目的とした家畜は認めていない。


 食材の中で、唯一余裕の無いのが、肉だ。


 狩人や商人から購入する事も出来るが、基本的に各地区の代表や、子供が獲りに行く必要がある。


 北西は未開拓で、今まで誰も居なかった地区だ。新たな代表を立てなければ、肉の確保が高くついてしまう。






「いいぜ。何人分?」


「今は2人。リリアが合流したら……」


「「「「4人」」」」



 リリアを知る者の声がハモった。ランフェスとシャリアが、「え?」と目を見開いている。



「あははは! アーリスの嫁さんになるって聞いてたけど、本当なんだな!」

「……凄く大変そうですけど、頑張って下さい」

「アーリスの好きなおっぱいが付いてくるから、大丈夫じゃないか?」

「……ミルクが出れば、乳牛の替わりになるな」

「それだ!」

「絞れ! 団長!」

「……団長の政務って、まさか⁉︎」

「ちげーよバカ!!!」



 優秀に見えても、やっぱり子供だった。際どい話題に、手加減がない。


 聞いていたシャリアの顔が真っ赤だ。ランフェスも頭を抱えている。



「そう言えば、リリアはいま嫁入りの準備してるんだっけ?」


「……嫁入りの準備って、何するんだ?」


「俺の姉ちゃんの時と同じなら、婚礼装と、私室家具と……」



 ユーシャの疑問に、ベインが自身の姉を例にあげて、指折り数えながら答えようとする。



「いや、アーリス卿とリリア嬢は、まだ未成人だ。ベインの姉君の例は、当て嵌まらないな」



 その発言を、途中でランフェスが遮った。


……って、敬称に『卿』があるのか。今度から使おう。



「違うんですか?」


「ああ、成人済みの者が嫁ぐのであれば、ベインの言った通りの準備になるが、未成人は転居の扱いになる」


「……?」


「大きく異なるのは婚礼装だ。これは、成人を迎えた者でなければ、作ってはならない」


「何でですか?」


「……ふむ、いい機会ではあるか。少し婚姻の法について語ろう。上に立つ者の無知は、下の不幸を招く。それは戦場に限った話では無い」



 ランフェスは、ここにいる者を『上』と判じているらしい。


……当然か。団長と副団長、子供とは言え組織の中枢に位置する役職だ。将来の婚姻は絶対で、場合によっては強要される事もあるだろう。早めに意識しておいた方がいい。



「婚礼装は夫のマナで構成された衣装で、暴漢から身を守る為ものだ」



……へ〜、そんなのなのか。俺もいずれ作る事になるのかな? しっかり聞いておこう。



「この装束を纏った娘は、夫以外と子を成せなくなる」


「――ブッ⁉︎」



 何だその不倫防止機構は⁉︎ そんな事も出来んのかよ⁉︎



「女性の扱いは、昔はかなり酷いものだったらしい。今の制度を作り出した当時の『リンリャス』は、それを許せなかったようだ」


「あっ! リンリャス様は知ってます!」

「……と言うか、知らない奴居るのか?」

「色んな本に出てくるからな〜」



『ニストレータ・リンリャス』


 俺も名前は知っている。教本の体裁を整えた人だ。

 文字の勉強で使った文献の著者には、軒並みこの人の名前がある。



「リンリャスが定め、王家を通した約定は多い。婚礼に関するものも多岐に及ぶが、


『5歳以上離れた者を相手とした婚姻を禁ずる』


『女児は婚姻まで深紋を刻む事を義務とする』


『婚姻は成人を迎えた者同士でなければならない』


『婚礼装は男性の側に、婚姻式は女性の側に責を置くものとする』


『複数婚は多数の側に離婚の優先権利を与える』


『婚礼装の作成と着用は、成人の男女にのみ許される』


『婚礼式より7日を婚休と定める』


……と、以上の7つが注目されるな」


「……へえ……」



 結構面白い人みたいだ。ちょっと追っかけてみたい。



(ナスタ、深紋って何?)


《お腹に描く紋章術の事。成前式の後、女の子はそのまま付与されるわ。深淫を防ぐものよ》


(防ぐって、どんな感じでか聞いてもいい?)


《……紋章の力で、自身と異なるマナの侵入を防ぐの。行為自体が出来なくなるわ。婚礼装も同じよ》


(ほ〜、……徹底してんな、解除は?)


《描く時に、龍脈のマナが使われる……神殿所で申請すれば外してくれるわ》



 国に解除申請しなければ、子供は作れない訳だ。つまり、突発的な暴力や強制、本人の意思に反した交合は起こり得なくなる。



(……すげえ法律だ)



 地位や、財ある者の無法を赦さない約定。よく通せたな、これ。




『5歳以上離れた者を相手とした婚姻を禁ずる』


 ジジイが若い娘を手篭めにするなんて、ダメでしょ?



『女児は婚姻まで深紋を刻む事を義務とする』


 強姦なんかさせねえよ?



『婚姻は成人を迎えた者同士でなければならない』


 未成年騙すとか、あり得ないから。



『婚礼装は男性の側に、婚姻式は女性の側に責を置くものとする』


 式の場所も費用も女性持ち。逃げ場塞いで強要とかないし?



『複数婚は、妻に離婚の優先権利を与える』


 当たり前だよなぁ?



『婚礼装の作成と着用は、成人にのみ許される』


 未成人の内に騙して着せてそのまま……とか、浅はかだろ?



『婚礼式より7日を婚休と定める』


 結婚しといて放置とか許さんよ?




(……やばい、本気すぎる)



 一気にこの人好きになったわ。……解釈違うかも知れないけど。



「作法の認識の差異は、致命に繋がる事もある。君達はまだ子供だ。ある程度の失敗が、本来なら許される……が、『長』の肩書きを担う者に、その油断は禁物だ」


(あらやだ、おっかねえ)



 着地点そこかよ。


 この話のターゲットは俺だったようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ